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「ここは退屈迎えに来て」を読みました

本を読んだら感想を書くことにしました。
私は感情の言語化が苦手で、いつも取りこぼしをして歯痒い思いをしている気がするので、言葉をより繊細に使えるようになりたい/分かってもらえる文を書きたいと思い。

さて、本日読み終えたのは「ここは退屈迎えに来て」という本でした。
会社へ向かう1時間弱の小田急線で、ゆっくりとページをめくって約2ヶ月。
疲れていると文字を目で追えないこともあり、かなり時間がかかりましたが、それ以前に、読み進めるのに「摩擦」のようなものがあって中々サラサラとは読めない一冊でした。

田舎に住む女の子たちの、何者かになりたさ・どこかへ行きたさをありえん解像度で綴るこの本は、北九州からのこのこ上京なんかした私に、自分の心の隅の見たくない部分に向き合わせてくるような本で。

田舎にはイオンとかゲーセンとかしかなくて、そういうのをロードサイドと言うみたいです。
ありきたりな街。ちょっと車で出たらなんでもあるけど何にもない街。東京ではない街。そんな場所に生まれた私たち。
女の子たちは、そこでは誰も観ていないような特別な映画や音楽をTSUTAYAで借りて嗜んでは他とは違うと感じてみたり、かと思えば田舎のどうしようもない男とつるむしかなかったり、アメリカに想いを馳せたり、結婚について語ったり。なんたり。

車があったなら。
私たちが免許を持ってたなら。

この場から飛び出してしまいたい。でも行く場所は?何も決まっていないのにどこへ?

少しだけ澱んだ田舎の空気に揺蕩ってぐるぐると思い悩んでいる彼女たちを見ていると、なんだか自身の高校生のときを振り返っているような、嫌だけど懐かしい気持ちになりました。


このオムニバスでは共通して"椎名"という男が出てきます。みんなの憧れで、ヤンキーとかとも仲良くて、足も速いし自転車漕ぐのも速いしサッカー部のエース。でも今はくたびれたただのおじさん。この前までゲーセンの店長やってたって。今はよく知らないけど教習所の教官やってるらしいよ。
誰からもそういう距離感で語られる椎名ですが、彼自身が主人公の話は収録されていません。色々な女の子たちの記憶の断片から椎名が語られる構成になっていてそれがまた秀逸でした。
椎名は決して彼女たちをどこかへ連れて行ってくれるわけではないですが、
どこか心の中で光り続けていてくれている少しだけ良い存在で。

この本は、上京なんかしてサブカルチャーや表現を燻らせて結局何もできていない私の心をぐっちゃぐっちゃにかき回して、それでいて本当にちょっとだけ存在を許容してくれてる?ような雰囲気がありました。

どこかに行きたい、と常々思っている女の子は読むといいかもしれません。
何か刺さるものがあると思います。

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