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「ファーティマの詩」--移民たちの世代間ギャップ

フランスに多数暮らすアルジェリアからの移民をめぐる状況をファーティマという2人の娘を育てる女性を中心に描いたフランスの映画。

医学部に合格した長女に期待をふくらませつつ、学校を欠席がちな次女との衝突に悩みを抱えるファーティマ。同じアルジェリア人の夫とは離婚していて、会社や一般家庭の自宅の清掃の仕事でいつも忙しい。
フランス生まれの娘たちに比べ、フランス語があまり得意ではなく、娘たちにもアラビア語で話かける
。忙しい中で日々、アラビア語で詩のようにつづる自分の思いが素晴らしく、この映画は、まさにそうしたアルジェリア系のエッセイが原案になっているようだ。
使用する言語も違う移民1世と2世(フランスの観念では、こうした表現はそぐわないそうだが)の意識や考え方のギャップは、日本を含めたあらゆる「移民社会」でみられるものなのだろう。
この作品は、救いのある終わり方でほんわかとした気分になったが、このギャップは、時にコミュニティの亀裂、分断といった深刻な問題に発展することもあるのだろう。
上映後にあった、同志社大の森千香子教授の解説トークは、フランスの移民をめぐる状況を詳しく解説してくれて勉強になった。
フランスはアメリカやイギリスと異なり、移民が郊外に集中しているのが特徴だという。日本もどちらかといえばフランス型なのか。
フランス語で郊外は「バンリュー」といい、元々は「締め出された者たちの地帯」というネガティブな意味なのだそうだ。トークでは、そのバンリューを舞台にした過去のフランス映画がいくつも紹介された。「バンリュー映画」といういい方もあるそうだ。

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