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宇宙少女ソニア 「第二話 伝説のB級グルメ料理人とヤングケアラー」

 ソニアの住む河川敷に派手な屋台が現れた。その屋台から良い匂いがしてきたので、ソニアは屋台に駆けつけた。
 すると、たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、イカ焼き、唐揚げ、おでん、ラーメン、うどん、豚平焼き、そば飯などを出す、B級グルメ専門の屋台があった。ソニアは、その屋台の店主と仲良くなった。
 その屋台の店主は、怪しい覆面を被り、自らB級グルメ料理人「てどろ」と名乗った。謎の男、てどろは全国のあらゆるB級グルメを研究し、屋台で全国を放浪しながら生活を送っているという。ソニアの住む河川敷に1月間ほど滞在して、商売をする予定であり、ソニアも、ほぼ毎日、B級グルメ専門の屋台にきて、好きなB級グルメを食べていた。ソニアは、特にイカ焼きが気に入っていた。
 そんな時、一人の男子中学生が、てどろの屋台を手伝うようになった。学校で禁されているが、アルバイトをしているようであった。その子の名は、たけし君。
 カウンセラーでもあるソニアは、たけし君の顔の表情から、心の傷がある子だと思い、たけし君の身の上を聞いた。すると、母子家庭で、うつ病の母親を介護し、家事は自分が全てやっていると打ち明けてくれた。すぐさま、ソニアは、その少年がヤングケアラーだということがわかった。実に、働いている理由は、借金が100万円もあり、それを返すためであった。返さないと、家を追い出されるとのことであった。ソニアは、なんとかしてあげたいと思い、親友のコスプレイヤーのマイに相談したところ、てどろの店を手伝い、その売上金で借金を返せないかという話になった。てどろも、その話にのり、地域の祭りの日に屋台を出すことになった。ソニア、マイ、てどろ、たけし君が一致団結し、B級グルメ専門の屋台の呼び込み営業を行なった。
 祭りは、「みなとサンバ祭り」というサンバパレードがメインの祭りだった。ソニアとマイは、過激サンバ衣装(ソニアは全身金色に肌を塗って金粉サンバ、マイは全身銀色に肌を塗って銀粉サンバ)でコスプレを決め込み、多くのオタク男性の客を屋台に呼び込み、瞬く間に屋台は満員となって、その日の売上は、100万円となった。しかし、みんなで喜んで焼き芋を食べていると、焼き芋屋台の炭火の中に、たけし君が手を滑らせて100万円を落としてしまった。100万円はたちまち燃え上がった。せっかくお金を儲けたのに、みんながっかりだった。
 特に、たけし君は落ち込んでしまった。そんな時、てどろは泣いているたけし君の肩に手をかけ、そっとタコ焼きを一皿を渡し、「これを母さんに食べさせてあげな」と言った。その時、たまたま、たけし君の母親が屋台まで迎えにきたので、母親は屋台でタコ焼を食べることになった。突然、母親は「おいしい」と言い、泣き出した。なんと、その味に覚えがあるという。別れた夫が料理人であり、よくタコ焼きを作ってくれていたという。その時である。てどろは、自ら覆面をとり、たけし君の母親に「俺の味をよく覚えていてくれたな」と言った。てどろの顔には大きな傷があった。母親は、てどろを見るなり、別れた夫だと気づいた。
 そうなのである。てどろの本名は、大竹勝也。10年前に船舶遭難事故で記憶喪失になり、自分のことは一切忘れてしまい、病院を出た後、放浪の無職生活を送っていたが、料理の仕方だけは体で覚えいた。そして、料理人として、再度、働き出し、自分が何者か見つける旅に出たのであった。その過程において、様々な人たちとの出会いを通して、B級グルメこそ自分が求めている味だと感じ、B級グルメ料理人として、全国を行脚した。そのうち、彼の作るB級グルメに多くのファンが出来だし、伝説のB級グルメ料理人となったのである。そして、最近、過去の記憶が甦ったというのだ。きっかけは、ソニアとの会話だった。会話というよりも、ソニアの宇宙カウンセリング技術の効果だった。
 とにかく、てどろは、これまでの経緯をたけし君の母親に全て告白した。てどろ、たけし君、母親の三人は、涙して抱き合った。めでたく、家族がもとに戻ったのである!!  
   家族が再会し、幸福になった姿を見て、ソニアもマイも手を取り合って喜んだ。
「人助けができた!!」と喜んだ。結局、てどろにソニアは沢山のイカ焼きをもらい、マイも好きなエビ焼きをもらった。
 そして、喜びのサンバーを踊りまくった。ソニアとマイによる金粉・銀粉サンバショーである。するとどうだろうか、それを見た観客たちが、雨霰のように投げ銭を放ち出した。さらに、突然、シルクハットを被った一人の中年男性が現れ、ポンと投げ銭箱に100万円を投げ込んだのである。自称、大道芸人マネージャー、ミスター・ヒューリ氏という人物だった。とにかく、その男の100万円でたけし君は、借金を返すことができたのである。その後、てどろ親子は幸せになった。
 しかしである。一方、ソニアとマイによる金粉・銀粉サンバーショーの怪しくて可愛い魅力に惚れ込んでしまった大道芸人マネージャー、ミスター・ヒューリ氏は、二人をスカウトした。ヒューリ氏は、投げ銭の100万円は、労働契約金だと言い張り、二人は、結局、大道芸人として、各地のサンバ祭りに駆り出され、当分の間、忙しい毎日を送る羽目になってしまったのである。とほほである。


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