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今日からあなたも個人情報の露出狂になろう(2014年2月『Quick Japan』112号)

二〇一五年をめどに個人情報保護法が改正される予定らしい。すでに個人情報を本人の同意なく第三者に提供するためにはどんな例外措置が必要か、を議論する検討会がはじまっている。と書くと物騒だけど、現状は、そのまま情報を渡すのは当然アウトなので、個人を特定できないようにする加工が必要だね、でもその匿名化の方法が決まらないね、と困ってるところ。こういう話を聞くと「プライバシーが侵害される」と反対の声をあげたくなる人はいると思う。ただ、自分の情報が企業にどこまで知られているのか、考えたことはあるだろうか。

昨今は利便性と引き換えに自分に関する情報を企業に渡すのが流行だ。わかりやすいのはSuicaやPASMOといった交通系ICカード。あれを使うと乗車駅と降車駅の行動履歴が蓄積されていて、カード使用者の行動範囲がわかる。あのカードは買い物もできるけど、買った場所や時間だって蓄積されている。カードといえばTポイントカード。TSUTAYAで使えばレンタル履歴、コンビニで使えば会員番号、日時、金額、商品などの購買情報が運営会社に蓄積されて、提携グループ内で共有される。利用規約には履歴の保存期間は書いてない。ということは現状すべて保存されてると考えるべきだ。ということで、氏名・生年月日・性別と紐づけられた行動範囲と買物の履歴はICカード会社に把握されている。

次にグーグル。普段Gmailを使ってる人はだいたいログインしてると思うけど、検索ワードやどこにアクセスしたかの行動はすべて保存されている。またグーグルは「グーグル・アナリティクス」という無料アクセス解析ツールを提供してて、たくさんのウェブサイトで利用されている。だからたとえグーグルを使わなくても、いろんなサイトのアクセス解析を通してあなたの行動は記録されている。

フェイスブックもそうだ。ニュースサイトの記事に設置されてる「いいね!」ボタン。あのボタンを表示した時点で(あなたがフェイスブックを使っていなくても)どのサイトにいつアクセスしたかがフェイスブック側に記録される。ボタン設置型のサービスはだいたいそうだと思っていい。

スマートフォンのアプリで有名なLINE。自分の電話番号を登録すると、一緒に自分の電話帳が自動でLINEに吸い取られて友達リストが表示される。ユーザ数は国内だけで四五〇〇万人以上いるらしいけど、それだけの電話番号をもとにした交友関係がLINEの会社に把握されているわけだ。

他にも、位置情報を記録する写真サービス、地図サービスの現在地送信機能の履歴、打ち込んだテキストを裏で送信してる文字入力変換ソフトなどなどきりがない。今はバラバラに存在するこれらの情報を一ヶ所に集めたら、自分の普段の行動や思考回路が企業にバレバレになると思わないだろうか。そして丸裸にされたキミを狙って企業は「より最適な広告」をお届けするのだ!……「なんだか大したことなくない?」と思ったアナタ、今の時代を生き抜く才能がある。個人情報露出狂時代を楽しもう。

<!--以下2020年コメント-->

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2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定の定額マガジン(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。あとnoteの有料記事はここに登録すれば単体で買わなくても全部読めます(※登録月以降のことです!登録前のは読めない)。『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』も全部ある。

2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…

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