見出し画像

凡人のカフェ開業 ~天才のカフェ経営を真似てはいけない~開業前2-①

前記事はこちら


2015/12/10 Thu 14:20 

『搬入された厨房機器の動作確認OKです

製氷機、冷蔵庫、温水器等問題なく作動しています

もし香山さんが動作確認して不備不調があれば連絡してください

それと』

店舗デザイン設計と施行を
担当してくれた『海城堂』の『十和田幹彦』
は事務報告の後に

『オープニングレセプション、楽しみにしてますよ』

そう付け加えてお店を後にしていった。




たった今、紗季に店舗が引き渡された


7月に物件が決まってから
保健所や消防署との対応したり
厨房や器具を選んだり
色々あったが一番気を使ったのが
業者に依頼する部分
『シンボルデザインとロゴデザイン』
『店舗の設計』と『店舗デザイン』

当初ロゴは自分でやろうかとしたが
同時進行で打ち合わせていた
十和田さんから
外観にロゴやシンボルを入れるなら早めに欲しい
と言われたので外部に依頼することに。

ロゴもシンボルも自店のイメージを形作るのに
非常に重要なパーツなので
誰に依頼するかはもちろん
(てらみやサロンで募集したり
推薦してもらったデザイナーさんを幾人かピックアップ
過去作品を見た上で紗季のイメージに近い方を選んだ)
依頼した方にデザインイメージを伝えるために
考えをまとめたり、資料を調べたりするのに
思ったより時間がかかってしまった。

着工したのが10月半ばなので
施工期間は2か月弱。


今、キッチンスペースにいる紗季は

コールドテーブル3ドア(うち冷凍1部屋)
業務用ガスコンロ3口
流し×2
製氷機
ホットサンドプレート(2人前用)×2

に囲まれていた。

レジ周りのタブレッドや備品は明日
kalitaの電動コーヒーミルや
紗季がどうしても欲しかった
ラ・マルゾッコのエスプレッソマシンは明後日届く予定だ


施工業者から店舗を引き渡してもらうと
非常に機能的に作られた店内が
備品や什器がも無く
コーヒー一杯も作られていない
なんの手垢も付いていない
この時にしか見れない景色が広がる

ここに什器や備品を配置し
材料を保管し
使いやすいように整え
メニューを作り
食べてもらうことを重ねていくことで
『自分のお店』になっていくのである

そのまさに入口と言える景色を目の当たりして


『ここから始まるのだ』


紗季は自分に何度も何度もそう言い聞かした



厨房設備や設計は長年働いていた
Cafe064を参考にして作ったので
新しいのにどこか懐かしさを感じるほど似ている

違いがあるとすれば
大きな焙煎機が無いことくらいだ

そこまで似ている厨房に比べて
客席側は紗季はオリジナルをだした

『てらみやサロン』をはじめとして
イベント使いができるように
天井にプロジェクター
カウンターはイベント時に
フードをビュッフェスタイルでおけるよう
縦を広めに作成依頼した。

椅子とテーブルもまだ届いていないので
カウンターからホール側には
広々とした空間が広がる
これもイベント開催をした時のことを考えての設計だ


 

これから配達物がいくつか届くので
小一時間ほどお店にいるので
その間に表にアルバイト募集の貼り紙を貼り
メニューをまとめているのだが
その短い時間に2件営業が来た


ひとつは大手グルメサイトの有料登録
もうひとつはローカル発行紙への掲載の誘い


今日引き渡されたばかりなのに早いもんだ
いや前もってチェックしていて
そろそろ引き渡しと踏んで
ここ数日近くに来ていたのかもしれない

とはいえメニュー構成を考えている最中に
寸断されるのはあまりいい気分ではないので
シャッターを降ろそうと紗季が入口に向かうと
こちらを覗き込んでいる人がいて眼が合った


また営業?と思ったけれど
よく見るとコートにマフラーに
下が生足のチェックのスカート
いかにもな冬の女子高生だ


さて今まさに眼があっているこの状況
街中なら目をそらして終わりだが
これからこの場所でお店をだす身としてはそうもいかない



『こんにちは』

とりあえず声をかけてみる紗季


少し身構える女子高生


『年が明けたらここで

カフェをはじめるんですよ

良かったら遊びにきてくださいね』


年上のお姉さんを意識しながら
精一杯笑顔を見せる紗季


女子高生 『あ、ありがとうございます。


・・・・


・・・・


・・・・


あ・・・・あの』


紗季 『はい?』


女子高生『アルバイトって高校生でも大丈夫ですか?』


店舗引き渡しの日に出会ったこの女子高生こそ
SAKIcafeの最初から最後までアルバイトとして
頑張ってくれた『ナミちゃん』こと
『徳山菜美恵』であった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?