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インターフェロンγ - IFN-γ

注釈


IFN-γとは

IFN-γ(interferon gamma)は、主にTh1細胞やNK細胞、CD8T細胞から産生される分泌されるサイトカインで、マクロファージや樹状細胞を活性化します。白血球による炎症を強化する作用をもち、細菌貪食や殺菌機能を高めています。

IFN-γは、主にNK細胞(ナチュラルキラー)から生産され、Th1細胞の分化を促すことが判っています。

IL-12もTh1細胞の分化を促がすことが判っています。IL-12は、主に、樹状細胞とマクロファージから生産されます。

これらのシグナル因子は、サイトカインと呼ばれています。主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、細胞表面に存在する受容体との結合などを介して、細胞間の情報伝達を担っています。

ホルモンとの明確な区別はありません。
一般的にホルモンは、特定の臓器から分泌産生されるものを指しています。

インターフェロンは相互に影響し合っていると考えられていて、I型のIFNからII型のIFNに対して、構成的な調節機構が存在していることが判っています。

IFN-γは、I型インターフェロンに比して積極的な免疫への関与はされていないと考えられてきましたが、近年、IFN-γが、自己免疫疾患や癌の発症にも重要な役割を果たすことが明らかにされつつあります。また、IFN-γが、代謝関連遺伝子の発現の誘導に影響を与えていることから、他のインターフェロンに比して、代謝系に関連していることが示唆されています。


IFN-γとT- bet

IFN-γに刺激された伝達経路を通じて、STAT1が活性化されて、T- betと転写因子の発現が誘導されると、T- bet が、Th1細胞への分化を誘導します。これにより、IFN-γが大量に発現するようになります。

転写因子T-betは、IFN-γの産生を直接的に制御していることが判っています。

遺伝子オントロジー解析によって、T-betによる解糖系の酵素を含む代謝遺伝子への影響が認められています。

T-betが、IFN-γの動きを誘導、抑制、促進することによって、IFN-γの動きを決定づけている可能性があります。

下記の研究にて、T-bet欠損したT細胞において、抗I型IFN投与を行ったところ、I型INF及び、IRF7のmRNAレベルでの異常な発現を改善したが、IRF3には影響を及ぼさなかったことが上げられています。IRF3は、他の研究で、INF-βに依存する可能性が上げられています。

「転写因子T-betはTh1細胞においてI型インターフェロン応答を抑制する」菅野由香・岩田 慈・三上洋平
(米国NIH National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases,Molecular Immunology and Inflammation Branch)2017


T-betとDNA

T-bet転写因子は、Bhlhe40と結合し、クロマチン構造を変化させることで、ナチュラルキラーT細胞のIFN-γの産生を助長することが判っています。


*Basic-helix-loop-helix family e40 (Bhlhe40)

クロマチン構造は、DNAの細胞核内の構造で、基本構造であるヒストン(H2A、H2B、H3、H4)が形成するタンパク質複合体に、約146塩基対のDNAが巻き付いている構造です。


Transcriptional regulator Bhlhe40 works as a cofactor of T-bet in the regulation of IFN-γ production in iNKT cell. 
Edited by Michael B. Brenner, Harvard Medical School, Boston, MA, and approved April 29, 2016
Masatoshi Kanada, Hiroyuki Yamanaka,Satoshi Kojo,Kenichiro Seino

https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.1604178113


IFN-γ活性化メカニズム

下記の研究により、病原体成分がT細胞を活性化するメカニズムが明らかにされています。これに付随して、T細胞の活性化によって、IFN-γの産生が優位に増加することが明らかにされています。

TLR2は、抗原にさらされたことのないナイーブT細胞は活性化しないが、エフェクターT細胞と呼ばれる感染防御に重要なTh1細胞や、ウイルスや腫瘍の排除に重要な活性化CD8T細胞などを活性化させます。

TLR2は、自然免疫と獲得免疫の両方に作用発現することが判っています。TLR2は、樹状細胞やマクロファージなどの細胞のみならず、T細胞にも発現します。

インターロイキン-2(IL-2)が、Th1細胞の増殖因子であり、高濃度のIL-2の細胞培養液の中では、TLR2によって誘導されるIFN-γの産生やNF-κB、ERKの活性化が高いことが認められています。

T細胞増殖に必要な栄養センサーと呼ばれているmTORC1抑制下において、TLR2でT細胞を刺激した場合、TIRAPの発現が低下することが判っています。また、IFN-γの産生が著しく抑制されることが明らかになりました。また、この抑制は、TLR2の下流のシグナル分子であるNF-κBやERKの活性化にも左右しています。

この研究により、T細胞は、IL-2によるmTORC1の活性化を介して、TIRAPの発現を誘導し、このTIRAPによってTLR2を誘導し、エフェクターT細胞を活性化して、IFN-γの産生を誘導していることが明らかになっています。

アダプター分子について

酵素活性は持たないが、他のシグナル伝達分子と相互作用するドメインを持って会合することにより、シグナル伝達の役割を担う分子である。

病原体成分がT細胞を活性化するメカニズムを解明 



病原体成分がT細胞を活性化するメカニズムを解明
-感染症や自己免疫疾患の新たな治療法の開発に期待- 理化学研究所 2020

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター免疫シグナル研究チームの今西貴之上級研究員、斉藤隆チームリーダーら



マクロファジーとIFN-γ


マクロファジーについて

マクロファージは免疫システムを担う細胞の1つで、生体組織からのシグナルや環境ストレスによって活性化し、感染防御や組織修復などさまざまな作用を示します。マクロファージの活性化は、T細胞[2]が分泌するインターフェロンガンマ(IFNγ)[3]や結核菌感染などの刺激で生じます

マクロファージを活性化させる転写因子を発見


下記の研究によって、マクロファージでのBatf2の誘導が、IFN-γ刺激や感染防御遺伝子の発現に必須であり、Batf2がこの発現を制御していることが判っています。また、Batf2は、IFN-γや感染によって誘導されるIrf1転写因子との複合体を形成し、この発現誘導を行っていることが示唆されています。

マクロファージを活性化させる転写因子を発見 理化学研究所 ケープタウン大学 2015


糖尿病患者のIFN-γ低下

下記の研究にて、結核患者において、糖尿病合併群において、IFN-γの生産が優位に低下することが示されています。


糖尿病合併肺結核患者のIFN-γ産生能の経時的変化の検討 2002
塚口 勝彦, 岡村 英生, 松澤 邦明, 田村 猛夏, 宮崎 隆治, 玉置 伸二, 木村 弘



IFN-γと化学物質過敏症

研究により、化学物質過敏症(MCS)罹患者のインターフェロンγ産生能が有意に低いことが認められています。

インターフェロンγは、自然免疫系と獲得免疫系の両方に関与するTh1系サイトカインで、MCSではTh1系の反応に、なんらかの不全がある可能性が示唆されています。


参照



The journal of immunology
Cutting Edge: TLR2 Directly Triggers Th1 Effector Functions
Takayuki Imanishi, Hiromitsu Hara, Shinobu Suzuki, Nobutaka Suzuki, Shizuo Akira and Takashi Saito 2007

https://www.jimmunol.org/content/178/11/6715

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