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人生最大の危機に陥った話5

閉鎖病棟には色々な人がいた

虚ろな目をして一日中病棟内を
行ったり来たりする人
摂食障害で苦しむ少女…

病棟の更に奥に鍵が掛かった廊下があり
その向こう、見えない位置には
厳重に入院を管理されている人の部屋が
あるようだった

1日3回の服薬時間は
みんなそれぞれ水の入ったコップを手に
配薬窓口に並び、受け取った薬を
看護師の見ている前で飲むのが決まり
飲んだ後は証拠として薬の空きパッケージを
決められた箱に入れなくてはならなかった

夕食後の服薬時には睡眠導入剤が配られたが
眠れない人は多いようだった

私は6人部屋だったのだがある夜
0時を回ってもガサガサゴソゴソと
音を立てている人がいて眠れずにいた
(静かでもなかなか寝付けなかったけれど)

『うるさいな…』
そう思っていると足音が近づいてきて
ベッドのカーテンを開けられた

苛ついていた私はその人に向かって
「何の用だっ!」と叫んだ

するとその人は
「すみません見回りですっ💦」と
申し訳無さそうに頭を下げた
よく見ると手には懐中電灯が握られている

私は見回りの看護師さんに暴言を吐いたのだ
盛大にヤラかしてしまった(苦笑)

慌てて謝り小声で言い訳をした
「ゴソゴソ音がしていて眠れなかったので」

看護師さんは
「眠れずに動き回る患者さんもいるから…
すみません」と逆に気を遣わせてしまった

あの時の看護師さん(若い男性でした)
怒鳴ってしまって本当にごめんなさい💧

一週間ほど後、開放病棟に空きが出たので
そちらに移ることになった
開放病棟は病床数が少ないため
なかなか空きが出ないらしく
担当医に「運が良いですね」と言われた

開放病棟はスマホもOK
扉に鍵はなく自由に出入りができた
外出管理表に記入する事は変わらなかったが
1時間という制限もなかった
(とはいえ長時間の外出は不可)

なにより違っていたのは
ここでは患者同士の交流があった事

当時の私は相当な人間不信に陥っていた
(マガジン-深海の記憶-「追い詰められた話」参照)
誰とも関わりたくなくて
食事も談話室の片隅で他の患者さんに
背を向け壁に向かって食べていた

ある日、私より少し若いと思われる女性に
「良かったら一緒に食べませんか?」と
声をかけられた

一瞬『一人で居たいのに困った』と思ったが
無下に断るのも申し訳なくて
ご一緒させてもらうことにした

その後も彼女からカフェでお茶をしませんか
と誘われ断れない私は誘いを受けた
その事を医者に伝えると

Dr.「あなたが嫌なら断って良いんですよ  」

私「勇気を出して声をかけてくれたのにそれを拒否すると相手に嫌な思いをさせてしまうのではないかと思い断れません」

Dr.「断っても相手が傷つくことはないです  “あなたが一人で居たい”という事を知るだけです」

目から鱗だった
『相手に嫌な思いをさせるかも』は実は
『嫌な奴だと思われて嫌われるのが怖い』
を言い換えているだけだという事に気付いた

世間体重視の両親を批判しながら
結局自分も人からどう見られるかを
一番気にしていたのだ

もっと言えば人を気遣う振りをして
人に嫌われる恐怖から自分を守っていたのだ
それって相手に対しても失礼だよなと思った

そこで初めて今までの生きづらさの根源が
親に嫌われたくなくて褒めてほしくて
自分を抑え“良い子”を演じ続けて来た
小さい頃からの呪縛にあった事に気付いた

『三つ子の魂百まで』を実感して
1ヶ月弱の入院生活が終了した

▶人生最大の危機に陥った話6 に続く


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