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私達は同じ時間を共有する友である

「この分散方向の世界の中で、私達は同じ時間を共有する友である」

理論物理学者のカルロ・ロヴェッリさんの著書
「時間は存在しない」の中間部から後半部の
内容を読んで考察した文です。

まず、著書の前半の話であり、現在の物理学の世界での常識として、
”時間”はその場にかかっている重力や速度によって”変化”することが
実験的に計測されています。

映画「インターステラー」の中で、在る星に下りている数分間の間で
宇宙船内は10年以上も時間が経過しているという場面がありますが、
それは、現在の物理学の中で計測されている結果なので、フィクション
ではありません。

さて、そんな訳で「時間は常に一定である」というのは、
この世界においてはじめから成り立っていない事が分かっています。

その為、理論物理学の間でも「人は何故過去に行けないのか?」
が真剣に話し合われてきたのです。

車いすの宇宙物理学者として有名なホーキンスさんも生前に
「時間は映画のフィルムのように駒切になっているのではないか?
そして、人は、その切れ目の為に時間を超えられないのではないか?」
と言っていました。

その後も色んな説が成されながらも
現在もっとも有力なのは、熱力学からのアプローチです。

意外なことかもしれませんが、時間の一定方向に進む概念が
物理の法則の中で適応されているのは、熱力学の第2法則”だけ”です。

簡単に言うと、この熱力学の

第1法則は
「地球に在るエネルギーは、常に一定」というもので。

石油を燃やせば、石油のエネルギーは世界をその分”温める”ので、
エネルギーの「総和」は一定ということです。

そして、第2法則は
「常に熱は分散方向にある」という事です。

これは、水槽にインクを落とせばインクは”時間を経過するごとに
広がっていく”事と同じで、何かを燃やせば、その熱は空間を
温めていきます。

その逆はありません。

逆ってのは、空間を温めた熱を集めて、火の元になった薪に
戻す事はできないってことです。
つまり、この法則は時間的に逆行することができないのです。

その為、この法則の中に時間を戻れない理由があるのではないか?
と考えた訳です。

かなり端折りますが、この事よりカルロさんは、
「私達は分散方向(第2法則)の世界の中で生きているのではないか?」(かなり要約です)
といった考えを示します。

カルロさんによると、宇宙自体にはそんな分散方向だけでなくて、
収縮方向に変化も可能なのだけれど、私達が「生きている」世界は、
そのうちの分散方向のみにしかいないだけなのではないだろうか?
と・・・

ここからのカルロさんの例えは面白くて

「白と黒のカードが在るとする。それが混在しているのが宇宙
 なのだけれど、在る時、たまたま、白と黒のカードがきれいに
 白と黒に分けられたとする。

 すると、そこからはシャッフルする度に、カードの並び順は「分散」
 方向に変化していく。
 
 カードの枚数が50枚程度ならあっという間に分散は収縮に
 変わるタイミングがやってくるだろう。
 
 けれど、その枚数が何兆枚ならどうだろう?
 
 かなりの間、世界は分散方向を行う世界になるのではない
 だろうか?
 
 そして、この分散方向の間だけ、私達は「時間」というものを
 感じて生きているという状態でいられるのではないだろうか?」
というものです。

この考えに則れば、聖書の「光あれ」は、
その白と黒にカードが分かれた瞬間。

その時に、一番初めの”時間”が生まれたのであって、
宇宙自体は、その前から混沌としたエネルギー場で
あったというのも納得がいく気がします。

そんな訳で分散方向の世界に私達がいる、
として。

ここでもう一度「なぜ時間を戻れないのか?」の問です。

この分散方向の世界において、時間を戻るとは
「その分散状態に戻る」という事です。

では、その分散状態とは?

それは、自分自身の記憶や経験も含めている「分散状態」なので、
もしタイムスリップした場合、
「私は、私がタイムスリップしたことを理解できない」
となります。

過去の分散状態に世界が戻っているのに、
自分の頭の中”だけ”がさらに進行した分散状態(未来)に
在ることができないからです。

つまり、私の経験などを含めた全てにおいても、
その時の世界の分散状態にピッタリあって
いないと、時間は戻れないという事です。

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