福富ぶぶ

詩を書いたりしています。短歌っぽいものもたまに。好きな言葉は「既得権益」 好きな方向は…

福富ぶぶ

詩を書いたりしています。短歌っぽいものもたまに。好きな言葉は「既得権益」 好きな方向は「明後日」

最近の記事

【詩】ティラミス人間

僕の将来の夢はティラミス人間です だから、まず僕は甘いスポンジになって誰かの苦いコーヒーを染み込ませてあげます 一緒にマスカルポーネの甘いクリームに覆われて、ティラミスになろうと思います また誰かの苦いコーヒーと出会った時には、「一緒にどうぞ」って飲み込まれてあげたいです あれ? 僕にはすでにコーヒーが染み込んでしまっているのに、今度は別のコーヒーと一緒に飲み込まれてしまうんでしょうか? 苦痛と苦痛の間に宿る幸せに僕はなりたいんでしょうか? それは本当に幸せなんでしょう

    • 【詩】パラレルグリーン

      暖かな貴方の腕に抱かれた時 それは全く正しいと思った 善悪などではなく ただ 正しい そう思った 深い青と 周りを巡る無数の階段と その狭間に少しの休む場所があり 柔らかな灯りがある 全く 正しい レモングラスと石鹸の匂い もしこの世界が揺らぐとしたら 色が違った時だろうか 例えば私が青だと思っているこの色が みんなも青だと言っているこの色が 本当はみんなの目に色としては緑に映っていて 名前だけが共通の 青 なんだとしたら そう 信号機のように  私の正しさは揺らがないだろう

      • 【詩】第二次イヤイヤ期

        嫌な人が 嫌なことを言って 嫌なことをしてくるの どうしてかな 嫌な人を 嫌だと 思ってるのは 私で 嫌な人は 貴方にとっては 嫌な人では ないのかも 嫌な人を 嫌な人にしてる 私を 私は 嫌になって

        • 【エッセイ】言い訳のコーヒーゼリー

          一仕事を終えて 近くの喫茶店へ行った。 ご褒美にとコーヒーゼリーを頼んだ。 上にホイップクリームとバニラアイスがのっているわくわくするやつ。 銀色のお盆の上にのせて運ばれてきた。 誇らしげなコーヒーゼリー。 さっそくひとくち。 その甘くて白いものたちを口に運んだ時に 「あぁ、幸せだな」と思った。 夢中になって甘くて白いところばかり食べた。 大変な仕事をこなしたのだから、許されるのだとなんだか喜びを感じた。 その直後、私は苦行があってはじめて幸福を感じるような人間なのか

        【詩】ティラミス人間

          【詩】眼鏡拭きと祈り

          眼鏡拭きは 私の世界の汚れを取り除いてくれる 拭き取るその仕草は 祈りに似ている 世界を正しく見つめるための準備 だけど 眼鏡拭きについた汚れは いつ誰が取り除くのか 汚れているかどうか どう判別したら良いのか 私の世界の汚れを取り除くために 汚されてしまった祈りは

          【詩】眼鏡拭きと祈り

          【詩】贅沢な赤子

          やっと抱かれたのに 望んでいた暖かさと優しさの その腕の中でまどろめば なぜだか途端に恐ろしく 早く不幸を不安を与えてと 泣き喚いて 歪んだ現実に己を引き戻す 本当に与えられたら 今度こそ死んでしまうくせに その足で躓けるのに その口で噛めるのに その目で怯えられるのに その耳で真実を聞けるのに その手で首を掴めるのに その頭で考えつかれて眠れるのに その心で     のに さぁ教えてください 贅沢な赤子

          【詩】贅沢な赤子

          【詩】懺悔モラトリアム

          共感は可能。感覚は白紙。真意は統制。愛着は形骸。接触は過多。過去は購入。未来を多飲。現在は焦土。一般の真理。恒星は正解。衛星は壊滅。貴方の選別。他人の水辺。 白桃の後悔。 葡萄の憤怒。 野苺の悲哀。 自販機の嘔吐。 風見鶏の溜息。 信号機の視線。 今日も駄目な日。

          【詩】懺悔モラトリアム

          【詩】ファンシー暴力団

          私は私の肘を叩きながら貴方を威嚇します なぜなら 貴方が真っ赤な苺のショートケーキの側面に 指の跡をつけてしまったからです 私は私の顎を叩きながら貴方を威嚇します なぜなら 貴方が水色のジェリービーンズの 数と向きを間違っていたからです 私は遂に貴方を叩きました なぜなら 貴方が悪いからです 私は叩きたくはないのです 貴方が私に叩かせたのです おまけに このようなことを私にさせて さらに私の心を傷つけました そのうえ このようなことを私にさせて さらに私の心を傷つけま

          【詩】ファンシー暴力団

          【詩】ゴブレット心中

          フランス製のガラスのゴブレットが欲しかった 綺麗なレリーフ模様が刻まれていた それで冷たい水を一口飲んで そうしてから死にたかった 重くて持てなかったかもしれないな でも 落として割ったら ゴブレットと一緒に死ねたかな 綺麗なゴブレットと一緒に死ねたかな

          【詩】ゴブレット心中

          【詩】超新星になりたかった。

          超新星になりたかった。 そうでないことは知っていた。 そうならないことも分かっていた。 それでもそうであったらいいなと願っていた。 頭の中の星を数えていたって、何も手には入らない。 爆発しないといけないみたい。 これまでの自分を無かったことにしなきゃいけないみたい。 今まで紡いできた星座は全部無くなってしまうね。 その美しさも寂しさもわかっているけれど。 望遠鏡は手放せない。 私が超新星になるのを見つけたいの。

          【詩】超新星になりたかった。

          【詩】仕立て屋マルール

          こんにちは いらっしゃいませ 本日はどうされますか えぇ、えぇ いつもように お仕立てですね …本当は違うものが良い? またまたご冗談を! いつも出来上がったものを 幸せそうにお召しになってるじゃありませんか そうそう このあいだはご友人やご家族にも差し上げたとか どうでしたか? そうですか! そんなにお似合いで よほど嬉しかったでしょうね 特にあの方にはいつも着させていましたものね え? 勝手に着ていた? 着させた覚えはない? あぁ… そうなんですか… でも、それ

          【詩】仕立て屋マルール

          【詩】一粒

          そこに一粒があった 私の知らない一粒であった その一粒はすぐに消された 私のせいだという 私が罪悪感を抱くべきだという 知らない罪の喚きが恐ろしくて 夜は暗く長く落ちていくから 一生懸命眠った 何度目覚めてもまた眠った そのうちその一粒が 私の手の中に落ちてきて 芽を出したから 夢の中に植えた また出会えるように 夢の中に植えた また眠った時に 会いましょう その時は共に 目覚めましょう 私は朝が好きだから 明るさと暖かさを たくさんたくさん 吸い込みましょう あたなと

          【詩】一粒

          【エッセイ】おせち

           新年早々、しかもまたまたマイナス発言始まりになってしまうが、子どもの頃おせちが嫌いだった。  豆とか煮物とか小魚とか、子ども心がそそられないメニューであったというのもあったけれど、母の「期日までにきちんと作らなければ」「幸せになるために食べなければ」という圧が怖かった。  だから私にとっておせちはその年最初の試練・課題であった。  親元を離れて、人にご飯をつくるようになってしばらく経った頃、テレビでおせちをみて驚いた。 「こんなにきれいだったのか」と。  義務感から解き放

          【エッセイ】おせち

          【エッセイ】結婚式はしたくない

          28歳、結婚した。 報告すると周りからは当然「式は?」と聞かれる。 うやむやな返事をしてやり過ごしていたけど、はっきりわかった。 1mmも結婚式をしたいと思えてない。 20代前半の時は結婚をしたら、もちろん結婚式をするし、それは幸せで楽しいことに違いないと思っていた。 お色直しは何回したいだとか、どこのブランドの何色のドレスを着たいだとかも考えていた。 相手とも大学で出会って、恋愛して、結婚して。 普通にハッピーな結婚なのに。 金銭的にさほど困難があるわけでもないのに。

          【エッセイ】結婚式はしたくない