ジンハン

しがないミステリー好きの大学生です。 自分でも挑戦してみようと思いました(^3^♪

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マガジン

  • 私立探偵 江久学二郎

    江久学二郎の物語は《事件編》と《解決編》に分かれています。 《事件編》では謎を解くのに必要な手掛かりが全て記されています。 《解決編》へ行く前に謎を解けるか…是非挑んでみて下さい。

  • 湊崎警部補の事件簿

    彼は真実を追う。 誰かの為に、そして己の為に。

最近の記事

蛙の独唱 《解決編》

          6  横断歩道の前には、江久と宇賀親子が立っていた。翌日が平日であることを考えると自分の出した結論を時間を掛けて伝えるには今日中の方が良いと考え、江久は礼一に電話を掛けここに呼び出したのだ。 「それで、どうなんですか!?全部判ったんですか!?」  と、興奮気味の凜と押し黙っている礼一を見ながら、江久は咳払いを一つして、 「初めに申し上げておきますが、今から私が言うことに関して証拠は何もありません。ですからこれが真実かどうかは警察が再捜査してくれるか

    • 蛙の独唱 《事件編》

                1  江久学二郎が見ている写真は、海を渡る巨人の足のような橋を、バターのような黄色の特急が走っているものである。  この写真の撮影者の友人が、数ヶ月前、自慢気に渡してきたことを江久は今でも覚えている。江久が普段から接している写真に写っているのは、もっぱら凄惨な事件現場か、物騒な証拠のどちらかなので、こういった写真を江久が自分で撮ったことは殆ど無い。しかし、江久がこの写真を保管しているのには、他にも理由があった。  橋を注目して見ると、そこを走っている

      • 火刑の印 《解決編》

                 10 「全ての事件って…お前のやってる人捜しと、火事ってことか?」 「いや、先程の公園で発見された死体の事件も含めて三つだ。三つの事件は繋がっていたのさ、それを今から説明する」  江久は、手に持っていた雑誌をパンッと音を立てて叩くと、 「まず、ハッキリさせておくことがある。火事の件についてだが、あの焼死体は【ガンテツ氏ではない】」 「はぁ!?どうしてそう言えるんだよ?」 「コイツが教えてくれたのさ」  江久は、雑誌を開きパラパラとページを捲り始

        • 火刑の印 《事件編》

                   1 「こりゃひでぇな…」  十二月のとある土曜日、都内某所の廃ビルを見上げた綾川蓮の第一声である。  時刻は午前七時過ぎ、休日であることも相まってか、ビルの入口を取り囲む立入禁止のテープの外側には野次馬が押しかけている。 「まぁ、無理もないか」  綾川は、元々は【薄汚れた】程度で表現出来そうだったビルの、墨汁をぶち撒けたように黒ずんでしまった無惨な姿を見て呟いた。  昨夜、日付がまもなく変わろうとしていた時間に、「火事だっ、ビルが燃えている」と一一

        蛙の独唱 《解決編》

        マガジン

        • 私立探偵 江久学二郎
          6本
        • 湊崎警部補の事件簿
          2本

        記事

          蝶の突進 《解決編》

                   10 「一つずつ推理を進めていこう」  研究室内は江久の声だけが響いていた。綾川に、僅かな音を出す事さえ無粋だと感じさせる空気がそこにはあった。 「まず…我々は一つ大きなミスをしていたようだ、それを修正しよう」 「ミス?」 「あぁ、犯人が仕掛けた罠に嵌まっていたのさ。しかし…今、それは破れた訳だ」 「江久、何について言ってるんだ?」 「黒神さんが殺害された場所さ」 「場所?」 「その通り、この研究室内で殺されたことは間違いないだろう。しかし

          蝶の突進 《解決編》

          蝶の突進 《事件編》

                    1  濁った白い煙は口を窄めて吐き出したらあっという間に見えなくなった。十一月となって最初の土曜日、秋に見合わぬ暖かさに包まれた天蘭大学の正門に極めて近い位置にある喫煙室で清水は一服していた。  ガラスの向こう側には、キャンパス内にお喋りをしながら入っていく学生達がちらほら見える。自分の学生時代を思い出そうと上を向いた清水の眼は壁掛け時計に向いた。 ー午後三時三十分、そんなに経ってたのかー  入って来たのは十分前だが、指の煙草の長さは三分の一程短く

          蝶の突進 《事件編》

          芳醇な悪意

                    1  天野信太郎が学生マンション【ハイツ徳崎】の部屋を出たのは、七月九日の午後十一時頃のことである。天野はいつも使っているリュックの中に忘れ物はしていないか、と考えながら階段を下りていく。済ませておかなければならない用事があるとはいえ、夜中に外出するというのはそこまで気分の良いものではない。夜中というものは幽霊にしろ不審者にしろ歓迎できないものがやって来る時間である、というのが天野の持論だった。  道路に面している箇所に出て、天野はふと【ハイツ徳崎】の

          芳醇な悪意

          侵入者

                    1 ―なんてツイてないんだろう―  時刻は午後六時に差し掛かろうとしている中、帰宅途中の秋坂龍生の脳内はそのフレーズに占められていた。  一、二分で家に着くところを数百メートルの遠回りをする必要があるのはまだいい、しかしこの時間から雨が降り始めるだなんて天気予報は教えてくれやしなかった。おかげで髪はぐっしょり、ブレザーは乾かさなければ明日も最低の着心地を提供するだろうし、足は湿った靴下によって気持ち悪いことこの上なかった。  走ったところでずぶ濡