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今宵タイタニックが激アツすぎる

映画『タイタニック』。言わずと知れた世界で人気を誇る映画だ。弱冠小学生くらいだっただろうか。借りてきたたDVDを自宅のテレビで視聴したことがある。

沈むタイタニックとイケメンと美女。美女だけが助かる。あるいはタイタニック号の船の先で二人が両腕を広げて風を浴びるシーン。もうそれくらいしか覚えていない。あとは2人のラブシーンを家族で観て気まずくなってしまったことも覚えていた。ただ、残念ながら映画の内容という内容を殆ど忘れてしまった。

この映画の音楽だって、ホイットニー・ヒューストンの「エンダァー!」でおなじみの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」(I Will Always Love You)だと思っていたほどである。

このチャンスを逃しては、僕はタイタニックを知らない「無知な大人」になってしまうかもしれぬ。偶々、映画館にて再上映をしているということで、先日レイトショーで『タイタニック』を観に行って来た。


小学生のときには気づかなかった視点として見えてきたのは「階級社会」が如実に描かれていたことだ。ジャックとローズの服装の違いや客室の違い、食事やお酒まで全く異なる彼らの生活様式。まさに船上のロミオとジュリエット。

ただそれでも未だ小学生的な視点は健在で、タイタニック号が氷山に衝突する直前の見張り台にいる乗組員二人の姿に、「どうしてよそ見してるんだよ!」と頭に血が上ってしまった。「ラピュタ」のシータとパズーだって、見張り台でイチャつきながらも仕事を果たしていたというのに……

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改めて思うのはジャック(レオナルド=ディカプリオ)がイケメンすぎることである。そりゃあ、こんなイケメンなら自殺寸前の女の子の危機を救うことができるが、僕みたいなそこらへんの一般人が

「君が飛んだら、すぐに助けに飛び込むしかないな(You let go, and I’m going to have to jump in there after you.)」
ローズが船から飛び降りようとしているところにやって来たジャックのセリフ

なんて言ってみようものなら、「君が飛ん……」と、セリフを言い終わる前に飛び降りされてしまいそうだ。イケメンだからこそ助かる命というのもあるのかもしれない。所詮この世はルッキズムなのか!解せぬ!!!

タイタニック号が氷山に衝突してしまった後も、ジャックのイケメンっぷりには僕だってハート鷲掴みされたものである。

ただ、もしタイタニック号に乗船していたジャックが、「ジャック」違いである『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ船長だったら、ハラハラはしそうだが沈没しても大丈夫だろうなあ、と安心して観ていられる。

しかし、いかんせんジャックはジャックでも、頭に臙脂色のターバンは巻いていないし、同じハリウッドスターであってもこっちのジャックは売れない絵描きである。くそ!!!

海賊の方と比較すれば、当然だけど弱い方のジャック。彼が死んでしまうのはなんとなく知っていたが、いつどのシーンで亡くなるのかは覚えていない。僕は彼らの運命を固唾を飲んで見守っていた。

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沈没が始まり、彼がローズの婚約相手の手下に手錠をかけられ、あ、このまま手錠をつけたまま死んでしまうのか…とも思ったが、それだとあまりにも無慈悲すぎる。溺死とは後味が悪い。実際の事故では溺死した人々も多いだろうが、映画で溺死する人たちはピックアップして描かれていなかった。

ローズを緊急用のボートに乗せるジャックと性格の悪い婚約者のシーンもあった。沈みゆくタイタニック号で彼女の命運を見守るジャックとボートから涙ながらにジャックを見つめるローズ。救命用ボートが下へ下へと降ろされていく。

ああ、ここでお別れかぁーなんて思ったが彼女がボートを飛び降りジャックの元へ戻るシーンは「何やってんねん、馬鹿かよ!」と野次ってしまいそうになった。恋をすると人間のIQは低下するというものだが、このシーンはまさにその代表例ともいえるだろう。まあこのローズの行動を深く捉えれば、彼女がタイタニック号へ戻ったのは現状にある貴族社会からの脱却とも捉えられる。

すごく冷めた見方をすれば、出会って経ったの3日で一蓮托生になる判断ができるものなのか、と疑問に思ったが、これは「映画」。そんなことを気にしてはいけない。『テルマエロマエ』で阿部寛が風呂を通じてタイムスリップすることを疑問視しないように、『タイタニック』だって何かにつけて疑問視してはならないのだ。

※ここからは『タイタニック』のネタバレを含みます。

そしていよいよ、その時は来てしまう。
垂直に海へ吸い込まれるタイタニック号と2人。彼らはその渦に巻き込まれずには済んだものの、待っていたのは冷たい冷たい海水だった。色々と調べてみたが、当時の海水温は零下2度と言われている。一般的なプールの水温が22度なのだから、いかに海水温が低いことが分かる。

実際のタイタニック号沈没事故でも低体温症による死亡例が多かったようだ。この映画におけるジャックの死因も低体温症によるものだった。なんとも惨い。

ジャックが凍えながらローズへ声をかけるシーンがこの映画における一番の見所であろう。

「船のきっぷは、僕の人生にとって最高の送りものだった。君に会えたから(Winning that ticket, Rose……was the best thing that ever happened to me. It brought me to you.)」
死に際にどうしてかくも格好いいことが言えようか。

ジャックの顔は無論格好いいのに、こんなイケてることまで言う。ラオウ的に言うなら「一片の悔いなし!」である。自分でも、比較するのはどうかと思うが。

また、ジャックはローズへこんな言葉も残している。

「必ず生き延びると、約束してくれ(You must promise me that you’ll survive.)」
きゅん。

そのときの表情たるや。ブルブルと凍えながら、ローズへ愛の言葉をかけるジャック。自分の分まで生きていてほしいといった強い意志を感じる。

でもさ、やっぱり考えてみれば定員1名の木の板を見つけたのはジャックだ。あのときローズが救命ボートに乗っていたらジャックの命は助かってたかもしれない。恋ってほんまに盲目やな。若いって素敵やな。ええな、青春やな。うへへへへ……

そうは言うものの、映画館でこのシーンを涙なしには観られない。多くの人たちが鼻を啜り、涙を流していた。が、「冬の映画館暑すぎるやろ問題」発生である。

映画館が暑すぎて東南アジアみたいになっているものだから、凍死シーンに感情移入ができやしない。なんせ、こちとて暑さと戦ってるんや!全く命に別状ありませんが。

厚めのニットをまくって半袖にし、じわじわと出るケツ汗に不快感を覚えた。映画館にヒートテックと厚めのニットを着てきてはいけない。涙を拭う予定だったハンカチで汗を拭った。

ふと、僕が中学生の頃の夏、甲子園決勝を自宅のテレビで見た日の母の一言を思い出す。
「高校球児が炎天下の中頑張ってるんだから、エアコンはつけないよ」
当時はもっとも理不尽だと思って唖然としたが、今ならこの意味が理解できる気がした。

ということで、なかなか泣けない映画タイタニックでした。それでも不朽の名作は引き込まれますしメッセージ性があります。

他にも、旅行ツアーで運命の人と出会えるかもしれないという期待を抱けるようになるメリットもあるし、海洋恐怖症になってしまいそうなデメリットもありますが、タイタニック、やはりよかった。


【追記】
未だに残っているのは、ただならぬ余韻と3Dメガネ。観賞特典として、ローズおばあちゃんが大西洋へ故意に落としたルイ16世のネックレスを僕だけに与えてほしい。あとジャックの柔らかい髪質。あとキリッとした目。あと高い鼻。小顔。身長。ディカプリオの資産(強欲)。

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