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快楽主義者のエコロジー

たとばどこかへ出かけた際、ごはん時なのに、探しても手ごろなお店が見つからない。そこに見慣れたファストフードの看板を見つけてほっとする。あるいは、今日はちょっと何か買って帰ろうという時に、ファストフードの新メニューに挑戦する。そんな経験はきっとどなたもお持ちでしょうが、気軽に利用できるはずのファストフードをめぐる環境が、フランスでは様変わりしつつあります。

つい最近、フランス国内のファーストフード店における、使い捨て容器の使用が禁止されました。しかも店内の食事だけでなく、この法律はテイクアウトや配達にも適用されます。
店内飲食ならいざ知らず、持ち帰りや配達も使い捨て容器はだめとなると、一体どんな対策をとっているのでしょう? 紙ですべてをまかなうか、昔ながらの出前さながら、容器を後から受け取りに行くとか。
短期間とはいえ、学生時代にファストフード店でアルバイトをしたことのある身としては、あの便利な容器なしにお店が営業していけるのか、人ごとながら気になってしまいます。

他の国々がフランスのこの政策に続くかといえば、そこまで踏み込む国は少ないでしょう。SDGSが盛んに言われていても、どうにも形だけ、あるいは片手落ちに思える事例は、日本でもそこかしこで見かけるからです。
たとえばプラスチックのフォークが木製になったはいいもの、その外装がプラスチック。レジ袋は無くなったけれど、野菜や果物はプラスチックトレーに乗せられ袋が二重に。資源節約をうたうパンフレットは大量配布された直後にゴミ箱に山積みに。
不条理コメディの世界なら笑えるジョークかもしれません。

リサイクルに関しても賛否両論、さまざまな意見があり〈ただ焼却するよりも、リサイクルしたほうが使用するエネルギーが増え環境には負担になる〉という専門家の告発もあります。私も詳細を読み、一理あるとは思ったものの、だからといって使い捨て文化をこれ以上続けていくことは恐らく不可能です。また、倫理的にも許されない段階にきているとも思います。
国や企業単位の規制こそ重要で、個人レベルの努力など成果は微々たるものである、という主張はその通りです。私たちがシャワーを1分短く終えたところで、環境に大きなインパクトを与えられるとは思いません。
けれども、無自覚に消費や浪費を繰り返すのがどうにも気持ち悪く感じられるなら、生活の中でひとつまたひとつ、何らかの行動を起こすのは意味のあることだと感じます。

それも、できればあまり気負いすぎず、ゲームや楽しいチャレンジのような遊び感覚を持ち込むのはどうでしょう。さらにちょっとエゴイスティックに、自分のためにもなること、お得になることを目指したい。
たとえば乗り物をやめて歩くのは、運動や新しい景色との出会いになります。量り売りができるお店で買い物するのは、新鮮なものをムダなく選ぶことにつながったり。コンパクトな水筒を持ち歩けば、外でも美味しい飲みものを好みの温度で味わえます。エコバッグは200回使わなければ無意味というなら、お気に入りの色とデザインを吟味して、使うたび嬉しくなるようなものを持ちましょう。

少しだけ工夫すること、ともかくあまりにしんどいと感じるような無理をしないこと。エコ活動をするきちんとした人、に自分を当てはめずとも、暮らしていて自然とそれが環境負担の少なさに結びついていけばベストです。
お茶にしても、ペットボトルよりはティーバッグ、ティーバッグよりはリーフ(そのままの茶葉)と味が良くなるのは確実で、快楽主義者の私は、ほんの少しの手間と引き換えなら、喜んで美味しいものを選びます。しかもそちらのほうがローコストというおまけ付きです。
いろんなことを気軽に試し、面白がっているうちに、生活の質も一緒にあがるし、精神的にも大きな満足を得られる。これほどおいしい話もないと思います。
押しつけや無理ながんばりとは無縁、こっちのほうが好きだし楽しいからする、という趣味的エコ生活、ご一緒にいかがでしょうか。

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