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窒化ガリウム(GaN)とLEDノート

窒化ガリウムについてこれまで勉強してきたことをまとめました。半導体についてさっくり知りたい人はこのnoteが役立つかも

GaNとは

窒化ガリウム(Gallium nitride)はIII-V族半導体の一種で、13族元素のガリウムと15族元素の窒素の化合物です。青色LEDの原材料として一躍有名になったので、聞いたことがあるかもしれません。窒化ガリウムはエネルギーバンドの価電子帯上端と伝導帯下端が同じ波数ベクトルである「直接遷移型」の半導体なのでよく光り、さまざまな光デバイスに応用されています。

光デバイスとしての印象が強いGaNは、電子デバイスとしての応用が大いに期待されている材料でもあります。高耐熱、高耐圧、低オン抵抗、高速駆動が可能な材料とされています。それについては機会があれば別のnoteで説明します。

半導体として有名なシリコン(Si)は価電子帯上端と伝導帯下端の波数ベクトルが異なる「間接遷移型」の半導体です。間接遷移型の半導体が価電子帯から伝導帯に状態が遷移するためには、フォノンという結晶格子の量子的な振動エネルギーを介在する必要があるため、全くと言っていいほど光りません。だから電子デバイスとして優秀なSiは、LEDなどの光デバイスとしては開発されていません。

光デバイスとしてのGaN

光デバイスの色は発光する電磁波の波長で決まります。波長が長いほど赤く光り、短くなるにつれて青く光ります。光の三原色の光源があれば、理論的に人間の可視領域の全ての色を作り出すことができます。そのため必然的に青い光を放つ光源の開発が求められていました。その中の候補に挙がっていた材料がGaNでした。

光デバイスの中でも有名なのがLEDです。LEDは既に照明や工業的なレーザーとして広く使用されています。
その中でも私たちにとって馴染み深いのは白色LEDではないでしょうか?
白色LEDは原理的に赤、青、緑の三つの色があれば実現できますが、工業的に三色のLEDを使っていたのでは製造コストも高く、消費電力も三つ分消費します。そのため多くの製品では、青色LEDから発した光を蛍光体といわれる波長を変換する物質に当てることで赤と緑の光に変換しています。
白色LEDをよく見ると、青と黄色のように見えるのはこれが理由です。実際に、白色LEDの波長分布は青色のピークがほかに比べて高く、赤色から緑色の領域にかけてピークが低く裾野が広がったような分布を取ります。

青い光は波長が短く、赤や緑よりも高いエネルギーを持ちます。LEDに限らず、この世界の全ての現象は低いエネルギーから高いエネルギーを取り出すことができません。赤や緑のエネルギーは青よりも低いので、青の蛍光体に赤や緑の光を当てても青い光は出ません。つまり、白色LEDが実現するかどうかは実質的に青色LEDの開発にかかっていたのです。

発光波長

窒化ガリウムはエネルギーバンドの価電子帯上端と伝導帯下端が同じ波数ベクトルである「直接遷移型」の半導体です。バンドギャップは約3.4eVと広く、ワイドギャップ半導体の一つに挙げられています。発光波長は360nm程度であり紫外線に相当します。LEDなどのデバイス応用を考えると紫外線は目に見えないので、インジウム(In)を不純物としてドープすることで非常に綺麗な青色を発光するダイオードを作成することに成功しています。
Inを添加したGaNをInGaN(インジウムガリウムナイトライド)といい、化学式にちなんで「インガン」と呼ばれることがあります。

光の閉じ込め

GaNはレーザーにも応用されています。単なるGaN系半導体の単体に電圧や電磁波を印加しても、結晶内部で発生した光は四方八方に拡散されてしまい、レーザーとしては使えません。
そこで、GaN系の半導体を絶縁体で挟み込んだ量子井戸といわれる構造を何重にも積層することで、電子や光をGaN内に閉じ込めて発光強度を上げています。こうすることで鋭いスペクトルを持つ単色レーザーを実現することができます。

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