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始まりました、2024年前期NHK朝ドラ『虎に翼』!

伊藤沙莉さん主演の朝ドラがいよいよ始まった。幼少期はなく、初回から伊藤さんが主人公の寅子(ともこ)を演じている。

女は結婚して家に入るのが一番の幸せ。学問はそのためのものという母・はるの考えや、法的に女性は「無能力者」とされている点に、「はて?」「はて?」を連発する寅子。突っ走っていくのではなく、まず疑問を持つところから始まる。

一週めで印象的だったのは第4話、第5話。

兄・直道と親友・花江の結婚式では、寅子が「なんでみんなスンとしているんだ」「そもそも、なんでしたたかにならないといけないのか」と、込み上げてくる怒りを封じて余興に歌う。笑顔でいながら怒りの顔に変わっていく伊藤さんの表情に釘づけ。そして寅子の心の声を語る尾野さんのナレーションが、この表情とぴたりと一致しており、観ていた私の怒りも頂点に(笑)。今までに経験した、さまざまな「女だから」という理由で起きたことを思い出したのだ。

そうなんだよ、なんで女だからという理由で、職場の上司に毎日4階から1階まで煙草と牛乳を買いに行かされたり(某役所)、就職試験で「県外出身なら地元に帰ればいいじゃないですか。あ、彼氏がいてイチャイチャしたいからこっちに就職したいの?」(面接官全員男&爆笑※ちなみに某有名企業)と言われたりしなきゃならなかったんだろう、私。そこは「したたか」になって、うまくすり抜ければ良かったんだろうか。

花江の言うように、欲しいものを手に入れるためにしたたかになるのが悪いわけではない。ただ自分にはできなかった。32、3歳の頃、「この見合いを逃したら、もうなくなる! とにかく早く結婚して!」と、朝6時半に電話してきた母のことも思い出した。寅子の違和感には似たような感情があり、心を揺さぶられた。10代、20代の頃、彼女のように法律的にというわけではなく、現実的に、働く女性にとって結婚は負担になることが多過ぎて、とてもじゃないけど自分には無理と思っていたから。

第4話のラストには、予期せぬ穂高との再会によって、寅子の大学受験がはるの知るところとなる。はるの怒りは、自分の知らないところで話が進められ、自分が描く娘の幸せが壊されることに対してだと思っていた。ところが第5話を観て、それは私の勘違いだとわかった。

子どもの頃から勉強が好きだったはる。だが旅館の娘としての価値でしか扱われず、多くの可能性をあきらめてきた。娘が法律を学びたいと言い始めたことについて、もしかすると心のどこかで喜んだかもしれない。しかしこの時代、その道は茨の道。もし道が拓けなかったらどうなるのか。是が非でも受験を辞めさせて、見合いをさせようとした彼女が考えていたのは、ただただ娘の幸せ。娘に地獄を見させないために。

そんな説得にも寅子は応じなかった。彼女を突き動かしたのは、穂高が話を遮らずに最後まで聞いてくれたから。それでもきちんと母親から愛されていることを実感し、「ごめん」と「ありがとう」を言える寅子は、朝ドラの主人公にありがちな「とにかく頑固で、夢に向かってがむしゃらに突き進むタイプ」とは少々違うようだ。

はるは寅子を「甘やかされた女」扱いした桂場に啖呵を切り、呉服屋ではなく法律専門の書店へ行き、寅子に六法全書を買い与えた。母として娘を見守る覚悟ができたのと同時に、彼女に同志のような気持ちが湧いたのだろう。今回のことで、はるの葛藤と愛情を知った寅子。うれしさを噛みしめながら六法全書を見つめる彼女に待っているのは、地獄だろうか。


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