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カプセルの行方【SS】

 将太は100円玉を手に握り、道を歩いていた。彼は小学5年生の男子で、やんちゃな悪ガキだった。彼のマイブームは、ガチャガチャのカプセルを生きものに投げて『ゲットだぜぇ!』と叫ぶことだった。好きなマンガのマネをしているのだ。彼はその遊びで、よく動物たちを怒らせたり、大人たちに叱られたりしていた。

 「今日こそレアなのが欲しいぜ!」
と将太はウキウキしながら、ガチャガチャの機械に100円玉を入れつまみを回す。すると、赤いカプセルが出てきた。将太は期待値マックスで、急いでカプセルを開けた。中には小さな人形が入っていた。人形は、黒いスーツに白いマスクをかぶった、不気味な姿をしていた。

 「なんだこれ?クッソつまんないじゃん」
と将太はがっかりした。人形をカプセル回収ボックスに捨て、赤いカプセルだけを持って、ゲットする獲物を探しに出かけた。

 しばらく歩いていると、将太は変わった毛色の猫を見つけた。猫は白と黒と茶色の三毛猫だったが、その毛の一部が青く染まっていた。将太はその猫に興味を持った。

 

青い三毛猫

「おっ、これは珍しいな。青い毛の猫なんて見たことないぞ」
将太はポケットからさっきの赤いカプセルを取り出し、猫に向かって投げつけ「ゲットだぜぇ!」と叫んだ。

 しかし、カプセルは猫に当たらなかった。猫はカプセルが飛んでくるのを見て、素早く身をかわした。そして、将太に睨みつけると逃げ出した。

 「ちっ、逃げられたか」
向こうに転がったカプセルを拾いにながらも、猫が気になった。将太は猫を追いかけることにした。

 「待てよー、青い三毛猫。お前はどこから来たんだよぅ?」
と将太は言いながら、猫の後を走った。猫は将太に気づいていたが、振り返らなかった。猫は道を曲がったり、横断したり、階段を上ったり、下ったりしながら、将太を振り切ろうとした。

 しかし、将太は猫を見失わなかった。彼は猫の動きに合わせて追い続けた。彼は猫がどこに行こうとも、絶対に捕まえると決めていた。

 やがて、猫は知らない場所にたどり着いた。そこは、古びたアパートの一室だった。猫はドアの隙間から中に入った。将太も猫の後を追ってドアを開け部屋へ入っていった。

 「おい、青い三毛猫。ここにいるのか?」
と将太は言いながら部屋の中を見回した。部屋にはほとんど家具がなかったが、床には瓶や缶、食べ物の空が散乱していた。壁には黒いスーツに白いマスクをかぶった人形の絵がたくさん描かれていた。絵の中の人形は、みな将太に向かって笑っていた。

 「なんだこれ?気持ち悪いな。あっ・・・これって、さっきのガチャガチャの人形?」
と将太は気が付いた。部屋を出ようと後ずさりをしたが、床に落ちていた瓶を踏んでしまい、足を掬われた。体は宙を舞い、仰向けに倒れ始めた。景色がスローモーションのようにゆっくり流れる。部屋の奥にある窓が将太の視界に入った。窓の外には青い三毛猫がいた。猫は将太に向かってにやりと笑い、そして何かを言ったように口を動かした。

「 ゲ ッ ト だ ぜ ぇ 」

 その言葉とともに、将太は自分が持っていたカプセルが手を離れ、それがおでこに当たり、その瞬間カプセルに閉じ込められてしまった。
 
 そして、カプセルは窓から外に飛び出し、どこかへ消えていった。部屋には、黒いスーツに白いマスクをかぶった人形の笑い声が響いた。

不気味な白マスクに黒スーツたち

将太はどこへ行った!?

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