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大学3年生。人生の迷子。ことばが好き。

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大学3年生。人生の迷子。ことばが好き。

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夜を歩く。

街灯を頼りに夜を歩くとき そこに理由を持たない自由 一人暮らしでよかったなぁ、と感じるのは、夜に散歩をするとき。 この小さな部屋では感情を扱いきれなくなって、 ジ…

chie
5か月前
7

ちょっとした違和感

カフェの、コンセントのある窓沿いの席に座っていた。 右隣のお兄さんが食事を終えて出ていくと、少し離れた席にいた女性が移動してきた。 まずコーヒーとサンドウィッチの…

chie
3週間前

"私"の見ている世界

"私を動かしている私は、本当に存在しているのか?" 小学4年生くらいのある時期、私はこの考えに囚われていた。 自分という人間を動かしている意志は、自分のものなんだろ…

chie
1か月前
2

よくわからない夢

水中を歩く牛たち 無意識に避けてる棘に触れた日の夢 誰もが、綺麗でない思い出をたくさん抱えて生きている。 その時の自分をどんなに切り離して考えても、一度は深く潜…

chie
1か月前
3

文系東大生の本棚紹介!

今日は私の本棚を紹介します。 私は大学入学と同時に一人暮らしを始めたので、今使っている本棚には実家から持ってきた数冊の本と、大学に入ってから買った本が並んでいま…

chie
1か月前
13

大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

最近、ひとは何かを諦めながら自分を見つけていくんだな、と実感した大学三年生です。 まあ、完璧な人間なんかいないから、当たり前なんだけれど。 そんなことがまるで分か…

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1か月前
5

散歩。

左手の温度が伝わる間に 追い越してくメッセージ・トレイン 私はよく、恋人と散歩をする。 駒場にある家から、渋谷か、池尻大橋か、下北沢かに目的地を決めて、二人でゆ…

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5か月前
2

うた。

昼過ぎにやっと動ける君にあて 僕は夜明けにうたを書きおく 家から出られなくなって、大学に行かなくなって、一ヶ月。 友達に連れられて病院へ行き、薬をもらい、少し良…

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5か月前
5

残り香、

君のことなんか忘れたはずだった Paul Smithのカタログの風船 「またね。じゃないか、ばいばい。」 君がそう言ってから四ヶ月が経つ。 四ヶ月も経った。君のことなんか、…

chie
5か月前
1

【自己紹介】

はじめまして、けいです。 東京大学の2年生で、主にドイツの文化について学んでいます。(ドイツ語勉強中) 性格 ・人見知りする ・変なところにこだわりが強い ・INTJ、…

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6か月前
22

空。

土手を行く自転車 感覚の薄れた耳から青へのグラデーション しばらく家から出ていなかった。 何もかも嫌になって、6畳半の部屋の隅で、天井を見つめていた。 実家からの…

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6か月前
3

深夜ドライブ

コンビニの配送トラックを待って アクセルを踏む 君と夜の中へ 日付が変わる頃、君から連絡があった。 「今からドライブしない?」きっと何か話したいことがあるんだろう…

chie
6か月前
3

ささやかな喜び

メモ帳に溜まった言の葉の屑を 綿毛を飛ばすみたいに、夜に 思いついたこと、考えたことをスマホのメモ帳に打ち込んでおく。 しばらくすると、捨て置かれているそれらの…

chie
6か月前
1

リアルとは...

どうにでも描ける世界に、どうしても描けないもの 飛翔であるとか 全部思うようになればいいのになぁ。 何でも描ける世界、リアルを描かない世界、重力なんて存在しない…

chie
6か月前
2

君とカフェで、 <短歌>

"いつもの"を頼んだ君に追いついて 「スモール、アイスの、カフェラテひとつ」 私の恋人は、カフェでアイスココアしか頼まない。 夏でも冬でも、サンマルクでもドトール…

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6か月前
10

決別。

もう、君の時間はねじれの関係にある 目が合った気がしていた初夏の サークルを辞めた。 大学一年の時から毎週末参加していたオーケストラのサークル。夏はあんなに熱心…

chie
6か月前
1
夜を歩く。

夜を歩く。

街灯を頼りに夜を歩くとき

そこに理由を持たない自由

一人暮らしでよかったなぁ、と感じるのは、夜に散歩をするとき。
この小さな部屋では感情を扱いきれなくなって、
ジャケットを羽織って、ポケットにスマホをしまって、夜へ歩き出す。
何も考えずに、ただ知っている道の、知らない側面を歩く。
そこに理由は存在しなくていい。
途中でコンビニに寄るかもしれないけれど、コンビニに行くことが目的じゃない。

別に

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ちょっとした違和感

ちょっとした違和感

カフェの、コンセントのある窓沿いの席に座っていた。
右隣のお兄さんが食事を終えて出ていくと、少し離れた席にいた女性が移動してきた。
まずコーヒーとサンドウィッチの乗ったトレーだけを持って。
トレーを置いてすぐ、元いた席に残りの荷物を取りに戻ったのだが、その時の妙に強い足音、トレーを置いた後の力の入った素早い動きに、私は小さな違和感を覚えた。

「この人、機嫌が悪いか?」

そう思い始めると、もう気

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"私"の見ている世界

"私"の見ている世界

"私を動かしている私は、本当に存在しているのか?"
小学4年生くらいのある時期、私はこの考えに囚われていた。

自分という人間を動かしている意志は、自分のものなんだろうか。今こうやって考えている私の、本当に本当に一人ぽっちの決断なのか。
そんな孤独があり得るんだろうか。心細すぎやしないか?
それじゃあ私が次の瞬間からその決断を放棄し続けたとしたら、私の体は一体どうなってしまうのか。

結局そんな気

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よくわからない夢

よくわからない夢

水中を歩く牛たち

無意識に避けてる棘に触れた日の夢

誰もが、綺麗でない思い出をたくさん抱えて生きている。
その時の自分をどんなに切り離して考えても、一度は深く潜ってしまったから、今の自分と無関係なはずがない。忘れられるはずがない。

きっと深い傷になるだろう。一生忘れられないだろう。
この予兆は、生活の大部分においては外れているけれど、本質では当たっている。
生活の根幹となっていたものがある日

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文系東大生の本棚紹介!

文系東大生の本棚紹介!

今日は私の本棚を紹介します。
私は大学入学と同時に一人暮らしを始めたので、今使っている本棚には実家から持ってきた数冊の本と、大学に入ってから買った本が並んでいます。
本を買うときの自分ルールや、本棚に並べるときのこだわり、おすすめの本などを紹介してみようと思います。

本を買うときのマイルール

基本的に、大学の勉強で読む本は図書館で借り、趣味で読む小説などはお金を払って買う、という風に決めていま

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大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

大学生が精神を病んで、諦めることの大切さを学んだ話。

最近、ひとは何かを諦めながら自分を見つけていくんだな、と実感した大学三年生です。
まあ、完璧な人間なんかいないから、当たり前なんだけれど。
そんなことがまるで分からなかった1年前の私がここに至るまで、どんな経過を辿ったのか書いてみたいと思います。

大学入学

公立の高校でそこそこ成績の良かった私は、国立大学に進学しました。
辛いことや悩みは当時の私なりには色々あったけれど、大した挫折を経験するわ

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散歩。

散歩。

左手の温度が伝わる間に

追い越してくメッセージ・トレイン

私はよく、恋人と散歩をする。
駒場にある家から、渋谷か、池尻大橋か、下北沢かに目的地を決めて、二人でゆっくり歩いていく。大抵は本屋さんを見るか、カフェで少し話すかして、また家まで戻ってくる。時間によっては、一、二杯飲んで帰ってくることもある。
歩いている間、私たちはその時思いついたいろいろなことを話して、小さな幸せを噛み締める。
そこで

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うた。

うた。

昼過ぎにやっと動ける君にあて

僕は夜明けにうたを書きおく

家から出られなくなって、大学に行かなくなって、一ヶ月。
友達に連れられて病院へ行き、薬をもらい、少し良くなった。
親に連絡して、実家に帰ってきて、休んだ。

良くなった。今まで通りの日常が送れる体力は戻ったはずなのに、それでも空虚だった。今までと同じことができるようになったところで、それが何だと思った。
本当に、心底どうでもいいことばか

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残り香、

残り香、

君のことなんか忘れたはずだった

Paul Smithのカタログの風船

「またね。じゃないか、ばいばい。」
君がそう言ってから四ヶ月が経つ。
四ヶ月も経った。君のことなんか、忘れたはずだった。そんな頃になって、君の記憶は突然日常の中に割り込んできたのだ。

前髪を切ろうと思って、古紙の山から一枚取ろうとした時、下にあった冊子状のものが一緒に落ちてきた。
フルカラーの表紙。リボンで括られたスニーカ

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【自己紹介】

【自己紹介】

はじめまして、けいです。
東京大学の2年生で、主にドイツの文化について学んでいます。(ドイツ語勉強中)

性格
・人見知りする
・変なところにこだわりが強い
・INTJ、建築家型

好き
・音楽→Vaundy、Tele、INI
・マンガ→鋼の錬金術師
・YouTube→ララチューン、QuizKnock、ベテランち

趣味
→読書。以下、マイベスト3です。
・ヘッセ『春の嵐』
・モーム『人間の絆』

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空。

空。

土手を行く自転車

感覚の薄れた耳から青へのグラデーション

しばらく家から出ていなかった。
何もかも嫌になって、6畳半の部屋の隅で、天井を見つめていた。
実家からの連絡。
どうせ帰って来いということだろうと放置していたが、このまま何も生み出さずに寝ているだけなのなら、帰ってやらないこともないと思った。
「明日帰ります。」
とだけ送って、久しぶりにシャワーを浴びた。

翌日、馴染みの駅まで新幹線と

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深夜ドライブ

深夜ドライブ

コンビニの配送トラックを待って

アクセルを踏む 君と夜の中へ

日付が変わる頃、君から連絡があった。
「今からドライブしない?」きっと何か話したいことがあるんだろう。いいよと返すと、私は上着を羽織って玄関先まで出た。
しばらくして、シルバーの車がやってきて停まる。助手席に乗り込むと、君は困った様子で言った。
「これじゃ通れないな。」
コンビニの前に配送トラックが停まって、商品を運び込んでいた。私

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ささやかな喜び

ささやかな喜び

メモ帳に溜まった言の葉の屑を

綿毛を飛ばすみたいに、夜に

思いついたこと、考えたことをスマホのメモ帳に打ち込んでおく。
しばらくすると、捨て置かれているそれらの脆い言葉たちを集めて、ささやかな伝言として飛ばしたくなる夜がくる。
まるで息を吹きかけた綿毛が華やかに舞い、新たな生命への期待を背負って飛んでいくように。

次の日がくる。
昨晩の熱はもうどこかへ行ってしまって、命を吹き込んだはずの伝言

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リアルとは...

リアルとは...

どうにでも描ける世界に、どうしても描けないもの

飛翔であるとか

全部思うようになればいいのになぁ。

何でも描ける世界、リアルを描かない世界、重力なんて存在しない世界。
そこでは「飛ぶ」ことが意味を持たない。
意味を持たないどころではない、それは単に「宙に浮いている」だけなのだから。
何の気なしにぴょんと跳んだ人がそのまま落ちてこないのと、飛行機が空へ飛んでいくのは同じこと。そこに「飛翔」とし

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君とカフェで、 <短歌>

君とカフェで、 <短歌>

"いつもの"を頼んだ君に追いついて

「スモール、アイスの、カフェラテひとつ」

私の恋人は、カフェでアイスココアしか頼まない。
夏でも冬でも、サンマルクでもドトールでも、初めて入るところでも。
店に入ると、メニューを見る動作もなくカウンターに直行してしまうから、私は少し焦って追いかける。その場で考えるのは苦手だから、特に飲みたいわけでもないのに、アイスカフェラテを注文してしまう。
そんな日常を短

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決別。

決別。

もう、君の時間はねじれの関係にある

目が合った気がしていた初夏の

サークルを辞めた。
大学一年の時から毎週末参加していたオーケストラのサークル。夏はあんなに熱心に練習していたのに、秋が来る頃には体調不良を理由に辞めてしまった。
休日にキャンパスを歩いていると、楽器を練習している音が聴こえる。少し前まで、私にとってもこの時間は練習時間だった。不思議な感覚。
これから先、私と彼らの時間が交わること

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