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桜と祖母と巻きずしと。

【はじめに】この話は、2016年に別のサービスで書いていたものをnoteに移動したものです。

私が小学生の頃の話。桜が咲くと、冷蔵庫の残り物を使って祖母と一緒に巻きずしを作り、近くの神社でひっそり咲いている桜の下で毎年花見をするのが恒例だった。

しかし、それも大人になるにつれて花見をすることもなくなった。

そして月日は流れ、2007年の春。

当時、勤めた会社を退職した1週間後の平日の午前中。ふと花見をしていたことを思い出して、何年ぶりかに一緒にお花見をすることに。

実をいうと、次の就職は実家を出て、松山でしようと決意していたので、祖母ともあまり会えなくなること、そして(むちゃくちゃ不謹慎だが)もしかすると祖母の死に目に会えないかもしれないと考えてのことでもあった。

この頃になると、若いころの無理とケアを怠ったせいか、祖母はすっかり足腰が弱ってしまい、台所で食事を作るということもままならない状態になっていた。

正直言うと、私が代わりに作りたいところでもあったが、台所の主ともいえる母がかなり神経質で、少しでも母自身が思った通りの洗い方、食器の置き方をしていないと延々とネチネチ小言攻撃が降りかかってくるため、下手に台所を使うわけにはいかない。

仕方ないので、地元で愛用しているスーパーでお惣菜を買って行くことに。いつも手作りしてくれていた巻きずしもスーパーで購入。

そして、私の運転する当時の愛車でちょっと遠出して町内の名所へと足を運んでそこで二人で久々のお花見。名所の名に相応しく、休日になると車と人でいっぱいになる場所だが、平日なので人もまばらですぐにベンチに座ることができた。

ただ、二人で満開の桜を見ながら話をしながら購入した巻きずしと惣菜を食べるだけだったけど、それだけが嬉しかったようで、帰りの車の中で「brightちゃん、ありがとね」と泣きながら言ってくれた。

その後、私は念願かない、松山で就職し、実家を出て一人暮らししながら必死に吐きながら喰いつきながら仕事をすることに。

そして、4年後。懸念していた通り、祖母の死に目に会うことはできなかった。

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毎年桜の季節が巡ってくるたび、今年こそ巻きずしを作ってお花見を…と思っているけど、未だに達成していない。今年も年度末の仕事がありがたいことに忙しすぎて作る余裕がどこかに行ってしまった。

来年で松山に出てきて10年。来年こそは達成したいところ。

ただ、多分祖母の味には到底かなわないと思うが。

…にしても、今年は今一歩遅かったorz

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