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人生最大の危機に陥った話3

友達が毎朝ご飯を届けてくれるように
なってから暫く経った頃

他の友達もどこからか私の噂を聞きつけて
すぐ口に入れられる物を差し入れに持って
来てくれたり夕飯を多めに作ったからと
おすそ分けを持ってかわるがわる
様子を見に来てくれた

友達は本当に有難い宝物だと心から思った

段々食べられるようになっていったある日
息子に買い出しに連れて行ってもらった
とはいえ相変わらず自分の足で歩く事は
ままならず車椅子に乗っての買い物

部屋から出る度に過呼吸を起こしていたので
外に出たのは本当に久しぶり
息子が同行してくれている事で少しは
落ち着いていたかと思う

そんな時珍しくスマホに着信があった
見ると高校時代の友達から
いつもLINEでのやり取りが主流だから
なんだろうと電話に出ると

「今朝◯◯が亡くなった」

◯◯とは同じく仲の良い高校時代の友達
耳を疑った  全身から血の気が引いて
スマホを持つ手と声が震えた

『頭の病気で旦那さんの出勤前に倒れて
そのまま…』との事だった

途端に過呼吸を起こし買い出しもそこそこに
息子に抱えられるようにして帰宅

それから数日後とても人前に出られるような
体調ではなかったけれど
友達の助けを借りて車椅子で葬儀に参列した

手の震えで芳名帳に記帳することが出来ず
代筆を頼む
香典だけはブルブルと老人のように震える手で自分で受付に出した

その日の私は棺桶に横たわる友達の次に
生気のない状態だったに違いない

彼女とは一年前に毎年恒例の食事会で会って
“また来年皆で会おうね”と別れたのが最後
当然また来年会えると思っていたのに

人とはこんなに唐突に目の前から
消えてしまうものなのだと愕然とした

もちろんそれまでも色々な方を見送って
きたが今回ばかりは葬儀が終わっても
実感がわかず彼女は今でもどこか遠くの街で
元気でやっているのだと思いたかった

せっかく少しずつ物が食べられるように
なってきたところで、またしても大きな
衝撃を受けて私の体調は後退した様だった

毎朝目を覚ました瞬間酷い頭痛に襲われ
ベッドからも殆ど出られず部屋にいても
頻繁に過呼吸を起こして体が硬直した
何にも興味がわかず生きることの無意味さを
ぐるぐると考える毎日

こんなに気力のない私が生かされていて
あんなにバイタリティに溢れていた友達が
早々に天に昇っていった

“生きる”ってなんだろう

次の心療内科の診察日、診断名が
「うつ状態」から「うつ病」へと変わった

▶人生最大の危機に陥った話4 に続く


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