全国トップクラスの自殺率と水道料金の自治体が米国に事務所を構えるべきか?

 全国でもトップクラスに自殺率と水道料金が高い新潟県南魚沼市の市議会議員の黒岩揺光です。

 今回のブログでは、なぜ、私たちの住む市は自殺率が高いのかを考えてみます。

 

 まず、市の保健課が作成した「心の健康づくりを考える」と題した文書を紹介します。ここに市内の過去10年の自殺統計がありますが、残念ながら、この資料はネットで公開されていません。私は情報公開請求をして入手しなければいけませんでした。

 この資料によると、市の自殺者数は10年間で161人。10年間の平均自殺死亡率は記載されていませんが、計算すると、「28.1」です。新潟県は全国で4番目に自殺死亡率が高いのですが、それでも自殺死亡率は「19.8」です。いかに、南魚沼市が高いかおわかりいただけますでしょうか?

 

 次に、市内の自殺者数・死亡率の推移を見ていきましょう。

 全国的には減少傾向にある自殺者数ですが、南魚沼市は減少していないことがわかります。特にコロナ以降の令和3年と4年に増えていることがわかりますね。

 


 次に年代・性別別の自殺者の統計を見てみましょう。

 20代男性と80代の男女が多いのがわかります。

 全国的には40代、50代や60代の自殺者数一番多いので、市の傾向は明らかに異なっています。

  市内の自殺者数を減らすためには、若者と高齢者に重点を置くことが大事です。

 それでは、市の令和6年度予算案では、自殺者を減らすために、どんな対策が取られたのでしょうか?

 

 令和6年度予算の概要を見ると、予算額は過去最高の395億円となりましたが、その最大の要因は普通建設事業費が56億円も増額したからです。給食センターの統合、健診施設の建設等、新たな事業がこれを押し上げました。一方、自殺対策等を含む「扶助費」は2億円の減です。扶助費が予算全体に占める割合は、14パーセントから11パーセントへ減りました。

 自殺対策費はたったの50万円。(予算書の143ページ)

 一方で、林茂男市長は、全国の自治体としては初めて、市内の米や酒をPRするための拠点をニューヨークに作る計画で、それに着手するために、8月にニューヨークへ出張するための費用として213万円を計上しました。(予算書の69ページ、「旅行業務委託料」)

 これに関する質疑を見たい方は、録画配信の4時間45分20秒をご覧ください。これ、そもそも、私が質疑で取り上げたことで、市長が8月にニューヨークに行く予定が議会で説明されました。最初の説明では、職員が米国に行くことだけが明かされ、その職員が「市長」とは言及されませんでした。なので、もし、私が質疑していなかったら、これについて議会に説明なく、予算が採決されることになっていたかもしれません。

 林市長が公務でニューヨークへ行くのは3回目になります。全国1700ある自治体でも、水道料金や自殺率がトップクラスに高い自治体が、全国に先駆けてニューヨークに事務所を作るなんて、ちょっと私には信じられません。

 さらに令和6年は市が誕生して20周年を記念し、記念式典や事業のために7000万円の予算が計上されました。(予算書の94ページ

 80代の自殺率が全国平均を大きく上回るのにも関わらず、高齢者の水道料金福祉減免制度は昨年度に廃止されました。制度の存続を求める署名は700筆集まり、70代の女性がそれを林市長に手渡そうとしましたが、市長は面会をしませんでした。

 林市長は平成31年、「自殺対策計画」を作りました。

 そこでの林市長の冒頭メッセージはとても素晴らしいものでした。

 

 林市長は住みやすい南魚沼市にするためには、「自殺者が少ないことこそが、その最大の評価指標」と言い、「困り事が小さいうちに早期に解決できる支援体制を構築」すべきと記しました。

 全くその通りです。

 

  平成31年の自殺計画でも、20代男性と80代の男性と女性の自殺率が全国平均を大きく上回っていることが示されていました。

 

   自殺計画では、高齢者の支援策として、サロン活動等の交流機会の創出が示されました。

  市民からも、高齢者に役立つ催しをしてほしい、と要望が出ています。


 しかし、高齢者のサロン参加者数や筋力づくり教室の参加者数は目標の半分以下で、令和6年度予算案に増額はありませんでした。

 


 私は魚沼市の様に、送迎サービスをつけてでも、こういった事業を拡大すべきと訴えてきました。

 通院や買い物のための足の確保に関しては、多くの市民から強い要望が上がっていますが、令和6年度の予算案では、増額はありませんでした。

  自殺計画には、 若者の自殺が高い要因の一つに職場での「パワハラ」が挙げられていました。

 パワハラやセクハラ行為に対しては、強い姿勢で臨むことが自殺対策にもつながるということなのだとおもうのですが、残念ながら、林市長が幹部に任命した元職員がその地位を利用して、若手職員に対しわいせつ行為を勤務時間中に庁舎内したとして、不同意わいせつ罪で起訴されてしまいました。検察によると、この元職員のわいせつ行為は数か月続いていたとのことで、なぜ被害者が声を上げられなかったのか疑問です。

 この件について私は一般質問で取り上げ、セクハラ対策や不祥事対策に力を入れるべきと提言しました。しかし、市長は今すぐ何かをやるということはないという答弁でした。

 
 市内の10代と20代の自殺者数は10年間で20人で、半年に1人、若い人が自ら命を絶っているということになります。

 当然、小学校、中学校からしっかりしたサポート体制を築くことが求められますが、ここ数年で、市内の小学校のいじめ認知件数や不登校児の数が急増していることが気がかりです。

 

今年1月に議会総務文教委員会で提出された資料で、市のHPには公開されていません。
同じく、今年1月に議会に提出された資料。市のHPには公開されていません。

 
  自殺対策には、「学級満足度調査の結果を活用」とあり、保護者や児童の声を聞くことの大切さが書かれています。

 しかし、私の息子が小学1年生で市内の北辰小学校に通っていますが、1年間を通して、一度も学校運営に関し、学校から意見を求められたことがありません。北辰小学校が好きかどうか、息子が朝ごはんを食べているか、家で勉強をしているか、などの調査はありましたが、「学校の運営に関しご意見があれば自由に記してください」という質問はありませんでした。保護者や児童と学校運営に関し意見交換し、保護者の意見を学校運営にできる限り反映させることこそ、「適切な支援」につながるのではないでしょうか?

 3月議会での予算審議で、学校や学童で保護者にアンケートをするか聞いたところ、市の片桐克巳・教育部長は「実施する予定はない」と答えました。

  そもそも、市民のどれくらいの方が、市内の自殺率がこれほど高く、20代と80代は特に高いということを知っているのでしょうか?

 市は市内の自殺傾向のデータを持っているのですが、公開していません。

 しかし、自殺計画には、明確に市民からの要望として、「自殺率が高い地域であることを市民が知れるようにしてほしい」「自殺の現状や理解の向上のためのい周知」が記されています。

 議会でも、私は市のHP等で公開すべきと提言してきましたが、いまだに、公開されていません。80代女性の自殺率が全国平均の3倍、4倍だということはしっかり知れ渡るべきです。

 

 特に、市民が知るべきことは、全国的には同居人がいない方が自殺するリスクが高まるのですが、南魚沼市の場合、同居人がいた方が自殺率が一気に高まるということです。特に80代女性の場合、同居人がいない場合は自殺した方がゼロだったのに対し、同居人がいる場合は、全国平均を4倍も上回るリスクの高さになります。

 こういう情報が広く知れ渡れば、「あ、あのお家は80代の女性で同居人がいるからリスクが高いかもしれない。今度、一緒にお散歩誘ってみよう」というきっかけができるかもしれません。

 というわけで、令和6年度の予算案ですが、平成31年に書かれた自殺計画に沿った予算案には全くなっていません。

 しかし、これはあくまで予算案です。

 私たち議会が、「もっと福祉に力を入れろ」「自殺対策に力を入れろ」といって、予算案を否決すれば、行政は予算案を変更しなければいけません。このために議会があるのです。

 予算案を賛成するか反対するか、議員が決める前に「討論」があります。

 議員は、それぞれの「討論」を聞いて、賛成するか反対するかを決めます。

 令和6年3月19日は、南魚沼市議会は4日間に渡って市年度予算案について質疑をし、その最終日でした。質疑が終わり、討論には6人の議員が登壇しました。五つある会派の代表者と私です。

 どうか、皆さんが1票を投じた議員の意見と、皆さんの意見が合っているかどうか、しっかり吟味してください。

 討論は録画配信で見ることができます。議事録は5月末に見れるようになります。録画配信では、3時間19分50秒から始まります。

  まず、共産党議員団を代表し、中沢道夫議員が反対討論をします。

 次に、未来創政会を代表し、永井拓三議員が賛成討論をします。

 そして、私が反対討論をします。討論中、清塚武敏議長から、討論を辞めるように指示されましたが、議員の発言権の侵害以外の何物でもありません。私は議長の言葉を無視し、討論を続けました。

 是非、私の討論をご覧ください。録画配信では、3時間30分50秒からです。清塚議長がなぜ、討論を止めさせようとしたのか、理解ができる方がいたら教えてください。

 南魚沼市議会映像配信-録画配信 (jfit.co.jp)

 その後、南魚みらいクラブの吉田光利議員、市民クラブの梅沢道男議員、歩む会の塩谷寿雄議員、が賛成討論をします。

 採決では、私と共産党議員団以外の全員が賛成をし、予算は可決されてしまいました。

 水道代と自殺率が高い南魚沼市で、自殺対策費は50万円で、扶助費は2億円減、建設事業費は59億円増、さらに、市長が全国発となるニューヨーク事務所を開設するためにニューヨークへ行く出張代200万円等を含む過去最高の395億円の予算案が可決されました。

  どうか、皆さんのご意見をお聞かせください。


 

 

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?