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新しい本に出会おうと貪欲にならなくて良い

2023年11月25日、26日に開催された第2回本は港のトークイベントで印象に残った言葉です。
本を生業にしている人から出た、ひょっとしたら本音?に紙の本を愛でながらもモノ、コトがあふれる状況を冷静に指摘するなんともいえないバランス感覚だなと思いました。


本は港とは

かながわのおもしろい本屋と出版社が集うブックマーケットです。
LOCALBOOKSTOREkita.で開催されました。
23年5月に初開催の第1回は道路にお客様に並んでいただくなど大変な盛況でしたが、2回目は有料、予約制にも関わらず、変わらず熱気あふれる会場になりました。

寒い中たくさんの人がご来場

トークイベント ぼくが働いた4つの本屋、ぼくが開いた4つの本屋

ぼくが働いた4つの本屋、ぼくが開いた4つの本屋
登壇:三田修平(BOOK TRUCK/BOOK STAND 若葉台)
聞き手:中岡祐介(三輪舎/本屋・生活綴方)


三田さんが働き、また店主となって開いた本屋を並べてみる。TSUTAYA TOKYO ROPPONGI――現・六本木蔦屋 書店/カフェ併設書店、cibone――原宿/雑貨屋の中の本屋、SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS――渋 谷/出版社兼書店、BOOK TRUCK――移動式本屋、Reader Store――電子書籍ストア、BOOK APART――横浜・ 大倉山/住居内本屋、三田商店――横浜・西横浜、BOOK STAND 若葉台――横浜・旭区/団地の本屋)。実に8つ の本屋で働き、また開き、営んできた。彼の仕事を振り返ると、より本がないところへ本を届けていっていると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。彼は言う、「ずっとモチベーションになっているのは、本屋のあり方のバリエーションを広げたいということ」。 ――当日は彼のこれまでと現在地、そして今後について深掘りして伺っていきたいと思います。

https://honmina.com/talkevent

26日午後に開催されたこのトークイベントに参加しました。
前半は三田さんのこれまでに関わった書店について、六本木蔦屋書店で一緒に働いていたという中岡さんとの軽妙なやり取りが楽しかったです。

印象に残ったことば

本の循環ー中古本流通には可能性を感じている。若葉台団地の居住者は14000人で、真鶴町の人口より多い。住んでいる人たちの蔵書だけでもどれだけあるだろう(注:前日に真鶴出版が出店)
・もう新しい本に出会おうと貪欲にならなくても良いのでは。新刊が多すぎる。お気に入りを読み返すという楽しみ方がある
・移動本屋と若葉台のブックスタンド、どちらも無理しない運営をする。今までと同じ方法で町の本屋を復活させることは無理だと思う。無理になったから閉店が相次いでいる

トークイベントより

「5年前に本は港に出店している本屋は一つも存在しなかった」

最後のほうに出たこの言葉にハッとさせられました。
書店は数十年前には「時間をかけて厳選・編集された情報が集まる場所」だったと感じています。
インターネットがまだなかった生徒、学生時代の私は本屋に立ち寄るのがそれこそ日課でした。勉強の本も見ましたが、大半がファッションや音楽情報誌の立ち読みでした笑
家に届く新聞と並んで書店が情報・知識インフラと呼べる時代が確かにあった、と個人的に感じます。

日本の出版物販売金額ピークは1996年でした。約四半世紀前のそれを上回ることはないだろう、書店の数が増えることは難しいと寂しさを覚えます。

出典:日本の出版販売額 出版科学研究所

インターネットが台頭し始めても健闘しているように見えましたが、20年の間に1万件近く書店数が減る中、紙の本を求める人、提供したい人が新たな業態を創造されているという状況に今回立ち会えてなんともいえない充実感を覚えました。
ワンオペの店舗も多いと思いますので、三田さんのいう無理しない、持続可能な範囲でやることは最も重要なことの一つだなと思います。これだけ意欲的な取り組みをされている方々の健康を願わずにいられません

過去と未来

私はkita.の棚主のひとりで、第1回に続いて運営のお手伝いをしながらこちらのトークイベントに参加しました。
TSUTAYATOKYOROPPONGIや若葉台の福家書店はかつて営業担当をしていた時もあり、自分にとっての本屋の追憶と未来に思いを馳せる時間となりました。

BOOK TRUCK
YOASOBI号

三田さんも夜遊び(ナイトアウト)が好きなのかしら?と思いましたがあの”小説を音楽にするユニット”とのコラボレーション

雨の中お店に立つ背中
トークイベント中は室内で暖まれる!と言っておられました笑
あらゆる環境で本を並べられそう
kita.にもたくさんの方にお立ち寄りいただきました

文中の書店・出版社名は敬称略です。


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