キャベツの葉脈の軸が甘いことを知った日

29XX年。

わたしは食べる。食べ続ける。ムシャムシャ。子リスのように両手であるものを掴んでいる。むさぼり食べるわたしの前歯はヤケに発達しているようだ。

ちょこんと、その小さな後ろ脚で地を蹴って前にすすむ。モグモグ。

わたしは種のカテゴライズとして、爬虫類カメ科なのだが、この数百年で後ろ脚をなんとか発達させた。

そして、人間さまのお宅のキッチンにお邪魔するのがわたしのライフワークだ。

主菜や炭水化物は狙わない。わたしがいただくのは、キャベツのみである。しかも、キャベツの葉を丸々いただくのではない。
わたしが拝借するのは、その葉脈の軸である。

あの軸の甘さに惚れ込み、わたしの先祖は進化を求めた。高々、あのキッチンに登れるだけの脚力を。

あの甘さ、人間はそれを破棄してしまう。

遺伝子レベルで変異した我々は、それを恵みとして享受していきる。あれは、最高に美味い。チョコレートより自然な甘味である。

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