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お金が降ってくる交差点

毎日、千本通りを北から南に向かってバイクで走っている。
その時によく見かけるのが、千本中立売の交差点角にあるマクドナルドの前あたりで車やバイクが警官に切符を切られている姿だ。

「よく見かけるなぁ。何でこんなところで捕まるのだろうか?信号の変わり目に渡って、信号無視として捕まるのかな?」

その程度にしか考えずに通りすぎていたのだが、先日まんまと私も捕まったのである。

事の経緯はこうだ。

用事を済ませ、車に子供二人を乗せた私は中立売通りを上七軒側の西から東に向かって走っていた。
千本中立売の交差点で信号待ちをしていると、「ボールペン買いたいから文具屋さんに寄ってほしい」と娘が言ってきたのである。
聞けば、すこぶる書きやすいボールペンで、どこの文具屋さんでも取り扱っている商品らしい。

たしかこの千本通を右に曲がれば文具屋さんがあったなと思い、千本中立売の交差点を右折することにした。そして信号が青に変わり、曲がったところで両手を広げた警官に止められ、まんまと御用となったわけである。

「何でしょうか?」

警官に止められた私は理由がわからない。信号もちゃんと守っているし、特に危険な曲がり方をしたわけでもない。

「すいませんね。この交差点、右折禁止なんですよ。ご存知ありませんでした?」

ご存知あるわけがない。

「標識があるんですけど、見落としちゃいましたかね?」

この時、私はいつもここで切符を切られているのは右折をした人達だったのかと気がついた。ちなみに、対向車の東から西に向かう車は右折OKなのである。
何とも分かりにくい交差点だ。

「いつもここで捕まえてるのは、右折禁止だからですか?」
「そうなんですよ。次は気をつけてくださいね。免許証出してもらえますか?」

しぶしぶ免許証を渡すと、警官はそれを持ってバイクのところへ行き、見ながら色々と書き込んでいる。

待つ間に考えた。

ここはかなりの頻度で捕まっている。
私と同じく気づかずに曲がっている人が多いのだろう。
であれば、標識の付け方に問題があるのではないか?

商店街の中にあるこの交差点は周囲がお店に囲まれていて情報量が多い。私のような注意散漫な人間は、信号を待つ間も人の通りやお店に気が行きがちで、信号横の標識に意識が向きにくいのだ。

「ここの標識がわかりづらいと思うんですけど、改善を訴えたことはありますか?」
戻ってきた警官に尋ねてみる。
「いや〜、ないですね。はい、これ免許証」
言いがかりには慣れているのだろう。軽く受け流すように答えてくれる。
「これだけ多くの人が気づかずに曲がってるんだから、検討したほうがいいんじゃないですか?」
「標識は警察の管轄じゃないんですよ。どこに相談すればいいのか、私も正確にはわかりませんね」

不思議だ。

そもそも何故右折が禁止なのか?

おそらく、この交差点の場合は右折車が道を塞いでしまうと後続車が進めないからだと思われる。(ちなみにそんな交差点は京都の至る所にある)
そうであれば最優先課題は「正しく認識してもらい直進か左折をしてもらう」ことである。
そこを放置したまま、絶好の切符が切れるポイントとして頻繁に張り込んでいるのでは主旨が違うのではないか?

「罰則金7000円になりますので、1週間以内にお支払いくださいね」

商売としてはこんな美味しい交差点はない。毎日ただ立っているだけで、数万円は儲けられることだろう。

しかし、彼らは商売人ではない。
公務員は社会が円滑に回るよう非営利で働いているはずだ。
たしかに違反を取り締まるのは彼らの仕事だが、そもそも何でそれをやる必要があるかまでは考えないのだろうか?
本来なら罰則を取るために働くのではなく、トラブルが起こらないように仕事しなければいけないはずである。

釈然としない気持ちのまま文具店についた。
娘は警官に止められたせいか、不安そうな顔をしている。

「君のせいじゃないから」
私は優しく声をかけた。

「えっ!?私のせいなんて思ってないけど!?」

なぬ?

別に君のせいではないけど・・・、でも君がボールペン欲しいなんて言ったから・・・・。
そう思う私を尻目に、娘は車を降りてさっさと文具店へと入って行った。

「ボールペン1本買うのに7000円かぁ。1本100円で消費税が7000%」
私はささくれ立った心の中で悪態をついた。

しばらくして文具店から出てきた娘が車に乗り込んで一言。

「ここ売ってへんかったわ」

ああ、ここではない、どこかへ行きたい。

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