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幸福の鳥

自宅からは少し遠いのですが、時々買いものに出かけるショッピングモールがあります。先日は午前中にあらかた用事を済ませ、昼食のためモール内のフードコートに立ち寄りました。
そこは外のテラスが綺麗な公園のように整えられ、ベンチやパラソル付きテーブルのみならず、数種類の樹々が植えられた芝生エリア、花壇や小さな噴水まで備えています。
あいにく風も強く寒い日だったため、屋外で過ごす人の姿は見当たらず。かわりに機嫌良く遊んでいたのは鳥たちです。

“シジュウカラ”というスズメより少し大きめの野鳥をご存知でしょうか。白いライン入りの黒い顔、ネクタイを締めたような特徴的な色合いの首元の可愛い鳥です。
そのシジュウカラのグループが、それぞれ小枝から小枝に飛び移ったり、地面を歩いたり、顔を空に向けさえずったり。全面ガラス張りの窓の側で食事をしつつ、鳥たちのそんな姿を見るのは最高の一言に尽きます。

最近読んだイギリスの論文では、人は鳥の姿を目にしたり声を聞くだけで幸福感が得られる、しかもその効果は一時間も持続する、とありました。
他に面白いのがアメリカの研究で、コロナ禍で市街地の野鳥の声が小さくなった、というニュースです。ロックダウンや自粛のために人や車が消えた街は静かになり、鳥たちは声を張り上げなくても良くなりました。ボリュームの変化だけでなく、歌う旋律もより複雑なものになった、と専門家は話しています。
人間にとっての災厄であり我慢の期間も、他の生物にとっては益になるという反転具合は、面白いばかりでなく深い示唆をはらんでいると感じます。

私の暮らす都市部ではカラスやスズメとのつき合い方の議論も尽きないものの、うまく共存できる道は必ずあるはず。人が持つ高度な知恵や思いやりを発揮すべきところです。
健気に生きる姿に触れるだけで幸福をくれる鳥たち。何色であっても全ての鳥は素晴らしい。

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