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モンティ・ライマン(著)、塩﨑香織(訳)『皮膚、人間のすべてを語る-万能の臓器と巡る10章』【基礎教養部】

『皮膚、人間の全てを語る-万能の臓器と巡る10章』は、同じコミュニティのメンバーであるあんまんさんに紹介していただいた本である。あんまんさんによる書評およびNote記事は以下を参照:
(書評は公開されるまでもう少しお待ちください)

本書は、皮膚科医であり皮膚オタクでもある(?)モンティ・ライマンが、自身の豊富な経験をもとに、皮膚について多角的に解説したものである。生物をあまり勉強したことがない僕にとってたまに言っていることがわかりにくかったり、翻訳を通してあるせいなのか、たまに論理が意味不明だったりするが、著者の豊富な経験に基づく具体的な事例、症例がたくさん述べられており、飽きずに読むことができた。

本書の内容とは関係ないのだが、海外の人が書いた科学の一般書の語り口はなんとなくどれも似ている気がする。単に翻訳を通しているからなのか、あるいは文化の違いからなのか?

人間の皮膚を理解することは私たちが何者であるかを理解すること

前回の『暇と退屈の倫理学』の書評で「ある問題についての思考を掘り下げていくと我々人間そのものに行き着く」ということを述べたが、皮膚についても同様のことが言える。本書の冒頭には次のようなことが述べられている:

人間の皮膚を理解すること。それはつまり、私たちが何者であるかを理解することだ。

モンティ・ライマン(著)、塩﨑香織(訳)『皮膚、人間のすべてを語る』プロローグ p6

そして、本書は次の言葉で締めくくられている:

だが、そんな皮膚を見れば見るほど見えてくるのは、身体の外側に沿ってあるものこそ、人間を人間たらしめているものの本質だということだ。皮膚とはすなわち、私たち自身なのだ。

モンティ・ライマン(著)、塩﨑香織(訳)『皮膚、人間のすべてを語る』第10章 魂の皮膚 p263

皮膚は人間を構成しているものの一部だからそれを突き詰めれば我々人間そのものに行き着くのはあたりまえだと思うかもしれないが、本書を読むとそんなに単純な話ではないことがわかる。

皮膚は単純に外から紫外線や細菌、ウイルスなどから身を守るために物理的にあるというだけではない。

皮膚は心とも密接に繋がっている。実際、精神的なストレスにより肌荒れすることはよくある。また、ニキビに悩み自殺を考えたことのある人はアメリカとイギリスで5人に1人に達するという調査結果が出ているらしい。これはニキビのような皮膚疾患が目に見えるがゆえに精神に影響が出ることを表すとてもショッキングな事実である。僕もアトピーなので、(自殺を考えるという程ではないが)、肌を極力見せたくないという気持ちはあるし、多少なりとも共感できる。

本書の最後の方には、哲学的な思考を進めて、皮膚は観念的な存在でもある、ということが述べられている。このわかりやすい例としては、ボトックスや化粧などの身体装飾などによって皮膚の外見に意図的な操作を加えるということが挙げられている。そのように自分の身体を変えるのは、「幸福や純潔、完全無欠、不死といった何らかの状態に達するため」であり、皮膚を変えれば自分が変わると思っているから、そのように皮膚の外見を変えようとするのである。このことから、皮膚は人間のアイデンティティと絡み合っており、したがって、皮膚は人間の本質と深く関わっていることが分かる。

日焼け対策の大切さ

この本の第4章「光に向かって」には、太陽光が皮膚に及ぼす影響について述べられているのだが、それを読んで、日焼け対策の大切さを改めて感じた。

この30年間でアメリカの皮膚がん患者数はほかの種類のがん患者の合計を上回るようになり、オーストラリアでは3人に2人が一生のうちに皮膚がんを発症するという。

モンティ・ライマン(著)、塩﨑香織(訳)『皮膚、人間のすべてを語る』第4章 光に向かって p90

と本書で述べられているように、皮膚がんは身近な問題であり、日焼け対策をきちんと行わないと皮膚がんのリスクが高まると頭では分かってはいるが(ここまで皮膚がんの患者数が多いとは思っていなかったが)、自分も含め、男性で日焼け対策をきちんと行なっている人は少ない気がする。本書でも次のように書かれている:

しかしながら、日焼けによるダメージに関する認識と実際の紫外線対策とのあいだにはーオーストラリアでもーギャップがみられ、健康に対する姿勢は一朝一夕には変わらないことが表れている。

モンティ・ライマン(著)、塩﨑香織(訳)『皮膚、人間のすべてを語る』第4章 光に向かって p96

ちなみに、本書によると、面白いことに、皮膚がんの写真を見せられて日焼けのダメージが健康に及ぼす影響を聞かされるよりも、日光を浴びてできたしわやしみの写真を見せられて肌を焼くとこの先外見に影響が出ますよと言われた方が、紫外線対策をきちんとする人が増えるらしい。

長時間出かける時は、家族の日焼け止めを借りるなどして日焼け対策をすることはあるが、日常的に日焼け止めを使用することはなかった。周りの人が日焼け対策を行なっているかどうかに関係なく、これを機に日常的に日焼け対策をきちんとしようと思う。特に、今月末にベトナムに行くのだが、日焼け対策をきちんとしておかないと大変なことになると思うので、しっかりと日焼け止めを塗って日焼け対策を怠らないようにしたい。

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