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アドベンチャー・イン・南方熊楠記念館

旅行で和歌山アドベンチャーワールドへ。

私は2回目のアドベンチャーワールドだったが、前日は別の場所を観光し、翌日の朝からアドベンチャーワールド入り。無論、子供メインだが、その中でも私メインのイベントを一つ、ということで、宿泊したホテルから僅か5km弱の距離にある南方熊楠記念館にようやく足を運べた次第。

和歌山といえば、まぁ、紀州のドンファンであり、中上健次である。
中上健次は私も結構好きだが、最近はよほどの文学好きじゃないと読んでいない。いや、そんなことはない、中上健次は読まれている!という人、それは貴方がよほどの文学好きなのだ。普通ではないのである。普通は中上健次とすれ違うこともないのだ。

さて、朝一である。なにせ、アドベンチャーワールドが控えているわけで、私は爆速で車を飛ばし(まぁ、誇張だよ。ちゃんと交通ルールは守っている!)、
オープンと同時に熊楠記念館へと入る。
これは完全なる単独行の記録であり、記憶である。

南方熊楠といえば、まぁ天才であり、私の中では稲垣足穂と並び立つ巨星であり、稲垣足穂もまた、熊楠翁には一目置いていたわけで、二人は少年愛の人でもある(無論、精神的な)。
熊楠といえば、岩田準一との少年愛にまつわる書簡が有名だが、きちんとその辺りをフィーチャーする人もいれば、触れたくなさそうな研究者もいる(これは三島もおんなじだネ。三島の論考で同性愛に触れていないものは価値がないと思う)。
で、稲垣足穂、南方熊楠、フレデリック・ロルフ(今noteで長編小説を翻訳しているので、暇だったら読んでね!)で夏の少年愛大三角形ができるので、こうして考えると、すべての藝術は少年=童話、というのは真理であり、そうして両性具有的ともいえる美少年めいた美少女こそが、本当の藝術に至る特異点であり、詩と童話を内包したものなのである。

などと考えながら、爽やかな秋晴れの下、熊楠記念館へと向かう。

段々と海に近づいていき、あ、ウェミダー的なオイヨイヨ語を放っていると真っ青な案内板が。ステアリングを切る!

さすが和歌山、リゾート地である。南国の木々が生い茂り(いや、まぁ実際には南国の植物かは知らないが)、一人車を駐車場に止めると、頂きの上にある彼の地へと向かう。私は、人がいっぱいいる空間が嫌いなので、こういう場所は静かだと嬉しいのだが、案の定、誰もいない。

そうして、強烈な勾配を有する坂道を上がる。なんだこれ、ハァハァ、聞いてないよ……と、『彼岸島』ばりにハァハァ言いながら坂を上がりながらも、秋の朝なので風は爽やか。坂を抜けるといよいよである。あ、階段だ!

木の感じがいいだろう?まるで沖縄みたいでね。

そして、ついに記念館がその全容を現した!なんとも、フランク・ロイド・ライト的ではあるまいか。

なんともフランク・ロイド・ライト感のある、美しい建物。ニューヨークのグッゲンハイム美術館を思い出す。こういうクリーム色の建物大好き。

さて、南方熊楠、といえば、何をしたのかよくわからないがやたら評価されている人、という印象が多いかもしれない。
私は彼に関してはその少年愛関係、書簡文学、の研究に関して興味があり、全ては網羅していない。なにせ、粘菌に関してのことも興味のあることもあれば、ないことも多いからだ。
世間的にはやはり粘菌に関しての第一人者で、『らんまん』の牧野富太郎(この人もクズだった)との関係性でも最近語られるが、二人は会ったことはない。
熊楠といえば抜書で、様々な書物、図鑑などを、西洋のものから東洋のものまで、模写しまくっていて、それは記憶を頼りにしていたりして、その凄まじいまでの筆致と隙間なく、びっしりと書き込んだ紙面に、その特徴が出ていて、稲垣足穂をして、アッシリアの象形文字だと言っていた。
タルホは熊楠の書簡を熊楠と文通していた少年に見せてもらったことがあり、その書簡を元に、大菩薩峠の1エピソードが書かれたという。

そして、熊楠はイギリス・アメリカ留学から、海外で雑誌ネイチャーに論文を発表しまくるなど、事実凄まじい偉業が多く、彼は後年愛息のことで非常な心痛と苦労を抱えるが、それまでは豪快かつ貧乏をなんともせず、天才の俺のために他人が金を出すのは当たり前だ、というタルホ的、或いはロルフ的思考の持ち主であり、私もそう有りたいものであるが、まぁ、私は御三方を仰ぎ見るばかり。

館内に入ると静謐な空気が。私が早く来すぎたせいで、キュレーターの方が急いで音楽をかけてくれた。やはり私一人。最高だ。
1Fには売店があり、Tシャツには心揺れたが、お金がないから買うわけにはいかない。ガッデム!ブルシット!マザファッカ!

2Fに上がると、まるで『ブレードランナー2049』的な、なんとも言えない空間が。美しい、美しすぎるよ熊楠。あんた、こんないいとこに記念館があるなんて、幸せすぎるぜ?

この美しい並びよ。おや、奥からなにか声が聴こえるぞ……。そしてこの壁にしれっと飾られているのが……。
で、でたー!熊楠の『履歴書』(複製)だー!長すぎるだろ……やはり、タルホの言う通り、藝術とは、本当の藝術とは自叙伝なのだな……。何が書いてあるのか全然読めん……。
きれいだなー。こんなオシャンティカフェあるよね。

で、2Fには常設展示があるのだが、その前に、逆方向から聞こえてくる謎の声、もしや熊楠……?と思いつつ、いそいそと近づくと、文学館や記念館あるあるの、誰も聞いていないのに流れているDVDコーナーが!声の主は、荒俣宏だった。DVDで、いつもの荒俣スマイルを浮かべて何やら解説をしている。

熊楠文庫なるコーナーが。週刊少年ジャンプもあるね。これは、昔熊楠の漫画が連載されていたからなんだね。

声の主、荒俣宏といえば、私は荒俣宏が熱く語っていたハドリアヌスダケに関して、自ら幻想随筆を書いたので、足を向けて寝られない人物(なんのこっちゃ)。

で、2Fの常設展示は撮影禁止なので、ここには記載できないだが、鼻血が出るほどの充実ぶり。大量の資料や、昭和天皇への御進講の際に粘菌を入れたミルクキャラメルの箱や、書簡、さらには本物のハドリアヌスダケ!わー、本当におちんちんみたいだなー。
情報量が多すぎて頭の整理が追いつかないが、更に、ここに素晴らしい展示品が。これはパラパラ捲って私も美しいなぁと思って感動した本で、これはネット通販で買えたので即ポチ。漫画である。やはり藝術は繋がっている。

さて、充実の展示を見た後、私はいそいそと屋上の展望台へと向かう。

わー!ウェミダー!(2回目)。美しい自然。人もいない、最高!
水平線が見える。私は高所恐怖症だが、ここは美しい場所だ。
粘菌を模した方位磁石が。ここから星を見ればきっとなんでも見えるだろう。森(熊楠)も、海(ロルフ)も、星(タルホ)も、アドベンチャーには方位磁石が欠かせない。美少年座も美少女座も、これを使って春夏秋冬の夜空に探してみよう。

と、興奮冷めやらぬまま、私は彼の地を後にした。館内から出ると、爽やかな秋風が拭き、ちょうど、後から1組、ご年配の方が階段を上がりやってきた。え、あんなに大変な坂道を……笑顔で……。

まぁ、熊楠に関しては本が大量に出ているので、それを読めばいいと思うが、わかりやすく面白いのはやっぱり水木しげるの『猫楠 南方熊楠の生涯』がいいと思う。

芸者がかわいいんだよね。なんか女性がつげ義春が描いていたんだって?


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