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ヘアサロンが多すぎる!?

私の家から二駅向こうに、かなりユニークな通りがあります。
駅の改札から表へ出ると、大型ショッピングモールへと通じる道が伸びており、その距離約900メートル。お散歩がてらに歩くにはほど良い距離です。
ところが、歩き始めてしばらくすると、ある違和感に気づくのです。あれ?何だかさっきも同じようなお店の前を通ったような?

車道を挟んだ両側にはお洒落な店舗が立ち並び、ショーウィンドウや店内を眺めていると、なぜかヘアサロンばかりが目につきます。
たった今アンティーク調のお店を見たかと思えば、すぐ隣には町屋風の一軒が。洋服屋さんと靴屋さんを挟んで、植物あふれるナチュラルスタイルのヘアサロン。コンビニを過ぎ、すぐ先に見えるのはお子さま歓迎を全面に押し出したカラフルなお店。雑貨屋さんと見まごうお店にも、お客さんと談笑する美容師さんが。
車道を挟んだ向かい側も似たような風景で、洋菓子店の隣に、スタイルの違うヘアサロンが連続して並んでいます。

地元の友人に言わせると、通称美容院通り。これほどヘアサロンが増え始めたのはここ10年ほどで、表通りだけでなく、一本入った路地裏のサロンまで含めれば、駅からショッピングセンターまでの間に30軒はヘアサロンがあるといいます。
あまりにヘアサロンばかりが登場するため、まるでデジャヴのように感じられたのも当然です。他の通行人の方の「何かヘアサロン多くない?」という会話も耳にしました。

そうなるとがぜん興味が湧き、地図アプリを開いて調べてみると、確かにそのエリアで全29軒のヘアサロンが確認できました。
もうひとつ、地図を見て気づいたのは、エリアのほぼ中心に、とある企業の名があることです。主にヘアケア用品を取り扱い、プロの美容師さんたちからの支持も絶大な会社です。もしかして、その会社と工場があるために、一軒また一軒とサロンが集まり、人通りの多さとお洒落なイメージも相まって、美容院通りの誕生となったのではないか、というのが私の推測です。他に、そこまで隣接してヘアサロンをオープンさせる理由がわかりませんし。

実はそのうちの一軒のお店に行ってみた時、美容師さんともそんな会話になりました。詳しい事情はわからないけど、気づくと同業者が増えていて、お客さんにもよく突っ込まれる、と美容師さんは笑っていました。
それならと、これも必ずお客さんから聞かれるであろう質問を、失礼もかえりみずぶつけてみます。
「こんなにヘアサロンばかりが集まっていて、大丈夫なんですか?」
「ああ、よく営業していけるなってことですね?」
美容師さんはまた笑いつつ答えてくれます。
「けっこう大丈夫なんですよ。それぞれの店の得意分野が違いますし、お客さん側も自分に合うサロンを選びやすいですしね。毎回違うお店を試したり、それはそれで全然ありです」
そんなものかと感心しますが、お店の方がおっしゃる通り、見たところ、それぞれのサロンにちゃんとお客さんの姿が見えます。いくら口先で大丈夫と言ったところで、本当に売り上げがなければ、そこで営業を続けていけるはずもありません。

最も新しい厚生労働省の調査によると、令和2年の美容室の店舗数は25万4422店(前年度比1.3%増)と、増加の一途をたどっています。
よく言われる『美容室はコンビニの数より多い説』も本当で、コンビニの店舗が2020年1月時点で5万5,581店(日本フランチャイズチェーン協会)と、美容室の多さは圧倒的です。
雑学をついでにもうひとつ。
信号機と美容室の数を比べると、こちらも美容室が勝利します。信号機の設置数約21万台(警察庁)と、日本は世界一信号機が多い国なのですが、それでも美容室の数には及びません。
そういった事実を知ってみれば、美容院通りの存在もうなずけるというものです。

ちなみに、私がこれまで訪れた中で最も変わった美容室は、川に浮かぶお店でした。クルーザーを改造した店舗で、窓の向こうに川面が揺れる面白さは今でも強く印象に残っています。
一生かかっても通いきれないほどの数のヘアサロン。自分にぴったりくるお気に入りのお店に出会えたら最高ですね。

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