非婚化も少子化も、結局お金では。

 子育て当事者がこれを言うと「欲しがりか」等と言われそうですが、私は子なしなので、思っていることをつらつらと頭の中から出してみました。

 「産みたいのに産めない」人たちの背中を押すのは結局お金だよなと思います。
 性別による賃金格差がなくなって、全員がひとりでも家庭を養える状況になれば、女性は収入の高い男性を求める必要もなくなって婚活市場のアンマッチはぐっと減る。
 二馬力で稼がないと生きていけないとなったら仕事と家庭の両立なんてハードだし子どもなんて増やせないけど、一馬力でそこそこ稼げれば、二人でセーブ気味に仕事をして二人で家庭運営もできるし、ひとりで稼ぎひとりが家庭という役割分担もできる。単純に負担が減るし、子と過ごす時間も増やせる。

 「言って女性だけが妊娠出産を担うわけで、賃金格差なんてなくなるわけがない」というのは言い訳だと思っています。
 たとえば無痛分娩を一般化する+産後は男性が育児主体になる、という掛け合わせの場合、女性だって男性と同等の離脱期間でキャリアに戻るのも、やりたい人は不可能ではないと思います。
 逆に、母体がゆっくり休めるように男性が育休一年で家事育児主担当というパターンだって十分ありえます(なんなら出産前、身重クライマックスでしんどい時からすべての男性の時短勤務が認められてもいいんじゃないかと思っていますし、妊娠中女性がトラブルに見舞われたらその瞬間から時短勤務で母体最優先ができた方がいいとさえ思っています。そんな感じで、「いっしょに妊娠期から支えあう」が一切想定されたら、男性と女性のキャリアの分断って、結構あいまいになってくると思うのです)。
 でも、それを想定していない(あるいはそうなると困るから見ないふり)で、「女性はキャリアを長く離脱する」という前提で昇進にも差が出たり賃金格差があったりすると、「もともと収入の低い女性側が長くキャリアを中断した方が損失が少ない」と判断せざるをえないです。
 なので、この賃金格差は、「結果」の顔をしているけれど、実際は「原因」の側面だって十分にあると思っています。

 それぞれの家庭にあった選択肢を自由に選べるようになれば、女性は「自分で稼ぐ」を前提にパートナー選びができる。そのときの基準は、当然男性側の年収よりは家事育児の価値観になると思います。もちろん、自分が家庭にコミットしたい方は高収入男性を求めるかと思いますが、現状の、「ほぼすべての人が上方婚希望」からは大きく変わるでしょう。
 そうなると、男性も女性も、自分の稼ぐ力と家事育児への責任感、両方がシビアに明るみに出る(上に外見の比重も高まる)ので、楽をしたい人には風向きが悪くなるとは思います。「いい相手がいない」のではなく、自分の総合ステータス不足や釣り合わない相手ばかり狙っている戦略ミスが原因であることが、今よりもあぶりだされるので。
 それでも、このような状態になったら、「女性の上方婚が原因」と理由づけはする必要はなくなると見込まれます。

 そして、女性も男性と同じように稼げるようになれば、仕事と家庭運営の比率を各家庭の戦略で最適化できます。一番各々のスキルを活かせる比率で運営ができます。
 さらに、前述の「ひとりが働くだけでも家庭を運営できる状態」が果たされていれば、共働きではどう頑張っても家庭に1は割けなかったリソースを、1にすることもできるようになる。「しんどい」はすべての敵です。余力は大事です。

 日本の賃金はずっとマイナスを突っ走っているので賃金自体も上がらないといけないとは思うものの、少子化ストップに貢献している世帯に篤く恩恵を配分し「子育てボーナス」にするなら、まずなにより控除ですよね。そしたら、「子どもを持った方が得」になる。さらには、子どもひとりを扶養すること控除を十分大きくして、働きすぎなくても手取りは増えて、子どもが増えても賄える仕組みにする(これは、第二子以降はもっと増やす、みたいな階段でもいいかもですね。システム改修大変そうですが)。
 現在の、年少扶養控除がない状態など、トチ狂った少子化推進政策としか思えないです。

 今は、仕事に1.5人を割り当ててやっと家庭運営ができる収入が得られるだけで、0.5人で家庭を回しているような状況が大半かと勝手に思っています。そして、それで金銭的な生活がかつかつなら、それ以上を稼ぐために仕事に人ではもう割けないし、0.5のリソースでは家庭運営は限界ですよねきっと。わたしなら絶対に音を上げます。
 これが、適切な控除でひとりで一家庭を賄えるようになって、子が増えてもその分控除によって収入を増やさなくても育てられるとなれば、仕事に1、家庭に1というリソース配分を継続できる。

 もちろんこれは最低限の話で、これ以外にも高校までにかかる教育費・医療費等の無償化や、あらゆる子育て支援にある所得制限の撤廃、所得に応じた費用の段階的な負担増もなくさないと話にならない(特に障害児の所得による負担増は本当にひどい)。あと、ひとりでも子育てできるように、仕事も家庭もひとりで賄う場合には、仕事0.5のリソースでもなんとかなるような控除なり支援も必要だと思います。

 「控除で税収を減らして、さらにはあらゆる無償化なんて、財源がない、不可能だ」なんて、そんなこと言える段階にはないと思うんですよね。
 ただでさえクーポンやら給付やらでお友達へのお金の横流しが多いのでそれはやめてもらうとして。議員報酬にもメス入れてほしいですよね。少子化を何も改善できず、衰退一直線なのに、なんで世界トップ3の議員報酬なんですかね。

 子育て世帯への金銭的な締め付けは、本当に愚策だと思います。
 子ありも子なしも累進課税で徴収すれば、それで再分配は充分に果たせます。予算がなければ子育て世帯間で付け替えず全員で負担すればいい。
 たかだか1,000万円程度の年収で支援が打ち切られる実質的な「貧困支援」も、中抜きが容易な給付ベースの見せかけ支援もいい加減に辞め時でしょう。
 正直、すでに手遅れで、他国から移ってきていただかないと成り立たない状況ではあります。それでも今いる人たちの「産みたい」を尊重するのと、両輪で回していけばいいだけの話です。

 国民が、現状の国政の異常さに全員気づいてほしい。そして、どうか国民全員で「逃げ得」な為政者を駆逐してほしい。
 控除をベースにした当たり前の少子化対策に一刻も早く切り替えて、まともな国だと安心して子育てできる国になることを祈っています。

※なお、子を産み控えてしまう理由は当然お金だけではないです。子どもに不寛容な社会、子どもの権利が守られない、ジェンダー後進国まっしぐら、といった、「この国に子を産むのは不憫すぎる」的な側面もあると思います。こういったアプローチは、上の「産みたい人向けの施策」のあと、次の策として、すべての人がもっと生きやすくなるために取り掛かってほしいと思っていることを付記しておきます。

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