宝石(ガラス)の破片
人生の本質は
愛と裏切りと復讐だと教えてくれたのは
どこのどちら様だったか
あの夜
夏だというのに
魂が凍てつくように寒かった
あなたはさようならと
軽やかにささやくと
スカートの裾を翻して
闇のむこうに消えていった
わたしは立ち尽くしたまま
あなたの背中を見送るしかなかった
聴こえるのは風の音(ね)だけだった
闇のむこうで男の声と車のドアが閉まる音がして
タイヤの軋む音が遠ざかっていった
わたしの人生は
あの夜に凍りついてしまった
あの夜から
五十年もの歳月が流れたのに
わ