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顧みられない人

画家のフィンセント・ファン・ゴッホを題材とした、2018年の映画、『永遠の門 ゴッホの見た未来』を観た。Netflixである。
最近は『ヤクザと家族』と『BLUE』も観た。どちらも邦画で、どちらも良かった。

ゴッホに関しては、ウィレム・デフォーが演じるゴッホ、それからオスカー・アイザック演じるポール・ゴーギャンがメインとして登場する。
マッツ・ミケルセンもちょい役で登場していた。ミケルセンは『ファンタスティック・ビースト』シリーズのグリンデルバルドをジョニデに変わって演じる予定である。

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この映画には評論がたくさんあるし、撮影技法も独特で美しいが、私には、やはり、顧みられない人としてのゴッホの人生が胸に染みたのでそれを書く。

ゴッホは37歳で死んだが、生前に売れた絵は1枚だとか2枚だとか、そういう伝説に彩られた人である。実際には、もう少し売れているらしいし、評価もあったそうだ。

デフォーはこの映画の撮影当時で62歳か63歳くらいだと思うので、ゴッホのお父さんくらいのわけだが、なんというかとても似ている。ゴッホは心を病んでいたし、若いとはいえ(当時の37歳であるのならば、今よりも老成しているだろうけれども)、顔つきまでもが、疲れ切っていて、デフォーは現実のゴッホのように思える。

今作で、ゴッホが描いていると、それを見ていたゴーギャンが、「いや、お前さ、塗りが早すぎじゃね。もうちょっと落ち着いてゆっくり描けよ。」
と言うと、「天才は筆の運びが早いんだよ!これが僕の好きな天才たちの描き方だ。」と反論する。
ゴッホは自分を曲げない。

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ゴッホの絵は今では数億円から数十億の値がついていて、世界の宝になっているわけだが、価格というのは恐ろしいなと思う。

汎ゆる芸術は公認された瞬間に芸術ではなくなると、私はそう教えられた。

ゴッホは、誰にも顧みられずに描いていたから、芸術家だったのだろう。
受難が芸術を産み出し、聖なるものを生み出す。
公認とは、衆目の知るところのゴールであるから、そこから先には堕落しかない。無論、ゴッホも売れたいし、認められたいわけだが。

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数億円、数十億円の値がつくからゴッホは偉大なのか、
誰にも顧みられないときから、ゴッホは偉大だったのか。

この映画で一番美しいシーンは、弟のテオが病床の兄を抱きしめ、頭を撫でてやるシーンではあるまいか。優しく、神聖なシーンである。

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この映画には、色彩が溢れていて、それは意識してのことだとは思うが、美しい風景が収められている。

他に印象に残ったのは、なんかよくわからんサウナみたいな施設で出会った元軍人の言葉である。首にまでびっしりと刺青を施した男は碧い眼で、「画家は異常者か?将校は全員異常者だ。俺は知っている。あいつらは全員が拷問し、手足を切り落として、殺したことがある。」とかガン決まりの眼で囁いていて、そのシーンが非常に印象に残った。

人の上に立ちたがる人間、人を操りたがる人間、それらはすべて異常者、これには同感である。そして、そのような異常者たちが、金を持ち、ゴッホの絵を買っている。

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