心理系大学院予備校〜専門記述問題対策;河合隼雄先生の問題〜
こんにちは。心理系大学院受験予備校 KoKoRo UP Academy(ココロアップアカデミー)です。
今回は、河合隼雄先生関連の問題を取り上げます。
長年、生徒の志望校の過去問題対策を行なっていると、印象的な問題に出会うことが多いです。専門性が異なる先生方が作っているので、多種多様で、直接論文から探さないと答えが見つからないものもあります(そのため、志望校対策は一校一校個別で行わないといけないということになります)。
これまでに見た大学院の問題で、有名かつ印象的なのが、放送大学の問題です。ユング派の先生がいらっしゃるからなのか、ユング心理学の問題も出ることがあります。その中でも、ユング派の重鎮、河合隼雄先生の有名な言葉を問題にしており、かなり驚いたことを覚えています(河合先生は生前、著作物や講演の中で何度もおっしゃっていたので、心理士を志すなら知っていて当然という意図があるのでしょうか?)。
問題はこちら↓
心理療法に関して、河合隼雄は「セラピストは何もしないよう全力をあげる」という趣旨のことをしばしば語っていた。この河合の言葉はどのようなことを意味していると理解されるか、述べなさい(600字以内)。
(放送大学大学院 2020年)
「理解されるか」と付け足しているところが、自分なりの理解で論述してもいいということだとは思います。
「何もしないよう全力をあげる」とは?
カウンセリングでは、クライエントが悩みを持って相談に来るわけですから、セラピストは、アセスメントの段階で「この人は状況を否定的な認知して苦しみの感情が出ている」「これが維持要因である」と、理論の枠組みで理解しようとします。
それを主観ではなく、根拠とされたりもしますが、河合先生は、それは余計なことだと言います。
また、セラピストが根拠をもって理解しようとすることは、クライエントの語った意図がセラピストの受けとり方しだいで変わってしまう。本来のクライエントの語りが、セラピストに合わせた語りとなってしまうといいます。
例えば、認知行動療法の心理教育を行うと、クライエントが認知行動療法に寄った語りになるということですね。「私の認知が〜」と言い出したりするわけです。
そのほか、クライエントが気を使って、セラピストが喜ぶ語りを始めることもありますね。一見良くなったと思っても、それはクライエントが気を使ってくれてよくなった語りをしてくれているだけなわけです。
河合は、著書『「あるがまま」を受け入れる技術 』の中で、「何もしないよう全力をあげる」を老子の言葉を引用しながら説明しています。
河合先生が何度も述べていますから、それをどういうメカニズム?という疑問が湧きます。
京都大学名誉教授の山中康弘先生は、「追悼記」の中で、これがカウンセリングや心理療法の「本質」であり、「真実」であるとし、河合先生がそれを学問的に明らかにしたと述べています。
山中先生が学問的に明らかにしたと言っていたので、セラピストが何もしないよう全力をあげることで、クライエントが自律的に変容する、そのダイナミックスについては河合先生はどのように述べているのかと、著作や論文を読み漁ったのですが、見つけれれませんでした(先生の著作はたくさんあるので、どこかにはあるかと思いますが)。
そこで次回は、ユング心理学の観点から、「何もしないことを全力をあげるセラピストとクライエントのダイナミクス」について触れたいと思います。
つまり、続きます(過去問の紹介としても)。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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