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音楽つまみ食い①

 私は、アコーディオン奏者とライブなどで時折演奏しているのですが、その演奏曲目には、クラシック音楽以外に、タンゴなどのラテン系の音楽などもあります。
私自身、元々は主にクラシック音楽で、他は仕事上、様々な曲を演奏します。なので、基本的になんでもありなのですが、タンゴは、昔からアルゼンチンタンゴを習ってみたい!というのもあり、演奏するのは楽しいのです。
ただ、前回の父親の話で”踊り始めるタイミングがわからない”男性がいるかも、とか、いや、そもそも知らない男性と組んで踊れるのか、とか、考え過ぎて、未だに手が出せません。

私のラテン音楽初体験は、音楽教室のグループレッスンの発表会でした。おそらく、小学4,5年生頃です。
その時の演奏曲は、”エル・クンバンチェロ”。
太鼓を叩いてお祭り騒ぎをする人々、というスペイン語らしいのですが、当時は子供ですから、意味すら見当つきません。
母が私の練習の為に買ってきたLPレコード(もちろんYouTubeなど無い時代…)の写真が、リオのカーニバルみたいに、露出の高い派手な衣装を着た褐色の肌の女性が踊っている、というのはなんとなく記憶にあります。

グループレッスンには、毎回10人ぐらい参加していますが、他のクラスも合同で、エレクトーンを含め、色んな楽器を分担して演奏するのです。
私は、ヴィブラホーン担当。
ちなみに、ヴィブラホーンというのは、マリンバと同じ鍵盤打楽器の一種で、鉄琴にペダルが付いたような恰好をした楽器です。ペダルを踏み、マレット(バチ)で叩くと、ほわわわ~ん、と音にビブラートがかかった様な独特の音がします。
ジャズなどでも聴いたことがあるかもしれませんね。

普段はエレクトーンでのレッスしかないので、どうやって家でヴィブラホーンの練習をしていたのかなぁ、と思い返していたのですが、ふと浮かんだのが、”折り畳み木琴(ケース付き)”でした。
40センチ?四方の四角い持ち手付きハードケースを、パカッと開けると、木琴がケースにくっついた状態で出てくるのです。もしかしたら、私よりご存知の方がいらっしゃるのでは?と思いますが。
ただ、それはピアノで言う”白鍵”部分のみなので、”黒鍵”部分はありません。で、それで我慢しとき、とはならず、その後、黒鍵部分も購入してもらい、バチでポコポコ叩いて練習したわけです。

聴くだけでなく、楽器まで購入という、わが子をきちんと発表会で演奏させねば!というスパルタ母に感謝です。音楽については、他にも、鼓笛隊に入ったからとおねだりした行進用スネアドラム(学校では貸出楽器)や、オーディションに受かった合唱団の活動費などなど、決して裕福ではない経済状況で、色々と買ってくれたり、用立てたりしてくれていたのです。

さて、その発表会のレッスンも、本番が近づいてくると、他のクラスとの合同練習の日もありました。
教室が入っているビルの上には、小さなホールがあり、そこでエレクトーンやらその他楽器を並べて、先生の指導の下合わせていきます。
しかしながら、そういった教室のお母さん方は、ステージママ的な方も多いので、わが子の出来栄え、ふるまいを一挙手一投足見ています。御多分に漏れずうちの母も…。

「もっとリズムにのって体を動かしたら?A子ちゃんとか皆楽しそうにしてるで」と、見た目にノリが悪い、というダメ出しを、レッスンからの帰り道に言われ、”はぁ、そうなんや”と、ノリの良い音楽に、無理やり”ノリ良い人”となるべく、膝を屈伸させながらやってみる私。正直言って、無理に体を動かすというのは、演奏の邪魔だし、ソロ部分である曲の中盤”ラ~ド♯ミソシ♭ラ ラソファミレ~”は、むしろ(私にとっては)そんなノリじゃないのですが。

これが、後ろに控えているエレクトーンだったら、何も言われなかったのでしょうが、舞台前面に、ボンゴやコンガと並んでヴィブラホーンは並んでいるし、当時は、私は身長が高い方だったので、いやが上でも目立つポジション。そして、スパルタ母のダメ出し。益々心は義務感にかられて、必死に”ノリ良い人”を演じているのでした。

本番では、出演者皆お揃いのポロシャツにジーンズのショートパンツ、ふくらはぎと頭にお揃いの布を巻き、演奏しました。母には「A子ちゃんとは身長同じやけど、アンタの方が足短いわ」と何気なく言われ、見た目のダメ出しと共に、演奏中は膝の屈伸に終始して、母のダメ出しを遂行した私。
その結果がどうだったかは、全く記憶にないのですが、
エル・クンバンチェロを聴くと、必死に”楽しそうに”演奏した自分を思い出します。何回も経験した発表会で、エル・クンバンチェロをよく覚えているのは、やはりダメ出しのおかげかもしれませんね。




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