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【MLB】NetFlix「The Saint of Second Chances」を見て欲しい

9月19日付けで大手動画配信サービスNetflixから「The Saint of Second Chances(邦題:セイント・オブ・セカンドチャンス: ベック家の流儀)」という長編ドキュメンタリーが公開されました。

NetFlix作品ページリンク

恥ずかしながら事前情報は全く知らなかったものの,予告に流れるムービーからして,野球にフォーカスした内容ということを察しました。そして邦題に含まれた「ベック家」の文字。”もしや…”と思い予告を見続けると,やはりBill Veeckと,その息子Mike Veeckが物語の中心にそえられていました。

Bill Veeckといえば1940年代後半から1970年代にかけて多くのMLB・MiLB球団のオーナーに就いていた人物。中でも1975年末にシカゴ・ホワイトソックスを買収した時代がもっとも輝いていた時代でしょうか。その独創的なアイディアによって産み出されたボールパークへの仕掛けは数知れず,本拠地Comiskey Parkではホームランの度,バックスクリーン裏で大きな花火が打ち上がりました。

そして同時期に息子Mikeも球団職員としてホワイトソックスに貢献。日夜,親子で観客を喜ばせられる構想を練っていました。しかしMikeが主導した1979年7月12日の「Disco Demolition Night」によって状況は一変します。

また,当アカウントで何度も取り上げている1976年の保留条項撤廃による年俸高騰は晩年のBill Veeckをひどく追い込んだようで,1981年には今なお帝政を保つJerry Reinsdorfに球団を明け渡すこととなっています。この辺のVeeckの焦燥感は「FAへの死闘―大リーガーたちの権利獲得闘争記(Marvin Miller著)」にも記載されています。
一方で,1969年の「カート・フラッド事件」においては経営者側として唯一「選手のキャリアを永久に拘束すべきでない」と選手権利を擁護していた聡明な人物。Millerも「持病もあり,晩年はFAに対する弱音が出てしまったのでは」と回想しています。

ドキュメンタリーの前半はBillがメインですが,後半は息子Mikeに関するお話し。以前紹介した「バタード・バスタード・ベースボール」のBing Russellのごとく,独立リーグ球団を盛り立てていく様には驚いてしまいます。
特に触れられているのがセントポール・セインツ(当時は独立球団)であり,一度はMLBの表舞台から消えたDarryl Strawberryや2004年BOS優勝の立役者Kevin Millarなども登場します。個人的には共同謀議の被害者としてお馴染みのJack Morrisが晩年にプレーしていたのが驚きでした。調べてみると,彼はミネソタ・セントポール出身だったのですね。

読了した感想としては「ボールパークの持つ力は偉大にして不変」ということでしょうか。なかなか言語化することは難しいですが,晴れた日に家族と愛犬を連れて,球場でビールを飲みながらワンプレーに熱狂する。サッカーやバスケットボールが如何に人気であろうとも,この点を凌ぐことはできないのだと痛感しました。もちろん,Rob Manfredコミッショナーが推し進める試合時間短縮案も大切ではありますが,ボールパークに人々が求めているものを決して忘れてはいけないなと思う今日この頃です。

ぜひ皆さんもお時間があればご覧ください。Disco Demolition Nightの映像資料なんて相当貴重かもしれません。フィールド上でダイナマイト爆破してますからね。球史でも数少ない没収試合を知る良いきっかけになりました。

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