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ちょっと高い食パンを買う

いつものスーパーの馴染みのパンコーナーへと足を運んだ。

お目当ては、8枚切りの一斤88円の食パンだ。上京してきた頃は、場所によっては70円程で買えた食パンだが、最近の物価の上昇で、安いスーパーのプライベートブランドでも100円前後はするようになった。そんな中で、このスーパーでは、一斤90円以下をキープしてくれている。極貧生活を送ってる身からすると本当にありがたい。

経費削減の犠牲になったであろうバカほど薄暗い照明が食パンを照らしていた。しかし、そこにはいつもの安心感を与えてくれる、「価格に全振りです!」と言わんとばかりの恐ろしほど無機質なあのパッケージの食パンはなかった。

「売り切れか…」

昨今の物価高では一斤88円の食パンなんて、ここぐらいでしか置いてないし、そりゃみんな買っていく。こういうことも珍しくなかった。食パンの購入を諦めて、「明日の朝は米にするか」と店を出ようとしたのだが、ある真っ赤なパッケージの商品が目に止まった。フジパンの本仕込だ。

実家では別のメーカーのパンを食べていたし、一人暮らしを始めてからは安さを求めてプライベートブランドの物しか買っていなかったので、フジパン本仕込は松下由樹さんが「ミッフィーもらえる♪」とCMで言ってたぐらいの印象しかこなかったのだが、なんだかその日はフジパン本仕込が魅力的に見えた。しかも、5枚切り。普段、「いっぱい食べた気になるから値段同じならこっちの方がいい!」というバカみたいな理由で8枚切りしか買わないのに。

僕は、気づいたらその赤いパッケージをレジに通していた。

本仕込一枚目

翌朝、昨日買った本仕込を早速トーストして食べることにした。ボロアパートの一室には似合わない上品で厚みのある食パンを袋から取り出す。当たり前の話だが、5枚切りの1枚の重さは8枚切りとは比べ物にならなかった。5枚切りと8枚切り以上の差を感じた。

食パンからトーストに変わっていくにつれて、部屋中に小麦の香ばしい匂いが広がってゆく。僕の食欲も期待感を増幅させる。

せっかくの本仕込、素材の良さをそのまま味わいたかったので、バタートーストにすることにした。完成したトーストに、バターをひと欠片塗る。トーストの熱で少しづつ溶けていくバター。絶対にうまい。

一口かじると、外はカリッとして中はふんわりの食感。いつもとは違う、噛むほどに味わい深く、バターとのハーモニーも見事。その味に、僕は心から満足した。価格以上の価値はあったと大いに確信し、いつもの激安8枚切りに戻れるのか少し心配になった。そして、残り4枚の本仕込みを最高に美味しく食べてやると決めた。

本仕込二枚目

5日間本仕込生活2日目。本仕込に恥じないトーストを食べたいなと思い、冷蔵庫を漁ると、半額で買ったアボカドが出てきた。半額だし、腐りかけだけれど、まぁ、アボカドだったら恥ずかしくないでしょ。

①アボカドをすりつぶしたものとシーザーサラダドレッシングを混ぜる

②アボカドをぶつ切りにする

③食パンに①を塗って焼いたベーコンとチーズを乗せてトーストする

④ぶつ切りしたアボカドを乗せる

レシピを箇条書きにしてみた。けんた食堂のパチモノみたいになったので、今回だけにします(レシピ目当てで読んでる人もいないと思うし)。ちなみにシーザーサラダドレッシングなんぞオシャレなものがあるのは実家から母親が送ってくれたから。マヨネーズでも代用できるはず。

見た目はあんまり良くないけれど、それっぽく出来たんじゃないか。冷める前に一口いただく。

「ちょっと味が薄い・・・」

シーザードレッシングを足して、塩コショウをかけてみた。

「・・・うめぇ」

格段に美味しくなった。調味料大事。味だけならドトールで出てきてもおかしくないレベルだと思う。ドトールに食パンにアボカドを乗せたものがあるのか知らんけど。ベーコンの塩味も良いし、アボカド、ベーコン、食パンにチーズが合わないわけもない。一日目のシンプルバタートーストを更新して、暫定第一位だ。

本仕込三枚目

昨日の夕食の味噌汁で使ったぶなしめじが余ってたので、バターで炒めて本仕込に乗せることに。ぶなしめじのみだと寂しいので、レタスとチーズも乗せた。自炊ライフハックだが、濃い料理ってのは、チーズを乗せとけばだいたい美味しくなる。食感が柔らかい方が合いそうと思ったので、トーストにせず電子レンジでチン。

これは中々良いんじゃないか?

無印の木製の食器に乗せたら似合いそうだし、「どんぐりを辿ってもつきません〜♪」みたいな曲がBGMのショート動画で流れてきそうな出来栄えではないか。僕は、ていねいな暮らしを手に入れたのかもしれない。いや、「いっぱい食えるから」で8枚切り買ってた奴にていねいな暮らしは無理か。

見た目は悪くないが、味はどうなのか?

「・・・」

まず思ったのが

「食いづらい」

一口噛むとボトボトボトォ!とチーズとキノコが溢れ出す。溢れ出すというより、下に落ちるといった表現の方が正しいかもしれない。皿の上で食べてなかったら大惨事だった。

だが、「うまい!うまいぞ!」

味の方はモスバーガーとまでは言わないが、モスバーガーもどきぐらいの美味しさはあるのではないが。食べづらさだけはモスバーガーだった。

本仕込4枚目

特売の日に買ったハムが残っていたので、前日からハムチーズトーストにしようと決めていた。

決めていたのだが、あることを思った。

チーズに頼り過ぎではないか?

2枚目、3枚目と連続してチーズで、4枚目もまたチーズ。さっきも書いたけれど、チーズかけときゃそりゃ美味くなるし、見栄えもいいが、せっかく記事にするんだから、色んなトーストを見せた方がいい。この日は、チーズを使わないことを決めた。

チーズの代わりは卵。スクランブルエッグとからしとマヨネーズを混ぜ合わせたものをトーストに塗り、その上にハムを乗せる。贅沢に二枚!ちょっと厚めのハムなので、これは映えるぞ〜!

見た目ここまでで最悪です。

ハムをそのまま乗せたのが悪いのかもしれない。カットしてみることにした。

良くなったのか・・・?

まぁ、大切なのは味だ。いただきます。

ん〜、悪くはない。

ただ、ハムと卵っていう無難な食材を使ったならもっと美味しく出来たやろって悔しさがある。トーストした方がよかったかも。決して不味くはない。「個人経営のスーパーの惣菜コーナーで売ってそう」ぐらいの味。でも、遠足や運動会でこれ出てきたらめちゃくちゃ嬉しいと思う。

本仕込5枚目

最後の一枚は、家にあった食材とにらめっこして、シーチキンマヨサンドや焼き鳥チーズトーストなど色々考えた結果、原点回帰、初日と同じくシンプルにバターのみで食べることにした。初めに覚えた必殺技でラスボスを倒す激アツのやつです。

ただ、初日と変化がほしいので、バターをケチらずに大きめのひと欠片を乗せることにした。「いっぱい食えるから」で8枚切りを選んでいた頃からすると、えらい成長だ。

軽くトーストされた本仕込にバター、やはり上品。バタートーストは食パンの食べ方の王様だ。

本仕込という最高の舞台の上で徐々に溶けていくバター、たまらずかぶりつく。鼻を通り抜ける芳醇な香り、舌に伝わる高貴な味わい、これぞ本仕込の正しい食べ方って感じがする。

一番美味しかったのは二枚目で食べたアボカドチーズベーコントーストですが。

本仕込5枚切り生活を振り返って

食パン一つでという表現は失礼な気もするが、食パン一つで、百数十円で手に入る幸せとは思えないほど、本仕込を食べた日々は自分の平凡な人生に彩りをくれた、そんな5日間だった。食べ物はすごいし、食パンはすごいし、フジパンはすごい。

本仕込を食べた5日間を通して、まだまだ自分が経験してないこと、知らないことって

溢れてるんだなと思ったし、美味しい食パンももっと食べたいと思った。もし、人生に悩んでる人がいたら、まず、いつもより少し良い食パンを食べることからオススメしたい。

そして、美味しい食パンを届けてくれたフジパンさんに感謝したい。ありがとうございました。

でも、本仕込の下に敷いていたお皿がヤ○ザキ春のパンまつりでもらった物だったので、この記事フジパンの人にはちょっと読んでほしくないかもしれない。







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