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一杯のコーヒーをのむ時間を

池波正太郎さんの「ル・パスタン」という本にこんなことが書いてあった。

人は、独りでコーヒー店に行き、一杯のコーヒーをのむ時間を一日のうちにもたねばならない。どうでもいいようなことだけどね

ちょうど最近、独りの時間が減っているなと思っていたところだった。

独りの時間をとらないと、自分が何を考えているのかどんどんわからなくなってしまうのだ。しまいには、「自分は何も考えていないんだ」と烙印を押してしまう。そうすると、考えること自体をやめてしまうのだ。

この負の連鎖を断ち切ろう と、この一説を読んだつぎの日に、喫茶店へ行ってみた。

紅茶とかためのプリンを注文。ためこんでいた日記を書き、池波さんのエッセイを読みふけった。ネットもテレビもない時代を生きてきた池波さんの語り口調は、スローで古き良き時代を思わせる。せわしない心が落ち着いて、どんどん心が浄化されていくようだった。

ピンときた言葉をメモしながら、その言葉のどこに魅力を感じたのか、どこに疑問をかんじたのか、何も考えずにメモをしていった。そうするうちに、知らない自分の考えや感情が、どんどん文字になって現れてきた。

自分の知らない感情は、探っていかないと、永遠に見つからないんだと感じた。そして、自分の知らない自分を知ることができるのは、とても幸福で、とても自由なんだなと感じた。


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