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冬の夜長 猫と私

東京にも、雪が降りました。
積もりました。
私の部屋は窓際が全面ガラスで、外の景色を楽しむことができます。
昨日だったか、一昨日だったか、
窓の外は、実家で過ごしていた日々を思い出すように、
雪がしんしんと降っていました。

私は重度のアレルギー持ちです。
大学病院の検体を依頼される程です。
その中でも特に、猫アレルギーは数値がMAXでした。
正確に言うと、「数値が高過ぎてこれ以上は測れません」とのこと。

私は結婚してからしばらく別居婚をしていました。
理由は様々あれど、夫の飼っている猫と同居することは不可能だと考えたからです。
お医者様からは「自殺行為だ」と言われました。

実際、まだ彼と付き合っている頃、
彼の家に上がるだけで鼻水やくしゃみが止まらなくなり、
夜は喘息の発作が治らず、朝起きた時には目が腫れ上がるという具合でした。

だから、同居をすると考え始めた時、
物件の立地や間取りはもちろんのこと、
いかにして猫と居住スペースを分けるかを入念に模索しました。

結果、
・猫は夫の部屋で放し飼い
・その部屋からは出さない
・夫がその部屋に入る時はその部屋専用の服を着る
・特にパジャマでは入らない
・そして、私は絶対に猫と関わらない
というルールを設けました。

夫が独身時代に住んでいたマンションは一部屋4フロアのとても大きな造りでしたから、
猫は1階から4階まで自由に行き来して、引きこもりライフを満喫しているようでした。

今の物件も、
猫のためにと、23区の中でも各ワンルームが大きめの物件を選んだつもりですが、
それでも、これまでの猫の居住スペースを考えると、
猫にとってはかなり狭い生活範囲になったことでしょう。
申し訳なく思いました。
ストレス溜まったりしないだろうか。

猫アレルギーだからといって猫が嫌いなわけではなく、
むしろ動物は大好きで、特に羊なんかは、特に。

羊だったらたくさん撫でたり追いかけ回したりできるのですが、
猫はそうにもいかない。
同じ部屋に数分いるだけで咳が出てしまう。
おそらく、どんなに掃除機をかけても、
空気中に猫の毛が舞っているからでしょう。

だから、夫の部屋の扉を少し開けて中の様子を覗き見しつつ、
猫のお世話は完全に夫に任せる、そんな日々が続いておりました。
そんな日が続くと思っておりました。

夫と私は同じ会社に勤めていますが、
定時上がりの私に対して、夫はほぼ毎日残業をしています。
先に私が帰宅すると、
夫が帰ってきたと思ってご飯を待つ猫の鳴き声が聞こえるんです。
最初は聞き流していました。
あと1時間くらいであなたのご主人が帰ってくるからね、と。
そうして、夫が帰宅すると、即座に自分の部屋に入って行って、
猫に遅めの夜ご飯をあげているようでした。

ですが、残業するくらい多忙な夫です。
夜も、お風呂に入って夜ご飯を食べると、ベッドの上ですやすやし始め、
ものの5分くらいで熟睡してしまうんです。

対して私は夜行型。夜になると活発になります。
ちょうど今のようにnoteを書き始めたりしていると、
隣の夫の部屋から、深夜のご飯を待つ猫の鳴き声が聞こえてきます。

あまりに可哀想だと思って、
意を決して、私自らご飯をあげることにしました。
自殺行為だということはわかっているので、本当にただご飯をお皿に載せるだけ。

そんな程度の関わり合いしかないからなのか、
猫は、私には、夫に対するようにお手をしたりハイタッチをしたりはしてくれません。
それでも、美味しそうに食べる姿を微笑ましく思いました。

夜ご飯をあげること以上はせず夫の部屋を出て、
すぐさま手を洗い、アレルギーの薬を飲んで、喘息の吸引機を吸って、
命懸けで夜ご飯をあげました。

そんな日々が続くと、
猫も私のことを認識し始めたのか、
私が夫の部屋に入ると近寄ってきて、挨拶してくれるようになりました。
私の周りを何度もぐるりと回って、私の足や膝や腕に頭突きをする。
それが猫にとっての挨拶のようです。

最初は夜ご飯をあげているだけでした。
だけどそれでは物足りなくなり、私も夫と同じように何か技を覚えさせようと思いました。
…が、断念。
全然言うことを聞いてくれません。
その自由奔放さは、私といい勝負だと思います。

しかし、ものは継続力。
今では、私が夜ご飯を準備してお皿の前で待機していると、
二足たちになって頭で頭突きをしてくれるようになりました。
それがご飯をもらえる合図だと覚えたようです。
可愛いものです。

気づけば、アレルギー症状もそんなに発症しなくなっていました。
猫を触ったあとはやっぱり手が痒くなるけれど、
すぐによく石鹸で洗えばなんとかなる程度にはなっていました。

これは、夫が1月に2回も猫をお風呂に入れてくれたので、
アレルゲンが洗い流されたからかもしれません。
また、夫の部屋は毎日ルンバくんがお掃除してくれていますから、
カーペットについた毛を吸ってくれているからかもしれません。
窓を常に少しだけ開けて常時換気し、
さらには高性能の空気清浄機をつけて、
少しでもアレルゲンを除去できるようにしてくれました。
夫が。

そして今日、夫が寝静まってから、夫の部屋を覗きに行くと、
私の前で、いつものようにカーペットになる猫。
(お腹を天井に向けて伸びをしている状態を私は『カーペット』と呼んでいる)

あまりの可愛さに、抱きしめました。
私も寝転がって、猫を自分の胸のあたりで温めたり、
膝の上に乗せて後ろから抱きしめました。

猫は抵抗することなく、喉をゴロゴロ鳴らしながら、
手足を伸ばしたりして、リラックスできているようでした。

とても幸せな気持ちです。

猫はメスです。私は女です。夫は男です。
夜は、
夜の、夫が寝静まってからの時間は、
猫と私、女1匹と女1人だけの時間です。
女同士の時間です。
私たちはきっと似たもの同士です。
夜行型で単独行動が大好きだから。

今日も一日家族のために働いてくれた夫の寝息を守りつつ、
私は自分の部屋で、
韓国語の勉強をしたり、独身時代に買い溜めていた気になる本を読んだり、
飽きたら猫に遊んでもらったりして、
この冬の、長い長い冬の夜を、満喫しています。

って言ったって、もうすぐ4時じゃん。
明日の仕事中はきっと眠たくなるんだろうなあ。
その頃にはきっと、猫が家で、窓辺から道ゆく人を見送りながら、
悠々とお昼寝してるんだろうなあ。

もう少しだけ、夜が長くなればいいのに。

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