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読書感想文#3『堕落論』〜偉大な破壊が現代にもたらすことについての私論〜

私は坂口安吾が大好きです。坂口安吾がインド哲学を学んだことで、私は同じ道を歩もうと思いました。高校生の時に本著を読んだ時に衝撃を受けました。今でも読み返すほどに、人生に影響を与えられました。

戦後の日本がどのような状態だったのか、テレビとかで語られますが、以前のように数が少なくなっていると思います。
語り部の老齢化が原因のように思いますが、そのような場合に出版物で情報を得ることは大切なことのように思います。

偉大な破壊という言葉が作中によく出てきます。
ここでいう「偉大な破壊」というのは、原爆であり、空襲です。
アメリカの攻撃で東京は焼け野原、長崎広島も同様です。
そのような破壊行為を坂口安吾は愛していると言いました。運命に従順な人間の姿は美しいと。
この言葉で、仏教的な思考が垣間見えてきます。
この世のあらゆることは、川の流れのように移りゆく。祇園精舎の鐘の声は諸行無常の響きがある。
ロシアを打ち破った日本も、2,30年後には焼け野原になる。盛者必衰の理を表しています。

「義士も聖女も堕落する。堕落することでしか救われる便利な道はないのである。」
「若者は花と散ったが、生き残ったものは闇屋となり、未亡人は新たな面影を胸に宿す。」
不貞行為は戦争の後には咎められるか。
この言葉には空白を読まねばならないと思う。
「(戦争の前では)義士も聖女も堕落する。...」
死ぬことよりも不貞に染まっていきていく。
本質的な部分を偉大な破壊によって見つけられる。

昨今の偉大な破壊について、
働き方や表現方法、あらゆる現場で従来の方式では対処できないことが多々見られる。
偉大な破壊によって定められた運命に従順な人間の美しさ。スラップスティックな政治家、表現の自由はほとんど抑制される風潮など、閉じこもることに従順な人々に美しさを見出されるのか。

いつの時代になっても、坂口安吾の言葉には心を安定させる成分が含まれている。
いつの時代にも受けいられることであろうと思う。

それでは。

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