【NYY】Marcus Stromanを獲得!
日本時間1月12日10時51分、FAとなっていた右腕Marcus Stromanとヤンキースが契約合意に至ったとの報道がなされました。
また、Joel ShermanによればAAV18.5Mの2年契約であり、Andy Martinoによれば2年目に140イニングを投じた場合には3年目のベスティングオプション(これも18.5M)が加えられるそうです。
今回のnoteでは、ヤンキース念願のローテーション投手確保に関してまとめていきます。
①先発投手の確保が必至であったチーム状況
この冬最大のトレードを敢行したことでJuan Soto(残り1年)とTrent Grisham(残り2年)の獲得に成功したヤンキースでしたが、対価としてアクティブロスター内の投手を3名放出。(King、Brito、Vasquez)
これによりバックエンド先発~スウィングマンがゴッソリと抜けたわけで、モックローテーションではYoendrys GomezやClayton Beeterの名前が挙がるほどの惨状に陥っていました。
そんなヤンキースにとって、最大の求婚者は今季NLサイヤング賞のBlake SnellとWS制覇の立役者にして昨季途中まで在籍したJordan Montgomeryの2人でありました。特にSnellはNYYとの契約に前向きとの一部報道も見られましたが、両名とも高額必至のBoras案件であったことで交渉は難航。Snellには正式なオファー(総額150M・5年契約との報も)を提示したものの彼らの要求とは差が開いており合意に至らず。悲しいかなMontgomeryに至っては古巣ヤンキースよりもレンジャーズ残留をプッシュしている様子です。
一方のトレード市場においてはホワイトソックスのエースDylan Ceaseやマーリンズで再び輝きを放っているJesús Luzardoの獲得も噂されましたが、複数年保有可能な彼らにALL INという姿勢は流石のヤンキースでも消極的であり、今日まで進展はありません。
そんな状況で飛び込んできたのがBob Nightengaleによるツイート。FAとなっているベテラン右腕のMarcas Stromanとヤンキース双方が真剣に話し合いを進めているとのブレイキングニュースでありました。ちなみにBobはこの前日、USA TODAYで「Stroman側がヤンキースに契約を打診したが拒否された」と報じていたため、同じ人物から180°異なる内容が流れてきて混乱したのは言うまでもありません。
そして本日、フロリダ州タンパにてCashmanとStromanによる対面での交渉が行われ、冒頭の2年総額37M(年17.5M)+ベスティングオプションの契約がまとまりました。これにより当初検討されていたSnellやMontgomeryより単年ベースでも遥かに安く、年数の短い投手でローテーションを補完することに成功。「ここからSnell獲り!」といった声はファンベースから漏れ出ているものの、Bobによれば先述のSnellに対するオファーの溝を埋める気はNYYサイドには見られないとのこと。
個人的に、ニューヨーク州ロングアイランド出身の彼にとって西海岸・中西部に行くビジョンよりも、慣れ親しんだ東海岸もといNYへの回帰を優先した恰好でしょうか。もちろんあれだけSNSでバチクソやり合ったNYMに戻る選択肢は無かったのでしょうけど、いうてNYYも彼の口撃でこき下ろされた被害者ではあります。
②新戦力Stromanのプロファイル
ニューヨーク州ロングアイランドのメドフォード出身であるStromanですが、低身長ながら類い稀な才覚を発揮し、高校時代から名の知れた投手となります。2009年ドラフトにおいてはナショナルズから18巡指名を受けたものの、ノースカロライナの超名門Duke大学へ進学。2年間で220イニングを投じて290奪三振を記録するなど、歴史的な快投を見せたことで、2012年ドラフト1巡目全体22位指名を受けてブルージェイズへ入団。ドラフトイヤーの2012年に早くも2Aで結果を残し、各種媒体においてもTop100プロスペクトに上り詰めました。
彼のキャリアにおいて常に付きまとったのは僅か170cmという身長に対する懸念でしょうか。ただ、ご存知の通りStromanはドラフト僅か2年足らずでMLBの舞台へ上り詰め、1年目にして130.2回 ERA3.65 111奪三振と大車輪の活躍。翌2015年には春先に右膝前十字靱帯を損傷したものの、プレーオフにおいては伝説のALDS第5戦、Win or GoHomeのレンジャーズ戦で先発。6回2失点の好投で劇的な逆転勝利を呼び込みました。
この辺りから明確にチームを背負い始めたStromanは2017年に201.0回 ERA3.09の活躍でサイヤング投票8位につけるなど、名実ともにブルージェイズのエースへ上り詰めました。
全盛期に突入したStromanとは対称的に、年々成績が右肩下がりとなり、遂にはコンテンドから遠ざかった2018年頃には一挙にトレード候補として市場を賑わせたのは懐かしいですよね。かくいうヤンキースにとっても、田中・Happ・German・Sabathiaというコンテンダーには物足りなすぎるローテーションを形成していた2019年夏にStroman獲得へ動いています。しかしALEのライバルであったこともあり、当時22歳にして猛威を奮っていたGleyber Torresや、Stroman 2世(?)で当時傘下№1有望株Deive Garciaなどを対価として求められたために交渉が進まず。
結局、同じNYに本拠地をおくメッツが油揚げをさらう形でトレード移籍が成立し、Stromanにとって念願の故郷でプレーすることが叶った結果になりました。移籍後に登板した11試合で8勝3敗とチームに大貢献しますが、惜しくもワイルドカードに届かず。そしてウォークイヤーとなるはずであった2020年、新型コロナウイルスの影響によって短縮シーズンの実施が決定し、怪我を抱えていたStromanはプレーせず。オフにメッツが提示したQOを受託し、2021年オフを見据えた動きにシフト。ここでも一度も戦線離脱せずにERA3.02 rWAR3.4と活躍。充実のオフを迎えるはずでした。
しかし古巣メッツは淡々とScherzerらとの巨額契約をまとめあげ、市場は労使交渉のもつれによってロックアウトへの突入が濃厚に。何としてもロックアウト前に契約をまとめたかったStromanサイドの意向も反映されたのか、3年71Mの短期契約でカブス入りが決まりました。この入団前後にはStromanがメッツからオファーが来なかったことを発端にバチバチTwitter上で爆弾発言かましてましたよね。
カブスとの契約中は怪我による離脱によって規定投球回に到達できず、昨季に至ってはシーズン最初の16試合で98.2回 ERA2.28とハラートップ級の成績であったものの、6月25日の指の怪我以降は11試合で38.0回 ERA8.29と完全にスランプに突入。そんな中で迎えたオフ、1年21Mの契約を残していたStromanでしたが市場の高騰に懸けたのかオプトアウトを決断。今日成立したNYYとのDealを見れば分かるように、契約規模でいえば遥かにカブスに在籍していたほうが多くの報酬を得られた訳で、FA交渉が芳しくなかったのですかね。
オプトアウト以前よりAAVを格安にまとめたことで好感触なStromanとのDealであるものの、不安材料も少なくありません。Stromanと言えばマネーピッチのSinkerを軸としたゴロボーラーの印象が強いですが、先述の指の怪我以降はスピンレートやランチアングル等が目に見えて悪化。ここを改善しない限り、この契約は一気にチームの首を絞める真綿へと変貌する可能性も。
平均球速も2022年比で1-2mphほど低下しており、来季33歳を見据えれば年齢による劣化も考慮すべきでしょうか。低身長選手のエイジングカーブはそもそも先駆者が少ないために比較しようがありませんが…。
ただ個人的に、彼のハートフルな性格や度胸をクラブハウスに持ち込めた点は成績以上に注目すべき点であり、甘ったれたRodonのケツを蹴り上げて渇を入れてあげてほしいなと思います。
契約に関しても、ダウンイヤーであれば投球回操作で来年FAですし、当初ターゲットであったMontasですら16Mが必要であったことを考えればこれ以上何かを求めるのは流石に贅沢が過ぎるかなと感じます。そもそもSotoを獲得した時点でALL-IN体制なのにも関わらず、この程度の出費で済んだことは良かった気がしますね。
③Stroman加入後のローテーションとペイロール
実はSoto獲得後にコソコソと4A投手との契約に漕ぎ着けていたヤンキース。まずはHall of Famer級の悠久プロスペクトことEstevan Florialを放出し、ガーディアンズからCody Morrisを獲得。FAではCody PoteetとLuke Weaverを獲得し、先のSoto獲得において枯渇した投手デプスを埋めることに成功しています。MorrisやPoteetは未だにマイナーオプションが残っている潤滑性があり、バックエンド起用で置いておく分には👌。Weaverはクラブオプションもあり、万が一活躍した場合には来年も手数に含められる点でそこそこ良いなと思っています。
しかも、当初オプション切れであったYoendrys Gomezに4つ目のオプションが発現。Oswald Peraza同様、これは非常に柔軟性が出てきます。
これによって、ローテーションは以下の陣容に。
ここに後半戦にはWill WarrenやChase Hamptonらnon-40manの若手も手数に入ってきますし、強い弱いの観点を抜けば先発投手に困ることは無くなったと思います。GilやBeeterについても満を持して中継ぎに回せますね。
そしてPayrollについて。そもそもWeaverとStroman獲得によって40人ロスターは計42名となっており、Deal成立には2名の放出が必要不可欠。
DFA候補としては先発起用が無くなり、Victor Gonzalez獲得で左腕枠の蓋然性を失ったMatt Krook、Perazaの4つ目のオプションでなおさら不要となったJeter Downsとかですかね。トレード放出であれば完全にあぶれているEverson Pereiraを使って40人ロスター外のTop10プロスペクトを1-2枚連れてくる動きになるでしょうか。
ペイロール概算ではSoto獲得時のAAV合計287Mに本日確定したArb調整額を反映していきます。
まずはArb総額77.465M【Victor Gonzalez含む10名】+174.83M【JudgeらFA組総額】=252.3Mに到達。
更にPre-Arbの最低年俸概算4.62M、ベネフィット等21Mを加算。計277.92M。(Arbについては予想額であった74.4Mを3Mほど超過する結果になっています)
この総額にようやく【Stroman 18.5M】+【Weaver 2M】+【Poteet 0.75M】=21.25Mが加わり、贅沢税計算上におけるペイロール総額が計299.17Mとなりました。
Spotracの予想額においてもAAV総額299Mと表示されているのでこれでほぼ正解でしょうか。贅沢税も計算してみましょうか。
予想どおり、満漢のペイロール額になったわけですが、仮にSnellへ年30M規模の契約が成立していればもっとすごい状況だったんですよね。つまりHal Steinbrennerはそれくらいの出血を覚悟してるということなんでしょうか。打って変わって大盤振る舞いに切り替えてきたのは興味深いですね。
おまけ(Stromanちゃんのお言葉)
ぐうの音もでないので、2009年からGMやってるアイツは解雇されるべきだよな。
<以下参考>
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