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“一生もののスキル”を磨こう / 伊藤羊一 著『話す 聞く 考える』試し読み

・新社会人として仕事を始めるとき
・新しい会社に転職したとき
・別の部門に移動になったとき
・独立して起業したとき

どんな【場所】、どんな【時】でも役に立つ、最強のビジネススキルを今一度改めて学んでみませんか?

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働き方・ライフデザイン・リーダーシップ・マネジメント・コミュニケーション・話す力・聞く力・日々の業務・ロジカルシンキング・マインド・1on1のキーワードでポイントがよくわかる!
音声メディア・Voicyでよく聴かれた放送を基に、ビジネスに役立つベーシックスキルを紹介。周りの人を巻き込み、夢を実現させるノウハウ本!

この記事では2024年4月18日刊行の伊藤羊一 著『話す 聞く 考える』より「はじめに」全文と本文の一部分を公開いたします。

はじめに


僕は幼少の頃からずっと、「人の話が理解できないし、自分の頭で考えることができないし、言葉でしっかり表現できない」人間で、そのことにコンプレックスを強く感じていました。

話を聞いているうちに、その人が何を言っているのか大抵わからなくなっていたし、ニュースなどのテレビ番組を見ていても、どんどん理解できなくなっていました。だから、ちょっと難しい本なども、全然読めませんでした。

そして、仕事上で自分の考えを問われると、何を答えればいいのかわからず、どんどん混乱してしまって頭が真っ白になっていくのが常でした。仕事で人に何かを説明する時も、説明しながら自分でも何を言っているのかわからなくなり、しどろもどろになりながら、それでも何とか説明し終えると、相手から「君の言っていることは、申し訳ないが本当にわけがわからない」と言われたことも何回もありました。

仕事しながら少しずつ改善はしましたが、30代の半ばくらいまで、「俺はなんて頭が悪いんだ!」と思っていたし、考える力がないことが人にバレるのを恐れていました。

それが解決してきたのは、実はここ5年、10年なんです。いろいろ鍛えて、人の話を理解できるようになったし、「考えること」がどういうことかわかり、自分の頭でしっかりとものごとを考えられるようになりました。考えることができてからは、人にしっかりと伝えることもできるようになり、プレゼンテーションの指導などもするようになりました。

こんなことを言ってもなかなか信じてもらえないですが、事実です。中高一貫の進学校を卒業し、一浪はしましたが大学受験でうまくいったこともあり、「またまたぁ、そんなはずないでしょ」と言われますが、40歳くらいまでは、聞けない、考えられない、話せないの「三ない」状態だったんです。少なくとも、その部分に関するコンプレックスはひどいものでした。

2018年に『1分で話せ』(SBクリエイティブ)という本を出版し、60万部を超えるベストセラーになりましたが、あの本は、そんな「三ない」な僕が、考える力を身につけ、人に語れる(プレゼンテーションができる)ようになった過程を丁寧にまとめた本なのです。だから、わかりやすいし、実効性がある、ということなんです。

僕は「声で、未来を変える」というコーポレートメッセージを掲げる音声プラットフォーム“Voicy(ボイシ―)”のパーソナリティとして「明日からの元気の源になる話」という番組を3年以上やっています。

放送回数は1000回を超え、総再生回数は500万回。おかげさまで、たくさんの人に楽しんでいただいております。自分でも、面白い放送ができていると思います。そう思うのは、時々、ですが(笑)。

特にテーマは決めていないので、話題は様々です。その中で、自分が「三ない」状態から成長してきた「聞くスキル、考えるスキル、話すスキル」については、やっぱりいろんな角度でリスナーの皆さんに学んでほしいので、重要なポイントとか、スキルアップのコツとか、そしてそのスキルを活用してどうしているかについて、相当のボリュームを割いて話しています。

僕の放送は、さほどロジカルさを意識しているわけでもないし、ストーリーをしっかり考えて話しているわけではないので、「カッチリした内容」と言える感じではないのですが、それでもまとめて聞いてみると、軸はブレず、「こうすればいいのだ」ということが明確になっているように、我ながら感じていました。ですので、Voicyの内容をベースに本を出さないかとお誘いを受けた時には、喜んで!と即答しました。

本書は、数多ある僕の「スキル話」から「ここぞ!」という、〈これぞ自分のスキルそのものであり、その背景であり、鍛え方である〉放送を選りすぐって、文章にしています。ロジカルでもなく、ストーリーを明確にしないで徒然なるままに話してきたことだからこそ、僕がこれらのスキルをもがきながら鍛えてきたことを、実感をもって理解していただけることと存じます。

なお、目次を見ていただければわかりますが、純粋な「スキル」だけではなく、「マインド」などについてもしっかりと話しています。これは、スキルだけ鍛えても使えるようにならず、聞いて、考えて、話す上では、やっぱりマインドと、マインドから生まれる「軸」が、大事になるからです。

聞く、考える、話すというコミュニケーションの基礎エンジンの部分を鍛えたい方はぜひ、じっくりと読んでみてください。
そして、本書には、各放送へのリンクとなるQRコードがついていますので、ニュアンスも含め、深く感じたい、という項目については、ぜひ音声も聞いてみてください。

みなさまのスキルアップのお役に立てる本になれば幸いです。


学びを最大化する話の聞き方


2023年1月5日、6日と富山市の東岩瀬町に行きまして、富山一のイノベーターでいらっしゃる桝田酒造店の枡田隆一郎さんという方にお会いしました。本当に刺激的な大人だなという感じで、俺も頑張ろうって思えるような出会いだったんですけど、細かいところですごく共感する部分がありまして、今日は2つご紹介しようと思うんです。

桝田さんが街中で、写真を紙芝居みたいに見せながら、高校生から大人まで20人くらいにいろんな話をされたんです。その時、最初に「自分がこうやって説明している時に、何か反応いただくと、めっちゃこっちもテンション上がるんだ」とおっしゃってたんですよね。

何となく、人の話を黙って聞いたりするじゃないですか。何十人もいるから、自分の反応なんてあんまり関係ないだろうってことで、うなずきとかもしなかったりする人っているじゃないですか。だけど、反応があると話す側もテンション上がるんで、そうするといいよって。僕も説明する側だから、100%共感ですね。これが一つ。

ウェブ会議も、相手がうなずいてるとテンション上がるんですよ。すると結果として、喋ってる人のパフォーマンスが上がるんです。ウェブ会議で画面オフにするケースってあるじゃない。ウェビナーだったらいいんだけど、普通のZoomミーティングで、顔を出さない会社なりグループがあったりするんです。大学の授業でも、顔出さない人がいるんです。

みんなが顔を出して、うなずいたり、疑問に思ったらふんって首傾げたりして、ビビッドに反応する。そうすると、喋る方が「ここでうなずいてくれるな」とわかって、結果としてパフォーマンスが確実に上がります。

それからもう一つは、「歩きながら話す時に、説明する人のすぐ横にぴったりついて話を聞いてると、めっちゃいろいろな学びになるよ」ということをおっしゃっていた。これも100%共感です。

僕もそれを言われるまでもなく、説明者の桝田さんの横にピタッとついて話を聞きながらいろいろ質問したりしてたんですよね。やった方がいいに決まってる。そうすると人って成長するんだよね。

僕も説明しながら回る時に、全員になるべく話が伝わるようにするんだけれども、当然のことながら移動する時に横にいると話しやすいじゃない。そうすると、「実はね……」みたいな話をしやすいわけです。だからそういう人にはたくさん喋ることは当然あります。

それに付随して、桝田さんは「『本当に聞いていいかわからないんですけれども』とか『初歩的すぎるんですけど』って前置きをして聞く学生がいたんだけど、僕は皆さんに知識があると思っていないので、そういうことは全く気にしないでいいです」ということをおっしゃってた。

これもめちゃめちゃ共感です。説明する側は質問する人を馬鹿だなってそもそも思わないし、知らないから来てるわけで、どんな質問にだって答えるわけです。だから、そういった前置きは本当にいらんのだよね。

反応した方がいいよということ、歩きながら話を聞く時は横にぴったりついた方がいいよということ、それから聞いていいのかいけないのかわからないけどみたいな前置きはいらないということ、そんなことを桝田さんはおっしゃってて、本当にその通りだなと。僕もまさにそういうことを気にしていつも生きているなと思った次第です。

説明を聞くことも、コミュニケーションなんですよね。ウェブ会議で画面オフにして、コミュニケーションを捨てていいんでしたっけっていうのは強く言いたいんですよね。

参加者20人のうち2人がリアクションしてくれれば、話す方のテンションが上がる。でも他の人は無表情で聞いてる。そうすると無表情の人は、ちゃんと反応して話し手のテンションを上げた2人にタダ乗りしてるじゃない。それは、話す方もわかってるんだよね。この人はフリーライダーだな、みたいな。

そういう人に僕なんかは何かサービスしようって思わないんですよね。もちろん、何もいいなと思っていないのにうなずく「演技」をする必要はないけど、いろんな人の話って聞けば絶対面白いんです。だから、「へえ~」って好奇心を持って聞くとそういう反応になるよね。

その人に気に入られたいからっていうことではなくて、好奇心を持って聞けば、一言も聞き漏らさないようにしようとするじゃない。そうするとその人はスペシャルの質問ができる。そうするとインプットが他の人より大きくなるわけですよ。それってその人のためになるじゃない。だから、演技でということではなく、好奇心を持って話を聞いてると、絶対成長するよってことです。

それから、こんなこと聞いていいのかなと躊躇ちゅうちょして質問できないこと、昔の僕はそうだったんですけど、それをやってると結局、質問できないケースが増えちゃうんですよね。そうするとね、自分の学びってその分、得られないんですよ。だから、とにかく遠慮せずに思ったら聞くということをやる。馬鹿だと思われてもいいじゃん。馬鹿で~すって言えばいいので。

自分は以前、他の人から学ぶんだっていう好奇心を持って、その学びを最大化するためにめっちゃ反応してました。今でも人の話を聞く時、「おおおお!」とか「マジでマジで」とかって反応するわけですよ。あるいは、「っていうことは、こういうことですか?」みたいな質問ね。周りで見てても、僕のリアクションは多分一番と言えるぐらい多い。これが自分の成長っていうのを下支えしてきたっていうのはありますね。

好奇心がどんどん強くなるのは、やっぱり自分の成したいことがあるからですよね。やっぱり積み重ねで成長は変わってくることがありますので、好奇心を持って、全行動、そういう方向にしていくことがめちゃめちゃ大事だなと、桝田さんとお会いして感じました。


目次


ここまでお読みいただきありがとうございました!本書は全国の書店・ネット書店にてお取り扱いをしております。ぜひお手に取っていただけたら嬉しいです。



伊藤羊一 著
『話す 聞く 考える』

伊藤 羊一(いとう・よういち)
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長
Musashino Valley代表、LINEヤフーアカデミア学長、Voicyパーソナリティ
アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、LINEヤフーアカデミア学長として次世代リーダー開発を行う。
代表作『1分で話せ』(SBクリエイティブ)は60万部超のベストセラーに。その他、『1行書くだけ日記』(SBクリエイティブ)、『FREE, FLAT, FUN』(KADOKAWA)、『「僕たちのチーム」のつくりかた』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などの著書がある。

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