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あのたび -中国電車移動-

 北京に知人のKLさんが居たので訪れることにした。大手企業の北京支社長という立場で数年単身赴任することになっていたようだ。まだ赴任して数ヶ月だというのに中国語会話をかなり習得していた。

 上海から北京へは電車で行くことに決めていた。20年前の2003年当時はまだ高速鉄道は開通していない。
 日本であらかじめ調べた情報によると、特急で14時間・鈍行で24時間かかるとのことだった。さらに座席の種類が4つある。硬座・軟座・硬臥・軟臥とあり順に料金が高くなる。硬座は文字通り硬い座席(おそらく木製)、軟座はそれにシートが張ってある座席、硬臥は寝台で硬いベッド、軟臥はソフトベッド。
 急ぐ旅行ではないのでゆっくり24時間の鈍行にした。24時間座りっぱなしというのもつらいので、横になって眠ることができる硬臥のチケットを前日の上海駅で購入して予約した。おそらく300元(≒4500円)ほどだった気がする。上海最後の夜は同じように旅行をしている韓国人5人+日本人3人+ノルウェー人1人で酒盛り。言葉はあまり通じないがつまみと酒があればだいたい仲良くなる。旅行先で出会う韓国人は誰もが優しく親切な印象がある。

 翌日夜20時発の便なので駅構内で時間を潰していた。でようやく乗車したのだがもちろん周りは中国人だらけ。2月でまだ寒い上海からさらに北の北京に行くのでもっと寒くなる。が電車内には空調がない。さらになぜか同乗している中国人グループが窓を全開にして風がビュンビュン入ってくるのだ。
 2003年当時の中国はまだまだマナーが悪く、窓の外がゴミ箱と思っているのかと言わんばかりになんでも捨てるのだ。車内は禁煙と書いてあるにもかかわらずタバコを吸いまくっているし、その灰はもちろん外に落とす。お菓子の袋やバナナの皮を外に捨てるのは当たり前だしタンも吐く。最も驚いたのは、カップ麺を食べたあとの残り汁が入ったまま窓の外に放り投げたことだ!
 窓を閉めろという勇気もなく24時間寒風に吹かれたままで北京に到着し風邪を引いてしまった。一人旅で最も気をつけねばならないのは体調管理なのだが、出国して一週間で気分が悪くなってし合った。

 北京に到着した夜にKLさんに北京ダックをごちそうしてもらったのだが、全く喉を通らず申し訳なかった。翌日は昼まで休ませてもらい、KLさんは仕事が休みだったのかわざわざ予定をあけてくれたのか世界遺産の紫禁城(故宮)へ。北京は広いがタクシーが安いというので移動はタクシー。夜は旨いという羊肉や中国版お好み焼きを食べさせてもらい、KLさんの友人が集まりクラブ、カラオケなどはしごして朝5時まで豪遊させてもらった。支払いは全てKLさんもちでボクは1元も払っていない。ごちそうさまでした。
 また集まった友人の中には世界各地を周ったというカメラマンや超美人、詩人など個性の強い人ばかりで楽しかったがさすがに眠かった。KLさんによると中国には終電という概念がないらしい。国土も広いので24時間電車は走っているし夜はタクシーがあるので時間を気にせず飲むようだ。

 中国のあとはベトナムへ陸路国境を越えて行こうとだけ決めていたので、もう一日だけお世話になって南下することにした。カメラマンの方が雲南省の麗江(リージャン)という所がいいというので旅程に組み込んだ。
 北京から麗江へ行くには攀枝花(読めない)という駅まで電車で行きそこからバスに乗るルートがある。しかし中国は広い。北京から攀枝花まではなんと44時間
 料金を調べると硬座が253元、軟座が458元、硬臥が705元(≒1万円)。一番安い硬座にしたのが失敗だった。リクライニングもないほぼ直角の硬い座席に40時間以上。そして周りはマナーがたいへんよろしくない中国人に囲まれたボックス席。彼らは車内の床にゴミを捨てる。控えめに言って地獄である。

 この記事を書いた方の写真のとおり、まさにこのままなのだ。上海→北京間の電車の同乗者たちが、窓の外にゴミを捨てていたのはまだマナーがよい方だったのだ! 
 しかもタンをそこらに吐くのでボクの靴やズボンにつかないように常に気をつけていなくてはならない。トイレに行くときは荷物が心配なので全部持っていき、用を足したあと席に戻ると誰かが座っている。おいおいそこはボクの席だぞ、とどいてもらう。夜は座ったまま膝においたリュックを枕にして寝る。
 このような状態が2月15日の朝11時から17日の7時までほぼまる2日間続く。たまに掃除屋さん2人組がやってきて、片方がほうきとちりとりでゴミを片付け、もう片方がモップで床を拭いてまわる。がその数時間後はまたカオスな床になってしまう。
 この電車は全くおすすめはしない。多少高くてもよいシートか飛行機を使うべきだ。いくらおおざっぱなO型のボクでもこれには耐えきれない。今おもいかえしてみてもあの時の自分を褒めてあげたい

中国ルート

(つづく)


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