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「旧市街」は、日本にもあった。そこには、中東のにおいがあった

旧市街、という言葉、分かるようでよく分からない言葉だ。英語だとオールド・シティ。

ただ、「ただ古い」ということばかりでなく、「新市街」と対になることで、存在感を持つ言葉だ。

去年の11月、サイタマ国のカワゴエ市に転居した。それまでほとんど訪れたことのないところだったが、住み始めてすぐ、「旧市街」と「新市街」という言葉が浮かんだ。最近は、実際にそうした区分を言葉でも発するようになっている。「新市街に出かける」とか。

カワゴエ市でいうと、古い蔵造りの街並みがある界隈が旧市街。南限はレンケイ寺のあたりだと考えている。その南は新市街。西武鉄道の本川越駅周辺の繁華街から、クレアモールという商店街を通って、JRと東武鉄道の川越駅のある周辺まで、といった感じだろうか。このカワゴエ旧市街、昼間は観光客でにぎわっているが、夜は一転、無人の通りになる。一方、新市街は、昼も、夜も遅くまでにぎわっている。

このような都市の構図、中東の各地にもよくあった。エジプトのカイロ、シリアのダマスカス、アルジェリアのアルジェ、チュニジアのチュニス。旧市街が昼間は観光客でにぎわい、夜は静まり返るところまでそっくりだ。カワゴエ旧市街に、中東の都市のにおいを感ることができたことが、無性にうれしかった。

旧市街歩きはとても楽しい。特に目的はなくても、路地を抜けたり、店をのぞいたり、カフェでくつろいだり。そうした中東で経験した時間の過ごし方をカワゴエで実践してみたいと考えている。

と、いったようなことを考えてみた正月。 旧市街には、スカラ座という単館の映画館もあって、なかなか興味をそそろられるラインナップをそろえている。「土を喰らう十二か月」という映画を上映していたので、なんとなく、ふらっと入ってみた。沢田研二が長野の山間で一人暮らす作家の役。寺の小僧の時代に覚えた精進料理や山の伝統料理を作り、さまざまな人たちがそれを食べるシーンが印象的だった。

映画に登場する山菜や漬物といった素朴な料理。去年秋まで3年間過ごした岩手県で、ワラビ、コゴミ、タラの芽、キノコ、各種漬物、そういったものをとことん味わったので、この作品のタイトルにもある「土を喰らう」ということがとても納得できた。といったことを思いながら、ゆるゆると始まった2023年。旧市街をさまようような旅をしながら、サイタマ国暮らしを本格始動させていきたいと思う。

このマガジンでは、どちらかというと日記に近いスタイルで、自由に見たこと考えたことを記していけたらと考えている。マガジンのタイトルは「旧市街をさまよう」。


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