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大学3年生。人生の迷子。ことばが好き。

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夜を歩く。

街灯を頼りに夜を歩くとき そこに理由を持たない自由 一人暮らしでよかったなぁ、と感じるのは、夜に散歩をするとき。 この小さな部屋では感情を扱いきれなくなって、 ジャケットを羽織って、ポケットにスマホをしまって、夜へ歩き出す。 何も考えずに、ただ知っている道の、知らない側面を歩く。 そこに理由は存在しなくていい。 途中でコンビニに寄るかもしれないけれど、コンビニに行くことが目的じゃない。 別に、実家だと夜中に外出できないわけではないのだけれど、 何か嫌なことがあったのかと

    • ちょっとした違和感

      カフェの、コンセントのある窓沿いの席に座っていた。 右隣のお兄さんが食事を終えて出ていくと、少し離れた席にいた女性が移動してきた。 まずコーヒーとサンドウィッチの乗ったトレーだけを持って。 トレーを置いてすぐ、元いた席に残りの荷物を取りに戻ったのだが、その時の妙に強い足音、トレーを置いた後の力の入った素早い動きに、私は小さな違和感を覚えた。 「この人、機嫌が悪いか?」 そう思い始めると、もう気になってしまう。その人の方を見ずにはいられない。 私には何も関係ないのに。 嫌な

      • "私"の見ている世界

        "私を動かしている私は、本当に存在しているのか?" 小学4年生くらいのある時期、私はこの考えに囚われていた。 自分という人間を動かしている意志は、自分のものなんだろうか。今こうやって考えている私の、本当に本当に一人ぽっちの決断なのか。 そんな孤独があり得るんだろうか。心細すぎやしないか? それじゃあ私が次の瞬間からその決断を放棄し続けたとしたら、私の体は一体どうなってしまうのか。 結局そんな気持ちなんていつの間にか忘れて、今日も生きている。 しかしその折々で、自分がこの考

        • よくわからない夢

          水中を歩く牛たち 無意識に避けてる棘に触れた日の夢 誰もが、綺麗でない思い出をたくさん抱えて生きている。 その時の自分をどんなに切り離して考えても、一度は深く潜ってしまったから、今の自分と無関係なはずがない。忘れられるはずがない。 きっと深い傷になるだろう。一生忘れられないだろう。 この予兆は、生活の大部分においては外れているけれど、本質では当たっている。 生活の根幹となっていたものがある日を境に失われる時、自分はどうなってしまうんだろうと考える。しかし実際大して変わら

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          文系東大生の本棚紹介!

          今日は私の本棚を紹介します。 私は大学入学と同時に一人暮らしを始めたので、今使っている本棚には実家から持ってきた数冊の本と、大学に入ってから買った本が並んでいます。 本を買うときの自分ルールや、本棚に並べるときのこだわり、おすすめの本などを紹介してみようと思います。 本を買うときのマイルール 基本的に、大学の勉強で読む本は図書館で借り、趣味で読む小説などはお金を払って買う、という風に決めています。 本は自分のものとして持っておき、何度も読み直したい派なのですが、流石に全部

          文系東大生の本棚紹介!

          大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

          最近、ひとは何かを諦めながら自分を見つけていくんだな、と実感した大学三年生です。 まあ、完璧な人間なんかいないから、当たり前なんだけれど。 そんなことがまるで分からなかった1年前の私がここに至るまで、どんな経過を辿ったのか書いてみたいと思います。 大学入学 公立の高校でそこそこ成績の良かった私は、国立大学に進学しました。 辛いことや悩みは当時の私なりには色々あったけれど、大した挫折を経験するわけでもなく、高二まで部活に打ち込み、その後予備校に通わせてもらって現役で進学しま

          大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

          散歩。

          左手の温度が伝わる間に 追い越してくメッセージ・トレイン 私はよく、恋人と散歩をする。 駒場にある家から、渋谷か、池尻大橋か、下北沢かに目的地を決めて、二人でゆっくり歩いていく。大抵は本屋さんを見るか、カフェで少し話すかして、また家まで戻ってくる。時間によっては、一、二杯飲んで帰ってくることもある。 歩いている間、私たちはその時思いついたいろいろなことを話して、小さな幸せを噛み締める。 そこでの時間の流れと、井の頭線が90周年を記念して12月に走らせるという「メッセージト

          散歩。

          うた。

          昼過ぎにやっと動ける君にあて 僕は夜明けにうたを書きおく 家から出られなくなって、大学に行かなくなって、一ヶ月。 友達に連れられて病院へ行き、薬をもらい、少し良くなった。 親に連絡して、実家に帰ってきて、休んだ。 良くなった。今まで通りの日常が送れる体力は戻ったはずなのに、それでも空虚だった。今までと同じことができるようになったところで、それが何だと思った。 本当に、心底どうでもいいことばかりで嫌になった。 僕は、詩を書くことにした。 死ぬほど無感情な夜でも、僕は言葉

          うた。

          残り香、

          君のことなんか忘れたはずだった Paul Smithのカタログの風船 「またね。じゃないか、ばいばい。」 君がそう言ってから四ヶ月が経つ。 四ヶ月も経った。君のことなんか、忘れたはずだった。そんな頃になって、君の記憶は突然日常の中に割り込んできたのだ。 前髪を切ろうと思って、古紙の山から一枚取ろうとした時、下にあった冊子状のものが一緒に落ちてきた。 フルカラーの表紙。リボンで括られたスニーカーが、風船に繋がれて空を飛んでいる。何だろうと思って顔を近づける。 そう、見つけ

          残り香、

          【自己紹介】

          はじめまして、けいです。 東京大学の2年生で、主にドイツの文化について学んでいます。(ドイツ語勉強中) 性格 ・人見知りする ・変なところにこだわりが強い ・INTJ、建築家型 好き ・音楽→Vaundy、Tele、INI ・マンガ→鋼の錬金術師 ・YouTube→ララチューン、QuizKnock、ベテランち 趣味 →読書。以下、マイベスト3です。 ・ヘッセ『春の嵐』 ・モーム『人間の絆』 ・柴田翔『されど われらが日々』 才能に苦悩する青春、みたいなのが厨二病的なツボ

          【自己紹介】

          空。

          土手を行く自転車 感覚の薄れた耳から青へのグラデーション しばらく家から出ていなかった。 何もかも嫌になって、6畳半の部屋の隅で、天井を見つめていた。 実家からの連絡。 どうせ帰って来いということだろうと放置していたが、このまま何も生み出さずに寝ているだけなのなら、帰ってやらないこともないと思った。 「明日帰ります。」 とだけ送って、久しぶりにシャワーを浴びた。 翌日、馴染みの駅まで新幹線と電車を乗り継いで来た。 駅前の商店街は見る影もなく廃れていて、スーツケースを引き

          深夜ドライブ

          コンビニの配送トラックを待って アクセルを踏む 君と夜の中へ 日付が変わる頃、君から連絡があった。 「今からドライブしない?」きっと何か話したいことがあるんだろう。いいよと返すと、私は上着を羽織って玄関先まで出た。 しばらくして、シルバーの車がやってきて停まる。助手席に乗り込むと、君は困った様子で言った。 「これじゃ通れないな。」 コンビニの前に配送トラックが停まって、商品を運び込んでいた。私の家の前は道が狭いのだ。 「どこ、行きたい?」君は続ける。 「わかんない、海の

          深夜ドライブ

          ささやかな喜び

          メモ帳に溜まった言の葉の屑を 綿毛を飛ばすみたいに、夜に 思いついたこと、考えたことをスマホのメモ帳に打ち込んでおく。 しばらくすると、捨て置かれているそれらの脆い言葉たちを集めて、ささやかな伝言として飛ばしたくなる夜がくる。 まるで息を吹きかけた綿毛が華やかに舞い、新たな生命への期待を背負って飛んでいくように。 次の日がくる。 昨晩の熱はもうどこかへ行ってしまって、命を吹き込んだはずの伝言は作者にとって色をなくす。小っ恥ずかしくさえ感じる。 たんぽぽにしても、飛ばした

          ささやかな喜び

          リアルとは...

          どうにでも描ける世界に、どうしても描けないもの 飛翔であるとか 全部思うようになればいいのになぁ。 何でも描ける世界、リアルを描かない世界、重力なんて存在しない世界。 そこでは「飛ぶ」ことが意味を持たない。 意味を持たないどころではない、それは単に「宙に浮いている」だけなのだから。 何の気なしにぴょんと跳んだ人がそのまま落ちてこないのと、飛行機が空へ飛んでいくのは同じこと。そこに「飛翔」としての価値はない。 何でも描けるからこそ、描けないものが存在することになる。 私

          リアルとは...

          君とカフェで、 <短歌>

          "いつもの"を頼んだ君に追いついて 「スモール、アイスの、カフェラテひとつ」 私の恋人は、カフェでアイスココアしか頼まない。 夏でも冬でも、サンマルクでもドトールでも、初めて入るところでも。 店に入ると、メニューを見る動作もなくカウンターに直行してしまうから、私は少し焦って追いかける。その場で考えるのは苦手だから、特に飲みたいわけでもないのに、アイスカフェラテを注文してしまう。 そんな日常を短歌に詠んだ。 商品を受け取って席に着く。 二人席だと君はいつも、奥側のソファを

          君とカフェで、 <短歌>

          決別。

          もう、君の時間はねじれの関係にある 目が合った気がしていた初夏の サークルを辞めた。 大学一年の時から毎週末参加していたオーケストラのサークル。夏はあんなに熱心に練習していたのに、秋が来る頃には体調不良を理由に辞めてしまった。 休日にキャンパスを歩いていると、楽器を練習している音が聴こえる。少し前まで、私にとってもこの時間は練習時間だった。不思議な感覚。 これから先、私と彼らの時間が交わることはないのだと思うと、寂しさに襲われる。初めから交わってなどいなかったのではないか

          決別。