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商業出版とKindleで決定的に違うこと

僕は昨年、「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」商業デビューしましたが、それまでは10年の間Amazon Kindleで本を出版していました。ですので、現時点ではAmazon Kindle作家の時期の方がはるかに長いわけです。

両方を経験してみて、小説を書いて本にして出版することは同じなのに、双方は結構違うものだと感じています。
一番大きな違いは、Kindleは電子書籍が主体で、商業出版が紙の本が主体ということです。
Kindleにもペーパーバック出版がありますし、商業出版にも電子書籍はありますが、ボリュームは多くありません。
電子書籍が主体だと表紙や装丁よりも中身がもっとも重視されます。電子書籍でも表紙を見て読もうとする人はいるでしょうが、本を持つ、ページを捲る行為がないので、表紙や装丁に接する機会が多くありません。
電子書籍だと読みかけのページを常に開いてくれるので表紙を見ないんですよね。

紙の本は、もっとも売れている書店で手に取ってもらうために表紙はとても重要です。CDのジャケ買いみたいに、表紙買い、装丁買いする人も多いです。読み終えるまで実際に手に触れますし、読み終わってからも本棚に置かれます。自分の趣味ではない表紙の本はあまり書いたくないですよね。
紙の本だと、書店で中身をじっくり読むわけにはいかないので、表紙や装丁(帯も含めて)が買うかどうかの重要な判断材料になります。
書店でも立ち読みは多少できますが、長い時間は読みづらいですよね。もちろん、紙の本でも内容が一番大事なのはかわりませんが。

もうひとつ大きな違いは、購入方法です。Amazon Kindleでは、Kindle Unlimitedで読まれる方が多いです。Kindle Unlimitedは、月額980円で対象本が読み放題のサービスです。値付けによりますが、筆者の実績で言えば、電子書籍を購入する人よりKindle Unlimitedで読む人の方が圧倒的に多いです。

Kindle Unlimitedで読んでもらうためには、小説の冒頭が大事になってきます。気軽に無料で読みはじめることができるので試しに読んでくれる人を引き止めるために、冒頭から読者を引き込む展開が必要になります。
冒頭が退屈なら、読者はすぐ次の本に移ってしまいます。
小説は早く事件を起こせ、とよく言われますが、Amazon Kindleの場合はさらに早く物語を動かす必要があります。

紙の本は表紙や著者名で本そのものを買ってくれている場合が多いので、じっくり腰を据えて読んでくれます。そこまで冒頭から事件を起こす必要がありません(それでも展開は早い方が良いと思いますが)。

同じ小説でも売り方が異なれば、求められる内容も変わってきます。どっちが好みということではなく、本を商品と考えるなら、お客様のニーズに合わせるのは当然のことではありますけどね。



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