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呑んで呑まれて

深夜の街は、かつてないほどに静寂に包まれていた。

私はひとり、街灯の明かりに照らされた路地を歩いていた。

心臓の鼓動が響くほど混沌とした感情が胸を満たす。

(何かが違う)

そんな気持ちが私を包み込む。

そして、その違和感は徐々に私の全身を支配し始めた。

足元が不安定になり、周囲の景色はまるで水彩画のようにぼやけて見えた。

酔いは深まり、意識は曖昧な境地に沈んでいく。

喧騒から解き放たれた夜は、孤独と空虚さの暗い霧に包まれているようだ。

過去の出来事が頭をよぎり、未来への不安が心をゆがめた。

私は自分自身に問いかけた。

この孤独と空虚感は一体何なのだろう?

何かが欠落しているような気がした。

そして、その欠落感はますます大きくなり、私の心を苦しめた。

誰かが私の手を取って、この混沌から救い出してくれることを願う。

しかし、その願いは虚しく響き、私の心はますます深い闇に引き込まれていった。

ふと気がつくと、見慣れた天井が見えた。

一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。

そして……。

自宅のベットで寝ていたのだと気がつく。

軽く頭痛がする。

その痛みを頼りに、昨日のことを思い出す。

混沌とした闇が、胸いっぱいに広がる。

3杯目にハイボールを頼んだ。

それから、それから……それ……から……?

混沌とした闇は思ったより深く、そして前が見えなくなるほど濃い。

酔いとともに沈んだ闇は、目を凝らしても何も見えない。

今日は休みだ。

ただ、明日のことを思うと……。

混沌とした闇とともに消えてしまいたい。

そんな思いに駆られるのだった。

〈了〉

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