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パンデミック条約って何?

4月13日に池袋で大規模な「パンデミック条約反対デモ」が行われましたが、テレビでは報じていません。Xのトレンドには上がっていたので、「パンデミック条約って何?」と思った人も多いのではないでしょうか。これだけ大規模なデモなのに、テレビで報じないなんておかしいと思いませんか? 

デモのニュース

時事通信はデモについて短く報じていますが、新聞やテレビなど、大手メディアの記事は見当たりません。以下、時事通信の記事から引用です。


パンデミック条約反対でデモ―東京・池袋
2024年04月13日19時52分配信 JIJI.COM
 新型コロナウイルス感染症対応の教訓を踏まえて世界保健機関(WHO)が5月の総会での採択を目指す、権限強化などに向けた「パンデミック条約」に反対する市民のデモが13日、東京・池袋で行われた。スタート地点の東池袋中央公園は参加者で埋め尽くされ、沿道にも多くの支持者らが集まった。

 デモ行進は「パンデミック条約 IHR(国際保健規則)改定反対」の横断幕を先頭に、午後2時にスタート。「ワクチンが任意である日本の主権を無視して、接種を強要するWHOに強く抗議する」として、参加者は「健康を人質にしたWHOの横暴を許すな」「政府は条約の情報を国民に開示せよ」などとシュプレヒコールを上げ、駅周辺の通りを練り歩いた。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041300474&g=soc

デモの様子を見たり、Xのトレンドを見て、パンデミック条約について調べてみたけれど、結局よくわからないままという人もいるのではないでしょうか。開示されていないことも多く、簡潔に説明するのが難しいのですが、今回は、議論の進め方に関する問題点をまとめてみました。

これまでの関連記事は、下記にまとめてあります。


国民を無視して進められる議論


1.重要なことを国民に知らせずに決めている。

下記は、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部のホームページで公開されている記事からの引用です。「私」というのは、2023年7月までパンデミック条約政府間交渉会議(INB)で副議長を務めていた田口一穂氏のことですが、下記のページには、副議長の業務などについて詳しく書かれています。

パンデミック条約政府間交渉会議(INB)及び副議長の業務について

私は、2022年2月から、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書(パンデミック条約とも呼ばれます)の作成のための政府間交渉会議(INB: Intergovernmental Negotiating Body)の副議長を務めています。

https://www.geneve-mission.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shigoto_kazuho_taguchi_3.html

6.ビューローにおける議論
 ビューロー・メンバーは、加盟国に推薦され、地域による指名を経て、全加盟国の参加する全体会合において選任されますが、個人資格であり、特定の国や地域の立場を直接代表するものではありません。公平に、全加盟国のために役割を果たすことが求められます。

https://www.geneve-mission.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shigoto_kazuho_taguchi_3.html

※ビューローとは、2名の共同議長、4名の副議長(WHOの6つの地域から選出)。

「個人資格であり、国を直接代表するものではない」人たちが中心となって、国民の命や言論の自由に関する重要なことを話し合っているのです。

第6回会合では田口一穂氏の後任として、西太平洋地域のINB副議長に本清耕造大使 (在ジュネーブ日本政府代表部) が選出されています。選出といっても、国民が選んだわけではありません。

下記は、第7回会合の記事(WHOのサイト)から引用です。



The meeting was led by INB Co-Chairs Mr Roland Driece of the Netherlands and Ms Precious Matsoso of South Africa, and Vice-Chairs Ambassador Tovar da Silva Nunes of Brazil, Ambassador Amr Ramadan of Egypt, Ambassador Kozo Honsei of Japan, and Dr Viroj Tangcharoensathien of Thailand.

https://www.who.int/news/item/07-12-2023-governments-continue-discussions-on-pandemic-agreement-negotiating-text

国民が選んだわけでもないのに、本清耕造大使はこの会合を主導するメンバーの1人なのです。そしてこの会合には、国民の意思を確認する機会はありません。

2.パンデミックの定義さえも決まっていないのに、議論は非公開で進められ、決まってからしか公開されない。

下記は、2023年12月12日に開催された「第2回超党派WCH議員連盟(仮称)総会」での厚労省の回答です。

今回のコロナでは、確かにWHOの事務局長が「パンデミック」ということを言ったかと思うんですけれども、正式にWHOの中でパンデミックを宣言するような手続きというものはございません。同時に、パンデミックの定義というものも、今のところWHOの中で決定はしていません。なのでそれも踏まえて、パンデミックというものをどういった定義にするかということが今議論されているという認識です。

厚労省回答

2023年12月の時点でまだ定義さえも決まっていないのに、どうやって話し合いが進められてきたのでしょうか。定義が決まっていなければ、WHOの都合でパンデミックだと宣言される可能性があるのです。

詳細は、下記の記事で取り上げています。

ほとんどの疑問に対して、厚労省や外務省は下記のように答えるだけです。

現在交渉中でございますので、その内容について予断を持ってお答えすることは 差し控えさせていただきます。

交渉中だから答えられないと言っていますが、決まってから知らされるのでは遅すぎるのです。


上川外務大臣会見記録 より
(令和6年3月26日(火曜日)11時45分 於:本省会見室)

「パンデミック条約」についてですが、協議は、今、継続しているところでありまして、内容、また、文書の具体的な形式を含めて確定していないことから、我が国として締結するかを含めて、現時点で予断を持ってお答えすることは、なかなか困難です。仮に締結する場合には、その内容や文書の具体的な形式に照らして、適切に対応してまいる所存です。

外務大臣の答えも同じです。これで納得できますか?


3.条約なのか、条約でないのかも決まっていない。

条約に相当するものなら、国会で話し合う必要があります。ですから、条約か条約でないかも決まってからしか答えられない、というのはおかしいのです。

下記は、これに対する外務省の回答です。(46:08頃)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm43523128

パンデミック条約と国会 審議の関係ということでございますが、いわゆるパンデミック条約と現在便宜的に呼んでおりますものにつきましては、現在交渉参加国の間で協議が継続しておりまして、その内容や文章の具体的な形式 を含めて確定していないということです。我が国としましては、締結するかも含めて、現時点では予断を持ってお答えすることは 困難であるという状況でございます。いずれにせよ、仮に締結する場合にはその内容や文書の具体的な形式に照らしまして、適切に対応してまる所存でございます。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm43523128

外務大臣の答えとほぼ同じです。これ以外のことは、言ってはいけないことになっているのでしょう。


国会の承認を要する「条約」の範囲 より


国会の承認を要する「条約」の範囲 より


4.翻訳がおかしい。意図的に誤訳して、国民に正確な情報を伝えないようにしているのではないか。

例えば、条約の名称です。

外務省のサイトより
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ghp/page23_004456.html

原文

WHOCA+:WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response (PPR)

外務省の訳

パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)

これについては、「条約の名称も含めて議論しており、まだ定まっていないので仮称です」という回答でした。

詳細は、下記で取り上げています。

また、「surveillance」を日本語に訳さず「サーベイランス」と書いている点も問題視されています。通常は「監視」と訳すのに、なぜ訳していないのでしょうか。


今後のスケジュール

政府間交渉の成果物が提出される「第77回WHO総会」は、2024年5月27日~6月1日に開催されます。ですから、もう時間がないのです。

外務省
パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書 (いわゆる「パンデミック条約」)の交渉 

INB9結果概要 より

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100651658.pdf

IHRの改正も、同時に進行しています。

厚労省のサイトには「IHR第59条の改正に関する決定案が全会一致で採択された」と書かれていますが、議場はガラガラなのに、定足数を確認せずに承認されたことがわかる動画が公開されています。



第75回WHO総会委員会A(2022年5月27日開催)の様子


https://youtu.be/r5x0s-Ozb10?si=uwcFjOiL-snxf7tK


https://youtu.be/r5x0s-Ozb10?si=uwcFjOiL-snxf7tK

これについても、下記で取り上げています。


厚労省 
国際保健規則(IHR)(2005)の改正について より

https://www.mhlw.go.jp/content/10500000/001238494.pdf

国民に知らせないまま、すでにここまで進んでいるのです。そしてこれらの議論に、ステークホルダーとして製薬会社が関わっていることも問題視されています。

こんなにも国民を無視して進められているのに、なぜメディアは報じないのでしょうか。