毒親は日常に溶けている
毒親についてのYouTubeを見ていたら、こんな内容の動画があった。
「父親の悪口を、子供に日常的に言う母親は毒親」
「そうやって子供をコントロールする母親は毒親」
ふぅーーん!そうなんだ!
世のお母さんは、みんなやってると思っていた。
私の母親は筋金入りの毒親だから、父の悪口どころか、父の実家の親族達や友人関係、隣近所の人たち、自分の友人、私の友人、私の担任教師、自分の兄弟etc…とにかく毎日悪口のオンパレードだった。
日常的に父の悪口を言っていた。
「あんなのと結婚するんじゃなかった。あんな下品でタヌキみたいなオヤジなんか、恥ずかしくて人様に紹介出来ない。大体ご飯の食べ方なんかも全然なってない。常識もないし、言葉だって東北弁が抜けない田舎もん丸出しじゃない!あんたもそう思うでしょ?結婚するとき、あのタヌキはしつこかったの。私は根負けしただけ。私はね、タヌキの前は、立教大出の人と文通してたんだよ。あーあ、立教くらい出てる人と結婚すれば良かった!そしたらあんたは生まれてないけどね。しかしあんたは見れば見るほどパパにそっくりだね。デブだし、頭は悪くて、顔がデカくてブサイクで…将来嫁にもらってくれる人なんかいないだろうけど、パパを恨むしかないよ。パパに似ちゃったんだから。不憫な子!私に似れば良かったのにね。お兄ちゃんは私似だから本当に良かったよ」
ひどいな、と思うけれどこれが「毒親」だと人から言われないと分からない。
私はこれはただの母親の強い個性だと思ってきたのだから。
そして、母は母にしか分からない苦労をしているのだ、かわいそうにと思っていたのだ!
多かれ少なかれ、世の中の母親はこういうことを子供に言うものだ、とも思っていた。
母が父の悪口を言う。
私は大人しく聞いている。時々相槌を打ちながら。時々、うるさい言い過ぎだ!と思いながら。時々、まさしく私もそう思う!と納得しながら。
父が仕事から帰ってくる。
何も知らないパパ。
パパがいないのをいいことに、今の今まで私たちはパパの悪口を言ってたの。
ダサいとか、バカとか、田舎っぺは一生田舎っぺだとか。
パパが着替えて夕ご飯を食べ始める。
その姿を見て、胸がツンと痛んだ。
母は、パパが下品な食べ方をしないかどうかチェックしている。
母が怒鳴る。
「パパがそんな下品な食べ方するから、娘にしめしがつかないじゃないの!娘がかわいそうじゃない!」
パパは「また始まったか」といった顔で、苦笑いをする。いつもこうやってやり過ごしていた。
しめしがつかない?娘がかわいそう?
子供の私には、その言葉の意味がよく分からなかった。
分かったのは、私を利用してパパを攻撃していること。何にも知らないパパに申し訳ない、悪口ばかり言ってごめんなさいと心の底で泣いている私がいたこと。
母には絶対に逆らえなかったから。
私が母に意地悪をされたり、外に追い出されて寒さの中震えていたとき、ほんの時々だけどパパがこっそり助けてくれていた。
パパを裏切る自分が、とてつもなく浅ましい卑しい人間になったかのようなそんな気がした。
よくお風呂の中で、泣いて懺悔していた。
神さま、私はほんとうにダメな子です。パパを毎日裏切っています。何にも知らないパパは笑っているし、きっと許してくれるでしょうけど…私は自分のことが許せないくらいいやなのです!
早く私を死なせてください。
私みたいな汚い子は、生きていたらいけないのです。
ところで、父は父で毒親だった。
私が母から意地悪をされていても、見て見ぬふりをすることが多かった。
娘の私には優しいところもあったが、兄にはしょっちゅう暴力を振るっていた。
私には優しい父が、鬼のような顔で兄を殴るのを見るのが怖くて、よく殴られている兄の体に覆いかぶさり庇っていた。
兄を庇いたいというより、この恐怖時間を終わらせたかった。
そんな兄から私はよく殴られていた。
わ…わ…分からない。
家族の何が正しいの?
家族の誰が正しいの?
優しい人ってどんな人をいうの?
どこに優しい人がいるの?
いたら、会いたい。
私優しくされてみたい。
YouTubeでは、このように締めくくっていた。
どんなひどい親でも、子供は自分の親のことが大好きなんだ。だから、あんなヤツでも愛されたかったなぁ…と自分を労わることをして下さい、と。
親が毒親でも自分は幸せになれると知ってください。
私もこの考えに賛成している。
毒親を許すと負けた気持ちになるけれど、人を理解するのに勝ち負けは関係ない。
どうしようもなく幼くて失礼で優しさのないママだけど、わたしのママというだけで好きなんだ。大嫌いでもあるけど、大好きなんだ。
わたしのママ。
甘く悲しい響き。
他人も自分も愛せないママは、愛を知らない。
愛は、あったかい哀しみで出来た深い湖だ。
知らないままならさっさと死ねばいいのに、愛が何か分からなければこの世は楽しくないでしょ、と私はなぜか泣きそうなくらいの愛情いっぱいの気持ちで思う。
この気持ち、分かってくれる人はほとんどいないだろう。
死ねと思いながら、ママ大好きと同時に思うことのおかしさ。
奇妙だけれど、私にはしっくりくるのだ。
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ちょっとした悪口は普通の家族間でもあるけれど、毒親色濃厚のラインは、「家族同士徒党を組んで、意図的に家族の誰かを除け者にすること」だそうです。
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