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刑事ジョン・ブックは目撃者ではない

ハリソン・フォードは偉大な俳優である。

スター・ウォーズのハン・ソロであり、
インディ・ジョーンズのインディ・ジョーンズであり、
ブレード・ランナーのリック・デッカードである。

このような俳優は他には見当たらないくらい、文化レベルの映画のアイコンとして君臨している。
そして、どの作品も続編が発表されて、名作、傑作ぞろいなのが恐ろしい。
(無論、私は『ブレードランナー2049』!))

衣装代安すぎだろ……。制作費160億円もかかってTシャツ?!前作ではオシャレなネクタイしてたじゃない。

御年80歳で骨折をしながらも、今年6月公開の『インディ・ジョーンズ/運命のダイヤル』に主演している。

2008年に、4作目『クリスタル・スカルの王国』が公開された時、いやいや、65歳とか年取りすぎだろう…と話題になっていて、そのときはシャイア・ラブーフが後継者的になっていたが、なかったこととなり(シャイア・ラブーフは独自路線を進んでいるため、40代前半〜後半くらいですごいブレイクをしそうだ、知らんけど!)、むしろ、65歳が若すぎるくらいに、今回のインディは最早長老レベルである。

監督はジェームズ・マンゴールド、手堅い仕事で、良作になる予感がする。

さて、この偉大な俳優の名画といえば、私は『刑事ジョン・ブック/目撃者』を推す。

私はこの名画を、2011年の3月10日に、TOHOシネマズ梅田で鑑賞した。
午前10時の映画祭の1本に選出されていて、遅ればせながら観たのである。

『刑事ジョン・ブック/目撃者』は、ピーター・ウィアーの作品で、
ピーター・ウィアーといえば、オーストラリアの監督であり、『ピクニックatハンギング・ロック』や、『マスター・アンド・コマンダー』などがある。

私は『ピクニックatハンギング・ロック』はソフトで観たくちだが、これは実在にあったという設定の神隠し映画で、ピクニックに出かけた女子生徒と引率の教師がまるまる行方不明になるという、オカルト漂流教室のような話で、後半はオーストラリアの山でピクニックをするほのぼの映画なのだが、色彩が美しい。絵画のように綺麗で、然し、みんなヒラヒラの制服を着ていて、こんな服装でピクニック行く!?的な感じであり、妙な感触を受けた。

岩とか木とかあるからね、こんなヒラヒラで行かねーだろって思ったり。
でも衣装も女の子たちもかわいいんだよね。

私は神隠し、というのが嫌いで、ああいう、得体のしれない恐怖を感じる
失踪系の話がとても嫌いである。例えば、初詣で傘だけ…、いや、なんでもない。怖くなってきた。
余談なのだが、私は未解決事件や猟奇殺人事件を調べるのが好きで、調べては恐怖に慄き、夜は厠に行くのもイヤ!ってくらい怖くなりながら、蒲団の中、スマホでまた調べるのである。
特に…いや、やめておこう。書くだけで私は震えて眠るハメになる。

で、『刑事ジョンブック/目撃者』は、殺人現場を目撃したアーミッシュの少年と、その未亡人の母親を守る刑事ジョン・ブックの物語なのだが、この映画は私がTHE・映画、と思うような格調、脚本の良さ、エモーショナルの高鳴り、映像美、美しい音楽、という、全て抽象的で申し訳ないのだが、とにかくあまりにも映画的で、舞台は中盤から親子の住むアーミッシュの村へと映るが、ここの生活感や色彩、人々とのふれあいが良い。

アラゴルンも出てるんだ。帽子とサスペンダーが可愛いね。

ジョン・ブックと未亡人のレイチェルとの、恋心の高まりのシーン、抱き合うシーンも大変に美しくて、劇伴も相まってエモーショナルである。

んー!ぶちゅー!って、いやねぇ。

そして、最後の殺人犯グループが暗殺に来るのだが、このシーンのわるどもの登場シーンの演出には痺れる。抑制の効いた演出で、殺しを覚悟した男の目がそこにある。
異文化と異文化の衝突、交流を描いた映画で、その中心に少年がいるのもポイント。少年はお父さんを亡くしている。ジョン・ブックは、少年のお父さんとしてひととき寄り添うのだ。

お父さんとして寄り添う、的な。女とのキスシーンなんかより、よっぽど美しいシーンだよ。

私はこの映画が大好きで、然し、見返していない。
前述したとおり、この映画を観た日の翌日に、東日本大震災があって、世界が変わってしまったのだ。
この映画を観た夜は、いい夜だと思えたものだが、翌日はこの映画のことを忘れてしまった。

それは、私の個人的な思い出と結びついているだけで、この映画には本来何の関係もないものだ。
けれども、映画とは、観た時、観た人、観た場所は人により異なり、皆が貶すような映画でも、誰かにはかけがえのない作品であったりする。

この映画も人によってはつまらないかもしれないが、やはり私は大好きな映画である。

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