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韓国映画『逃げた女』(ホン・サンス監督)

ホン・サンス監督作品を初めてみたのは、確か『豚が井戸に落ちた日』(1996年)。それから随分時間があいて、2018年に東京の下高井戸シネマであった「ホン・サンス特集」で、『クレアのカメラ』などをみた。

『逃げた女』は、監督の「公私にわたるパートナー」(プレス資料)のキム・ミニが主演。韓国の30~40歳代女性たちの等身大の日常をたんたんと描いた作品。

キム・ミニの役どころは、「5年間一度も離れたことがない」夫の出張で、ひとりになった女性、ガミ。家や職場を訪ねた際の同性の友人との対話を、主に真横のアングルからとらえながら、韓国の都市社会で生きる女性たちの迷い・孤独を浮き彫りにしていく。

都市部から緑の多い郊外への移住、アニマルウェルフェアへの関心といった韓国だけに限らない世界的な社会トレンドもとりこみながら、ほんわか、おっとりとした独特の空気感を漂わせるガミは、友人の悩みや打ち明け話に耳を傾ける聞き役。自分の思い、考えを押しださない雰囲気のガミが、夫の不在の間に友人たちと接していく中で、どう変わっていくのかという、微妙で目に見えない心の動きに焦点を当てている、といえる。

フランス・ヌーベルバーグの巨匠、エリック・ロメール監督と並び称されるホン・サンス監督作品の独特の味わいを楽しめる作品だろう。

作品は6月11日から、東京の「アップリンク吉祥寺」「ヒューマントラストシネマ有楽町」「新宿シネマカリテ」などで上映が始まる。

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