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「イデミ スギノ」杉野英実シェフが映像化プロジェクトで伝えたいこと

世界中にファンを持ち、2022年4月に惜しまれつつ「イデミ スギノ」を閉じた杉野英実さん。新たな取り組みとして、その唯一無二のお菓子づくりを映像で伝えるプロジェクトを2024年1月から3カ月連続でリリース。そこに込めた思いを聞きました。

「杉野さんのお菓子づくりを映像で残しませんか」。
柴田書店から映像化の話があった時、これまで自分が学んできた技術や考え方を知っていただくよい機会だと思うと同時に、どんなお菓子を紹介したらいいかと悩みました。

これまで僕の本では紹介していないものを、とも考えましたが、2017年に出版した『進化する菓子』は僕の集大成。載っているのはどれもスペシャリテですし、すでに多くのパティシエにも手にとってもらっています。
読んだ方から「本のようにつくってみたのですが」と聞かれた経験もあり、みなさんの理解がさらに深まればと、この本の中から焼き菓子、マカロン、生菓子を12アイテム選びました。 

『「イデミ スギノ」進化する菓子』376頁/7,150円(税込)
今回映像化した12のお菓子をはじめ、「イデミ スギノ」のスペシャリテを約100品収録。
「僕は本で学んだ世代。本でレシピを伝えるよさもあります」

マドレーヌにフィナンシェ、バレンタインの時期につくっていたショコラのマカロン、僕の代名詞であるムース……どれも「イデミ スギノ」の代表的なお菓子です。
フィナンシェ生地とダコワーズ生地を重ねて焼き上げた「ノワゼッティン」や、完成までに10年の歳月を要したイチジクのムース「フィグフィグ」など、他にないオリジナルのお菓子づくりも披露。この12品で生地やクリーム、ガナッシュ、ムースなどさまざまなバリエーションが身につくラインアップになっています。

【焼き菓子編】1月22日公開。  映像のみ13,200円/本付き18,000円(税込)
【マカロン編】 2月28日公開。  映像のみ9,900円/本付き14,500円(税込)
【生菓子編】 3月27日公開。  映像のみ13,200円/本付き18,000円(税込)

撮影時は、僕がやってきたお菓子づくりをそのまま見てもらおうと、「イデミ スギノ」の仕事を忠実に再現しました。材料の下準備、それこそフルーツやナッツを1個ずつ選別するところから、ブーレ(型にバターをぬる)や型の準備、キャラメルをどこまで焦がすか、ムースを最後クレーム・フェテと合わせる時にどこまで混ぜるか、混ぜないか。映像だと一目瞭然です。

また、映像を見た方に「作業がきれいで早い」と驚かれるのですが、早くしないとおいしいお菓子はできません。いい状態は一瞬です。ムースだって素早く作業しないと気泡がつぶれて死んでしまう。僕がムースを仕込む前に、ビスキュイのシュミゼからすべて準備を済ませておくのは、ムースのベストな状態を逃さないため。
テクニックはもちろん、こうした段取りやスピードにも注目してもらいたいですね。

本や映像を見た方が、SNSなどで僕のお菓子をつくっているのを見かけると嬉しくなります。いずれは僕のレシピやテクニックを使い、みなさんらしいお菓子をつくってもらえたら嬉しいですが、最初はまず、本や動画と同じようにつくってみてください。お菓子は、きっちりつくることでわかることがあります。
今回映像化してよかったと感じたのは、映像は気になるところを何度も巻き戻して見ることができる点。
繰り返し見て、ぜひおいしくつくるコツをつかんでください。

昨年パティシエ人生50年を迎えました。ありがたいことに今も「杉野さん、またお店をやってほしい」とたくさん言っていただきます。僕の中には、お店をやっていた当時からアイデアはあるのに、忙しさに追われてまだ形になっていないお菓子がたくさんあります。今後はそういうものにも取り組みたいですし、今だからできることに挑戦していきたい。この映像企画もそんなチャレンジのひとつです。このプロジェクトが、お菓子をつくる人たちの一助になれば幸いです。

◎杉野英実
1953年生まれ、三重県出身。25歳で渡欧、アルザスやスイスを経てパリの「ジャン・ミエ」「モデュイ」「ペルティエ」で当時の最新の菓子を学ぶ。91年「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」日本人初のグランプリ。92年、神戸に「パチシエ イデミ スギノ」を独立開業。2002年、東京・京橋に移転オープン。『進化する菓子』(柴田書店)ほか著書多数。

杉野シェフ本人によるお菓子づくりは、さながら講習会を受けているよう。材料の準備から仕上げまで、髄所に杉野シェフの解説が入ります。「なぜこうするのか」がわかることで、杉野シェフのお菓子づくりへの理解が深まります。
メレンゲの状態や生クリームの泡立ち具合など、各パーツのベストな状態も映像なら一目瞭然。杉野シェフの代名詞であるムースの繊細な作業もていねいに紹介しています。
作業のていねいさとスピードを兼ね備えているのがプロの仕事。生地の敷き込みや各パーツの仕上げ、焼き具合の見きわめなど、おいしい状態を損なわないための無駄のない動きとスピードにもご注目。

☆インスタライブ開催決定!

2024年4月18日(木)20時ごろより、インスタライブを開催します。
映像プロジェクトのお話を中心に、ライブ中に寄せられた質問にもお答えできたらと考えています。

【配信アカウント】
杉野シェフのアカウント @suginohidemi
カフェ-スイーツのアカウント @cafesweets_shibata
2つのアカウントから同時配信予定!

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