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物語の希求  僕しか好き  過去雑文


「人はひとつの視点、ひとつの人生しか体験することができません。同時にふたつの場所に存在することは不可能で、その不可能性ゆえに、人々はこれまでも、これからも、物語を希求します」


物語の希求、
川上未映子さんの言葉だ



あたしの場合はいつも

知らず知らずに、自分に起こった出来事が物語になってると感じる

人生は予測不可能な事だらけ
だから、切なくて愛おしい

゚。☆★°゚



一昨年の桜の季節に18歳の男の子と付き合っていました

彼はバンドのドラム担当で
バンドに夢中になりすぎて
高校を留年してしまい
2回目の高校3年生をしていました

今、思うと
まるで漫画の世界だな
我ながら…


バイトを終えた彼とよく
近所をトコトコ歩きながら
電話をした

工事現場の石に座って
夜空に浮かぶ月を見上げながら


なんとなく

彼からはあたしは
アニ声MAXの不思議ちゃんと言われていて

二人の話す声は
あやとりのように絡みあって
笑い声も
夜空に浮かぶお月様のようだった

それから

工事現場の石に座ると

漫画みたいな彼との記憶は
ずっと
夜空にぼかりと浮かび上がった


声がそこにあるような感覚だった

あれから
二年と少しの歳月が流れ


工事現場には新しいアパートが
建っています


『僕と付き合って下さい』



真夜中に告白されたドキドキは
良い思い出だよ



・:*:・



18歳の男の人に付き合って下さいなんて言われるなんて
ましてや当時高校生


思わず、付き合うって
あの付き合うですか?と
訊いてしまった


そしたら
そうだよ、他にどんな付き合うがあるの?って(笑)


彼はバンドをしていたから
髪の毛をセットしたりして
ONの時はビジュアル系のロッカーみたいなルックスなんだけど
寝起きなんかは
ぽわーんとしていて


思わず、小さな海賊ビッケに
似てるね

と言ったら

ジェネレーションギャップが
あり過ぎたらしく
ビッケを知らなかった(笑)

アハアハ

って
これを読んでる人でもビッケを知っている人は少ないんだろうか


物語には繊細なディティールが
宿る



その人と付き合わなければ
きっと知り得なかったであろう



ある日、彼が

「僕しか好きだからね」
と言った


僕しか好き?

初めて耳にする言葉だった

「ん?どんな?」と訊くと

「純の僕を想う気持ちより
僕が純を想う気持ちの方が
勝ってるって事」


なんて言う

ほえー

なのである

ほえーはともかく、和歌山の人だったけれど
鈍りなんだろうか?


きっと
彼と付き合わなければ
一生
「僕しか好き」を知らなかったと思う


全く、そんな年下の男の子から
そんな事を言って貰えただけでも出来すぎた思い出だ



ケーキならモンブラン
フルーツジュースが好き
バイトはケンタッキーだから
油まみれになっちゃう事

洋楽が好きでお気に入りは
incubus

実はモテモテで
一日に3人の女の子からコクられたりしてた事

お母さんも背が高くて
現役モデルでベルボトムなんかを着こなしてしまう事


うん
しみじみと物語なのである


きっと、あたしはモンブランを食べる時に少しだけ彼の事を思い出す

「僕しか好き」の言葉を添えて



栗色のクリームは記憶の舌先で
ふわりといつまでも甘くとろけるのだ



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