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モロッコ・カフェびたり紀行1

モロッコ。アラビア語では「日の沈む場所」を意味する「マグレブ」と呼ばれる。

大西洋の青い青い海。そこに沈む真っ赤な夕日。雪をかぶったアトラス山脈、そのふもとに広がる荒涼としたサハラ砂漠。そんな日本離れした風景に包まれたモロッコにきても、私はそういうものには目も、くれない。

目指すのは、カフェだ。カフェといっても、もちろんいろいろある。モロッコだと、カスバと呼ばれる旧市街の中にある伝統的なカフェ。大都市の新市街にあるエスプレッソを出すフランス色の濃いカフェ。郊外の谷あいにある野趣あふれるカフェ。どれにも、それぞれの味わいがある。

その中でも、やはり私が旧市街にある古ぼけたカフェが好きだ。町のあちこちに林立する市場街の喧騒を逃れるようにカフェに入って、ゆったりとした時間を過ごすのが好きだ。

カフェには、のんびりとした時間が広がっている。モロッコと、同じ地中海に面している国、トルコには、「ケイフ」という言葉がある。「何でもないようなひとときを楽しみ、幸せに思う感性」を指す単語だ。なんと素晴らしい言葉だろう!

モロッコを含めたアラブ諸国でもトルコと同じく、「ささやかな幸せ」を尊ぶ感性が存在している。

ケイフ万歳、そしてモロッコ万歳! 

 カフェには、時々ネコもはいってきて、イスにちょこんと座っていたりすることもある。古道具屋に、商品と一緒に眠っているところも見た。

モロッコでは、注文するのは、だいたいミントティー。生ミントがこれでもかとたっぷり入っているので、砂糖もたっぷりはいっているのに、割とさっぱりした味わいだ。

おなかがすいていたら、こんな、ちょっとオリエンタルなカフェ飯もあったりする。

ミントティーを飲んで少し元気になったら、また市場を歩きだす。北部の古都フェズには、美しい陶器を壁に飾っている店がたくさんあった。京都に清水焼、じゃないけれども、やっぱり古都には焼き物が似合う。

みやげ物なら、日本のスリッパのような皮製のはき物「バブーシュ」を売る店も多くある。

モロッコでカフェというと、カサブランカにある「リックス・カフェ」もやはりはずせない。往年の名画「カサブランカ」の舞台になっている店と同じ名前だ。カフェといっても、バーみたいなところだ。

リック(ハンフリー・ボガート)がイルザ(イングリッド・バーグマン)に「君の瞳に乾杯!」と再三言う店だ。英語では、「Here's looking at
you, kid.」。日本語字幕の巧みさが、このセリフを名文句に押し上げた。

このカフェ、映画そっくりに作った、という触れ込みらしいが、映画の中でカフェの全体像は映されていないから、「そっくり」といわれてもちょっとピンとこない。というか、映画の中では、もっとくすんだ感じの店だったと思う。まあ、モノクロ映像だからかも知れないけど。

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